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ガスモチン(モサプリド)の効能効果を患者様へお伝えする

ガスモチン(モサプリド)の効能効果を患者様へお伝えする

 

慢性胃炎による吐き気や胸やけ、逆流性食道炎を伴う胃炎などでガスモチン(モサプリド)が処方されることがあります。今回は患者様へガスモチン(モサプリド)の効能効果を具体的にお伝えする方法を調べました。

食事をした時の胃腸の働きについて

 

私たちの胃や腸の内側の粘膜表面には、食事をした時に消化管を動かすための指令をだすセンサーのようなものが備わっています。(この指令を出す細胞のことを腸クロム親和性細胞と呼びます)。このセンサーは胃の内側の粘膜表面の1~3%を占めており、食べ物が通過した時に「胃酸を出す」という指令と、「胃腸を動かす」という指令を出します。

 

本来であれば、食べ物を食べるとセンサーが感知して適切な量のセロトニンというホルモンを出すことで、胃腸を動かすためのスイッチである「5-HT4受容体」に作用して胃腸が元気に動きます。このセンサーのはたらきが思わしくない患者様がガスモチンを服用すると、センサーの後者の働き「胃腸を動かす」という働きをサポートされますので、症状が緩和します。

ガスモチン錠が誕生した経緯

gasmotin

先ほど記しました「セロトニン」というホルモンは主に消化管と脳で作用します。消化管で作用すると胃腸の働きが元気になり、脳で作用すると気分をリラックス(抗うつ作用)するはたらきがあります。先ほどから何度も出てきているセンサー(腸クロム親和性細胞)からの指示で作られるセロトニンは基本的に腸管内で作用するために作られており、脳の神経に直接作用することはありません(血液脳関門という脳へ移行する関所を通ることができないためです)。

 

例えば、「医薬品セロトニン」という薬があると仮定します。体内でつくられるセロトニンと同様に「医薬品セロトニン」が分解されずに消化管に作用して、さらに吸収されたとします。この場合、消化管は元気に動きますので胃腸の膨満感や胃が重たいといった感覚は改善しますが、同時に脳内にも作用してしまいますので、いわゆる「抗うつ薬」として作用してしまします。(消化器の症状を改善するために「医薬品セロトニン」を飲む方にとって「抗うつ作用」は不要です。)

このような経緯から、胃腸を動かすためのスイッチ「5-HT4受容体」だけを選択的に作用する薬としてつくられたのが“ガスモチン(モサプリド)”です。

 

ガスモチン(モサプリド)の効き目について

ガスモチン(モサプリド)は上記の効果によって、胃や腸のはたらきを亢進して食べ物が胃内から小腸へ流れる速度をUPする作用が期待できます。

 

どれくらいの効果が期待できるかといいますと、ガスモチン5mgを飲んだ後に、シチューのように少し“とろみ”がついた食事(半固形食)を摂取した場合、ガスモチンを飲んでから15分後の効果を見てみると、胃の中にシチューがとどまる時間は15%ほど短くなるというデータがインタビューフォームに記されています。

(被験者4人を対象としたデータです)

逆流性食道炎治療薬「タケキャブ」と既存の薬との比較データ

また慢性胃炎患者さんを対象として「胃の内部にあるものがどれくらの時間で排泄さるか」を調査した―データでは、薬を飲まない方の場合だと130分ほど時間を要するのに対して、ガスモチン5mgを服用すると105分ほどに時間が短縮しているというデータもいたビューフォームに記されています。

(被験者8人を対象としたデータです)

 

上記のデータを大まかに解釈しますと、ガスモチン5mgを食前または食後に1錠飲むと、胃の内容物を小腸方面へ押し流す速度が15~20%ほどUPすると言い換えられます。

注):被験者数が少ないデータですので、個人差があるかと思います。

効果時間については、ガスモチンを服用後30分後に胃の内容物の排泄促進作用が認められ、60分後には排泄促進作用に変化が認められないと記されていますので、効き目が早く、持続時間は短いと解釈できます。確かに、食後数時間に渡って、胃や腸が動き続けると、それはそれで不快に感じますので、適切な長さでしっかり効くことが大切に感じます。

 

まとめ

・ガスモチンは胃腸の働きを元気にする

・ガスモチンを飲むと胃腸のはたらきが15~20%UPする(個人差あり)

・ガスモチンを飲むとすぐに効果がでるが、60分後には胃内容物の排泄速度は通常に戻る

・胃の不快感を軽減するためにも、飲み忘れに注意

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ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業