麻しんの集団発生と麻しんに対する日本人の抗体保有率
沖縄県で麻しんの集団発生事例が話題となっておりますが、厚生労働省の麻しん・風しんに関する小委員会が開かれ、その改正指針が話し合われました。
沖縄県における麻しん集団発生事例とは
2018年3月、台湾から沖縄への観光客(男性30代)が3月14日に発熱、3月17日に日本へ入国しました。3月19日に発疹が出たため受診し、3月20日に麻しんと診断を受けました。同男性は3月19日までに那覇市、糸満市などを観光しておりました。
麻しん・風しん指針改正に関する方向性(2018年5月:厚生労働省)
3月29日までに同患者と接触した人などから麻しん発症が報告され、5月8日までに92例が報告されています。その後4月12日に沖縄を推定感染地とする麻しん患者が愛知県で報告され、5月3日には沖縄を推定感染地とするましが川崎市から報告されています。
麻しんに対する抗体保有状況については、2歳以上のすべての年齢で95%以上の保有率が示されており、麻しんあるいは軽症麻しんの発症予防の目安(PA抗体価1:128以上)を確認してみても、2017年現在で15歳以上の方が85%以上の抗体保有率が確認されております。
(厚生労働省の報告データには麻しんではなく”風しん”の抗体保有数がしめされており、抗体保有数に関しては昭和37年~昭和53年生まれの男性において抗体保有率が8割にとどまっています)
国内における麻しん対策に関しては1976年(昭和51年)6月から予防接種法に基づく予防接種の対象疾患に麻しんが含まれ、1978年(昭和53年)から積極的に麻しんの発生予防および蔓延防止対策が実施された経緯が確認されます。
麻しんの予防接種ワクチン使用状況
1973年10月より前に生まれた方:任意接種
1973年10月~1990年4月1日の間に生まれの方:ワクチン1回定期接種
1990年4月2日以降に生まれた方:ワクチン2回定期接種
2007年~2008年にかけて、当時の10代から20代を中心に麻しんが大流行して社会的な問題になったことがありました。麻しんワクチンの1回定期接種が開始された頃に生まれた方(1970年後半~1990年生まれ)の中に麻しんの予防接種を受けていない人がいたことや、1回の予防接種では十分な免疫が獲得できなかったことが原因で蔓延したと考えられております。
2008年以後、国内における麻しん発生報告数は
2009年:732例
2010年:447例
2011年:439例
2012年:283例
2013年:229例
2014年:463例
2015年:35例
2016年:145例
2017年:160例前後(未確定)
2018年5月現在:沖縄県92例、愛知県18例、神奈川県2例
日本は、2015年3月27日にWHO(西太平洋地域事務局)により麻しんの排除状態にあることが認定されました。近隣諸国の動向としましては2014年にオーストラリア・韓国・モンゴル・中国(マカオ)、2015年にブルネイ・カンボジア・ダルサラームが、2017年にブータン、モルディブが麻しん排除状態の認定をうけています。