おじさん薬剤師の日記

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ドライアイ 自分まとめ

ヒアレイン点眼液を使用して目がヒリヒリしたという事例について(自分まとめ)

投稿日:2025年7月8日 更新日:

ヒアレイン点眼液を使用して目がヒリヒリしたという事例について(自分まとめ)

先日、ヒアルロン酸ナトリウム点眼液を使用して目がしみる、目がヒリヒリすると訴えた方が数名おられました。

目がしみる要因としては、目の傷や皮膚の状態など器質的な要因もあるかと思うのですが、〇〇メーカーではしみないけど、△△メーカーではしみるというケースでは、含有される添加物が一つの要因として挙げられるんですね。

今回は、その添加剤の一つ、「エデト酸ナトリウム」について、目がしみる要因について自分まとめを記します。

目がしみると相談をうけたヒアルロン酸ナトリウム点眼液のメーカーは

「ニットー」、PF点眼液「日点」、そして先発医薬品の「ヒアレイン点眼液」でした。

この3剤に共通して含まれている添加物が「エデト酸ナトリウム」ということで「エデト酸ナトリウム(EDTA)」に関する副作用報告を調べてみると

エデト酸Naによる刺激の報告

  • 民医連新聞の副作用モニター情報によると、EDTAを含む点眼薬に変更後、「目にしみてチクチクした」「刺激感があった」といった報告が複数例あります。
  • EDTAは濃度0.34%で軽い刺激、1.0%で強い刺激を与えるとする文献もあり、濃度や個人の感受性によって刺激の程度が異なるとされています。
  • ただし、製品に含まれるEDTAの濃度は一般に非公開であるため、刺激の原因を特定するのは難しいとされています。

ということで、ある程度の濃度を超えたエデト酸ナトリウムは目の刺激感がでるようです。しかし、目薬に含まれているエデト酸ナトリウムの含有濃度は不明ですので、一概に原因物質と言い切ることはできません。

今回はエデト酸ナトリウムを一つの例として取り上げましたが、それ以外に報告数が多い添加剤としては、防腐剤として使用されている「ベンザルコニウム塩化物」も角膜障害や刺激感の原因として報告されている添加物の一つです。

あくまで、使用される方の目の状態、相性、使用感を前提としており、目の刺激感に関しては個人差が大きい事例であることをご留意頂いた上で、

〇〇メーカーの目薬を使用してから・・・

というご相談をいただいた場合は、添加剤を確認してみることも、患者様の利便性向上につながるケースが想定されます。

 

 

 

 

ドライアイ症状に対するジクアス・ヒアレイン・ムコスタ点眼の比較

 

ドライアイ症状を緩和するための3種類の目薬(ムコスタ・ジクアス・ヒアレイン)の効き目について臨床データを確認してみました。

 

ドライアイ症状を緩和するための指標としてはBUT(Tear Break UP Time)を使用している報告が多い印象です。BUTとは目を閉じてぱちっと目を開いてから目の表面を覆っている涙がどれくらいの時間で乾燥し始めるかを調べる検査です。目の表面を覆っている涙液膜の一部が破れて乾燥部位(ドライスポット)ができるまでの時間を測定します。5秒以下ならばドライアイの兆候ありです。

コンタクトレンズをした状態でムコスタ点眼液を使用したときの効果について

3%ジクアス点眼 vs 0.1%ヒアレイン点眼

10人の被験者を対象にジクアス点眼または0.1%ヒアレイン点眼を使用したあと、5分、10分、15分、20分後におけるBUTを測定した臨床データではジクアス点眼は15分間BUTを増加させたのに対して、0.1%ヒアレイン点眼は5分間だけBUTを増加させました。またBUTの増加時間に関しては5分後、10分後、15分後、20分後のいずれの時間においてもジクアス点眼の方が、増加時間が大きいという報告がなされています。

megusuri

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ジクアス点眼 VS ムコスタ点眼

ジクアス点眼の被験者34人、ムコスタ点眼の被験者33人を対象として使用後2週間、4週間、8週間後のドライアイ症状の変化を確認したデータでは、両群ともにBUTを同程度に改善しました。そのため同程度にドライアイに対して効果的であることが示され、両群間での有意差は示されませんでした。また両群ともに全身的または局所的な副作用は認められませんでした。

オメガ3脂肪酸サプリメントはドライアイに対する有効性は認められず

ジクアス点眼とムコスタ点眼の臨床報告上の違いを確認したところ、ジクアス点眼は人工涙およびヒアルロン酸よりもはるかに長い時間にわたって涙液膜を維持するはたらきがあり、最長で30 分間涙液膜量を維持したという報告もあります。また眼表面の涙液膜を維持するために必要なムチンの分泌をUPさせる効果も報告されています。一方で、ムコスタ点眼はアレルギー性結膜炎などのドライアイ以外の眼表面疾患に有効であることが示されています。この作用について具体的なメカニズムは解明されていませんが、仮設によるとムコスタがもつ抗炎症作用・抗酸化作用が眼膜状の炎症症状を改善するのではと考えられています。

ジクアス点眼とレバミピド点眼の使用感に関しては、ジクアス点眼の方がよいという統計がでています。理由はレバミピド点眼が懸濁液であるため使用後に一過性ですが、視野が薄い膜で覆われる感覚になるケースがあるのに対して、ジクアス点眼は透明な液体ですので、そのようなことはありません。ドライアイ患者さんは長期間にわたって目薬の使用を続ける必要がありますので、点眼後の視野がはっきりするジクアスに分がある結果となりました。

上記2剤に関しては、角膜形成術後のドライアイ症状に関しても同程度の有効性が示されています。

角膜形成術後のドライアイ症状に対するムコスタ点眼またはジクアス点眼の有効性について

コンタクトレンズをした状態でムコスタ点眼液を使用したときの効果について

まとめ
  • 1%ヒアレイン点眼と比べると、ジクアス点眼・ムコスタ点眼はドライアイ症状に対する有効性が高い
  • ジクアス点眼とムコスタ点眼についてはドライアイに対する有効性は同等
  • ジクアス点眼は効き目が長い、ムコスタ点眼は眼の炎症を鎮める効果も報告されている。
  • ムコスタ点眼は懸濁液(透明ではない)ため、点眼後に視野がうっすら白く見えるケースがあるため、使用感を確認する必要がある

緑内障治療薬ルミガン・キサラタン・トラバタンズ・タプロス点眼の比較データ

 

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執筆者:ojiyaku


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