ベネット75mgやボノテオ50mgといった骨粗鬆症の治療薬は月に1回飲む製剤となっています。先日、ボノテオ50mgが初めて処方された患者様にお薬の説明をしていたときに「この薬は1回飲むと1ヶ月間効き目が続くって言うことは、1回のんで副作用が出たとしたら、副作用も1ヶ月間続くっていうこと?/飲んだ最初の日に効き目が強く出過ぎることはないの?」という2つの質問を受けました。そこで今回は月に1回飲む骨粗鬆症の治療薬を服用したあとに生じる副作用のタイミングおよび初日の効き目について調べてみました。
ベネット75mgやボノテオ50mgは起床時に空腹で飲む薬ですが、空腹で飲んだ場合の吸収率は1~2%程度と言われています。(食事と一緒に飲むと1/6〜1/8程度までさらに吸収率が低下します)。しかし興味深いことに、小腸からの骨粗鬆症の薬の吸収量に関しては服用する量に比例して吸収量も上がっていくというデータがあります。(腸管で吸収しにくいだけであって、飲む量を増やせば吸収量の総量は飽和しない(上限がない)と考えられています)。
ビスホスホネート製剤(内服・注射)の副作用頻度について:中外製薬
そのため1度に1ヶ月分(ベネット75mg、ボノテオ50mg)を飲んだとしても吸収量に上限がないため、服用量に応じて数%が吸収されます。服用直後は1ヶ月分の薬が血液中を流れることになります。
〜参考〜
ボノテオ1mgを飲んだときの血液中の濃度:0.313ng/ml
ボノテオ50mgを飲んだときの血液中の濃度:16.76ng/ml(約50倍)
ベネット錠やボノテオ錠の優れているポイントは、血液中を流れる薬成分の20~50%が骨組織に選択的かつ優先的に集積し、その他の組織にはほとんど蓄積しないという特徴があることです。そのためボノテオ錠50mgを飲んだ後24時間後には血液中にあった多くのボノテオは骨に移行し、不要な分は尿として排泄されるので、血液中に残存するボノテオ錠の量は1ng/ml以下に低下します。
ボノテオ錠50mgを服用してから48時間後には血流を流れるボノテオ錠の量(血中濃度)は非常に低い値となるため軽度の副作用も生じにくいと考えられます。(尚、骨と結合したベネット・ボノテオ錠が完全に消失するまでに要する時間は200~500日という報告があります)。
注意:過敏症・顎骨壊死・肝機能障害といった重大な副作用は除きます
ボノテオ錠50mgは前述しましたように1錠のうち数%しか吸入することができません。そのため吸収されずに残って便から排泄される分は消化管に対してダメージを与える可能性があります。実際に1錠服用すると20~30%の方で上部消化管への副作用が報告されております。この副作用は内服薬に限らず、同類薬の注射剤(ボンビバ静注)でも上部消化管の副作用が30%ほど報告されています。
また、ラットに対する実験ですが、0.8mg/mlの骨粗しょう症治療薬を1週間に1度経口投与する場合と、0.4mg/ml(半分の量)を1週間に2回与えた場合ですと、後者の方が消化管への副作用(潰瘍性食道炎)を生じる頻度が高いという報告がありますので、骨粗しょう症の薬は服用する間隔を十分にあけることが消化管に対する副作用を軽減できる可能性が示唆されています。
以上の報告例をもとにして患者様に対する回答を考えてみます。
「この薬は1回飲むと1ヶ月間効き目が続くって言うことは、1回のんで副作用が出たとしたら、副作用も1ヶ月間続くっていうこと?/飲んだ最初の日に効き目が強く出過ぎることはないの?」
質問1:1回飲んで副作用が出たとしたら、副作用も1か月間続くの?
回答:消化管の胸やけ・胃痛といった副作用が30%程度報告されており、上部消化管に対する副作用は2~3日程度で軽減します。(血液中の濃度が下がるにつれて軽減するため)。それ以外では急性期反応として服用後3日以内に発現する副作用として「疲労・発熱・悪寒・関節痛といったインフルエンザのような症状が5%ほど生じる可能性があります。この症状も7日間以内には症状は緩和することが多いです。上記の副作用は2回目投与以降は発現率が減少します。
(2~3回目:0.5~2.2%、4回目以降:0~0.8%)
ボノテオ・ベネットという薬は服用後2日以内に骨に20~50%が集積し、集積しなかった成分は尿として排泄されます。その後は骨に長期間(100日以上)くっつき続けます。このため服用直後の副作用が収まれば、軽度の副作用に関しては1か月続く可能性は低いことが多いです。
尚、顎骨壊死、過敏症、肝機能障害といった頻度不明の重篤な副作用は除きます。
質問2:飲んだ最初の日に効き目が強く出すぎることはないの?
ベネット・ボノテオは服用した量の1~2%しか吸収されず、吸収された成分の20~50%が骨に沈着して作用します。一度、骨にくっつくと離れるまでに100日以上の時間を要します。このことから、服用直後の効き目が高いというよりは、服用後ずーーっと骨に対する効き目が高いまま維持される(骨から離れない)というイメージの薬です。血液中の濃度については服用後6時間くらいは一過性に上昇するものの、その後は速やかに低い値となります。以上のことから、効き目はずーっと維持されます。
(胃酸のような酸性溶液をふりかけば骨からボノテオ・ベネットは外れるのですが、生体内でそのようなことはできません)。