おじさん薬剤師の日記

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抗うつ薬

イフェクサーSRカプセルのはたらきについて

投稿日:2017年11月15日 更新日:

イフェクサーSRカプセルのはたらきについて

抗うつ薬 イフェクサーSRカプセルがファイザーから発売となりました。作用機序は神経伝達物質であるセロトニンおよびノルアドレナリンがシナプス前ニューロンに取り込まれることを阻害することでシナプス間隙中の濃度を上昇させて抗うつ効果を示すというものです。

イフェクサーSRカプセルは海外での使用実績が豊富です。当初1日2~3回服用する即放錠として発売されましたが、コンプライアンス向上を目的として1997年に1日1回タイプの徐放性カプセル製剤としてリニューアルされました。2015年時点で90カ国以上の国と地域で承認されている薬です。

イフェクサーSRなどのSNRI使用における副作用報告例

海外では大うつ病性障害などの治療薬として浸透しており、アメリカの治療では精神病性の特徴を伴わないうつ病治療の第一選択薬として推奨され、他の第一選択薬には反応しない、または忍容性がないために治療変更を要する場合の第二選択薬としても推奨されています。

抗うつ薬の比較報告

現在国内で使用されている同類薬(SNRI)であるサインバルタやトレドミンとイフェクサーSRカプセルとの違いは、服用量による効果の違いです。イフェクサーSRカプセルは初回服用量を37.5mgとし、1週間ごとに75mgずつ増量が可能です。225mgを最大量としています。作用機序として低用量を服用すると主にセロトニン系に作用し、高用量ではセロトニン系とともにノルアドレナリン系の作用が強まるという特徴があります。

服用量による効果の差については、低用量のイフェクサーSRカプセルを服用するとシナプス間隙のセロトニン量が2次関数的に増加することが要因です。しかしイフェクサーSRカプセルの服用量を増やすごとにシナプス間隙のセロトニン量は一定量(頭打ち)となります。一方でシナプス間隙のノルアドレナリン量はイフェクサーSRカプセルの服用量とシナプス間隙の量との間に比例関数の関係が確認できます。そのためイフェクサーSRカプセルの服用量に応じて効果に差がみらるわけです。

薬物動態

 

イフェクサーSRカプセルは徐放錠であるため最大血中濃度(Tmax)は6~9時間と長めです。半減期(T1/2)は9~11時間となっています。初回服用量が37.5mgであり1週間ごとに増量していくことを考えると維持量に到達するまでには数週間を要する薬と言えます。

イフェクサーSRカプセルを服用後、肝臓の初回通過効果により主活性代謝物であるODVに代謝されます。
未変化体であるイフェクサーSRカプセルとODVとの力価比をCmaxで比べると
未変化体:ODV=1:3
AUCで比較すると
未変化体:ODV=1:5~6
となっていますので抗うつ効果を示す主な成分はODVであることがわかります。

食事による効能効果の差は少ない薬です。

イフェクサーSRカプセルと併用する可能性がある薬について
ハロペリドールとの併用でハロペリドールのAUCが70%UPする
トフラニールとの併用でトフラニールの活性代謝物のAUCが35%UPする
ソラナックスとの併用でソラナックスのAUCが30%Downする
となっています。
上記薬剤と併用する場合は注意が必要となります。

併用禁忌薬はエフピーOD錠のみです

tab5

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イフェクサーSRカプセルは初回服用量は37.5mgで徐々に増量していくタイプの薬です。同類薬(SNRI)のサインバルタやトレドミンも使い勝手は同じなのですが、イフェクサーSRカプセルの場合は増量に伴い薬効がセロトニン系からセロトニン・ノルアドレナリン系へと推移していくタイプの薬です。そのため維持量に達するまでの増量時期間中はノルアドレナリン増量に伴う心拍数増加(動悸)・興奮症状・不眠・食欲減退・便秘などの自覚症状を確認していく必要がある薬だと示唆されます。

 

-抗うつ薬
-SNRI, イフェクサーSR, サインバルタ, トレドミン, 違い

執筆者:ojiyaku


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