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うつ病や不安に対するウォーキングの効果について(2024/8/19)

うつ病や不安に対するウォーキングの効果について(2024/8/19)

研究の目的:

  • ウォーキングが、うつ病や不安などの精神的な症状にどのような影響を与えるのか、様々なウォーキングパターン(頻度、時間、場所など)を比較して詳しく調べること。

研究の方法:

  • 複数のデータベースから、ウォーキングとメンタルヘルスに関するランダム化比較試験(RCT)という種類の研究を75件集めて分析しました。
  • 集めた研究データを統合して、ウォーキングがうつ病や不安の症状をどれくらい改善させるか、統計的に計算しました。

研究の結果:

  • ウォーキングは、うつ病と不安の症状を改善する効果があることがわかりました。
  • ウォーキングの頻度、時間、場所、グループで行うか個人で行うかなど、様々なパターンを比較しても、どのパターンでも効果が見られました。
  • 特に、うつ病の人は、ウォーキングによる効果がより大きい可能性が示唆されました。
  • ウォーキングの効果は、何も運動しない人と比較した場合に大きく、他の運動と比較した場合には大きな差は見られませんでした。

研究の結論:

  • 今回の研究では、どのようなウォーキングでも、うつ病や不安の症状を改善する効果があることがわかりました。
  • このことから、ウォーキングは、うつ病や不安の治療の一つの方法として有効であると考えられます。
  • 今後、軽い運動であるウォーキングの効果について、さらに詳しく研究していく必要があると述べられています。

この研究のポイント:

  • ウォーキングは、手軽にできる運動であり、様々な人にとって取り組みやすいというメリットがあります。
  • この研究結果は、ウォーキングが精神的な健康にも良い影響を与えることを示唆しており、今後の健康増進のための取り組みにもつながることが期待されます。

 

うつや不安に対するウォーキングの効果について

抗うつ作用をもつセロトニンが生殖機能の維持に関与?(2024/8/18)

名古屋大学の研究グループが脳の視床下部に放出されるセロトニンが性腺を刺激するホルモンの分泌を促進して、生殖機能の維持に関与している可能性についてのデータを公開しました。

 

抗うつ作用をもつセロトニンが生殖中枢を活性化

セロトニンと生殖機能の関係に関する研究

研究の背景と目的

  • 畜産業では、動物の繁殖効率が課題となっています。
  • 栄養不足の状態では、性腺刺激ホルモンの分泌が低下し、繁殖がうまくいかないことが知られています。
  • 研究グループは、脳内のキスペプチンニューロンが卵胞の発育に重要であることを突き止め、この神経細胞を活性化する方法を探していました。

研究の内容と結果

  • セロトニンの役割: セロトニンは、脳内のエネルギー状態を感知し、キスペプチンニューロンを活性化させる働きがあります。
  • 実験結果: ラットとヤギを用いた実験で、セロトニンを投与すると、キスペプチンニューロンが活性化し、性腺刺激ホルモンの分泌が増加することが確認されました。
  • 栄養と生殖機能: 栄養が十分な状態では、セロトニンの分泌が増え、卵胞の発育が促進されます。

研究の意義と今後の展望

  • 畜産業への応用: 家畜の繁殖効率向上に繋がる可能性があります。
  • ヒトの不妊治療への応用: うつ病と不妊の関係に着目し、新たな治療法開発につながる可能性があります。
  • 食糧問題への貢献: 動物の繁殖率向上により、食糧の安定供給に貢献することが期待されます。

まとめ

この研究成果は、セロトニンが脳の生殖機能調節に重要な役割を果たしていることを示唆しており、畜産業や医学分野への応用が期待されます。今後は、ヒトにおける更なる研究や、家畜の繁殖効率向上のための具体的な方策の開発が期待されます。

この研究のポイントは、セロトニンが単に気分を良くする物質だけでなく、生殖機能の維持にも深く関わっているということです。

第二世代抗うつ薬(パキシル・レクサプロ・ジェイゾロフト・リフレックス・イフェクサー)のちょうどいい服用量とは?

 

京都大学が調査した報告によると、第二世代の抗うつ薬を約8週間飲み続ける場合、どの程度の量がちょうどよいか(抗うつ効果がでていて、副作用が少なく飲み続けることができる量)について報告がありました。

 

抗うつ剤として調査された薬

セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

・パキシル

・レクサプロ

・ジェイゾロフト

・シタロプラム(国内未発売)

・フルオキセチン(国内未発売)

 

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

・イフェクサー

 

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動薬

・リフレックス

 

上記の薬剤について中央値8週間の治療後に有効性・忍容性、副作用による内服中止率が調査されています。

 

被験者:急性期の大うつ病患者(平均年齢:42.5歳、参加者19364人)

有効性・忍容性が示された最適許容量

セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)

・パキシル:20~40mg

・レクサプロ:10~20mg

・ジェイゾロフト:50~100mg

(フルオキセチン等価換算量として算出しています)

フルオキセチンに対するSSRIの等価換算量(PDFファイル)

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上記の用量を服用していた患者さんは何も飲まなかった時と比較して1.24~1.27倍の有効率(治癒率)が確認されており、何らかの理由による内服中止率(ドロップアウト)が低いという結果となりました(抗うつ効果がでているため内服中止率も低いという解釈です)。上記の用量を超えて服用した場合、有効性が横ばいから減少する傾向にあり、副作用発現率が上昇します。

セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)

・イフェクサー:75~150mg

 

イフェクサーを上記の量で服用した患者さんは何も飲まなかった時と比較して、1.5~1.75倍ほどの有効率(治癒率)が確認されており、さらに151mg~375mgまで増量することで緩やかな治癒率の増加をしめしました(何も飲まなかった時と比較して2倍ほどの治癒率を示した)。

何らかの理由による内服中止率(ドロップアウト)については75~150mgまでは内服中止率が低く、それ以上に増量された場合は内服中止率が高くなる結果となっています。

 

ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動薬

・リフレックス:~30mg

 

リフレックスを服用した患者さんは30mgまで増量した段階では、何も飲まなかった時と比較して1.3倍ほどの有効率(治癒率)が確認されております。それ以上増量すると治癒率の低下が報告されております。

何らかの理由による内服中止率(ドロップアウト)については30mgまでは内服中止率が低く、それ以上に増量された場合は内服中止率が高くなる結果となっています。

 

筆者らの検討によると、SSRIやイフェクサーを最小治療域で使用した場合のセロトニントランスポーターの占有率は約80%程度であり、服用量を増量してもセロトニントランスポーターの占有率がわずかに増量するだけであるため、増量しても効果はそれほど変わらないが、副作用が増えてしまうのではと示唆しています。

 

また、SSRIの副作用発現率に関してはパキシル50mg、ジェイゾロフト125mg、レクサプロ25mg以上で副作用発現率が20%→50%へ急激に増加することが見出されています。

さらに、今回の報告は平均年齢42.5歳でのデータであり、65歳以上の高齢者に使用する場合は最適用量がより低くなる可能性があります。

第二世代抗うつ薬(パキシル・レクサプロ・ジェイゾロフト・リフレックス・イフェクサー)のちょうどいい服用量とは?

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業