リンデロンVG軟膏を長期間使用して大丈夫かどうか

リンデロンVG軟膏を長期間使用して大丈夫かどうか

追記:2022年7月23日

慢性的な痒みでお悩みの方へ朗報とまではいきませんが、痒い部分をひっかくと、なぜ痒みが増すのかに関する原因が解明されましたので下記します。

通常は、痒いと感じる部分を数回ひっかくと痒みは治まります。例えば蚊やダニなどが腕にいた場合、その部分を数回ひっかいて異物を排除すれば痒みは治まります。

 

しかし、アトピー性皮膚炎や接触皮膚炎のような慢性的な強い痒みにおいては、繰り返しひっかいて皮膚炎が悪化します。すると痒みはさらに増悪します。

「掻けば掻くほどかゆくなる」という状態です。

九州大学、岡山大学、米ジョンズホプキンス大学の研究チームが上記のような慢性的な痒みがなぜ生じるのかについての原因を解明したという報告がありましたので下記します。

痒み伝達タンパクNPTX2に関する報告

マウスを使用した実験です。

痒い部分を繰り返しひっかくと、感覚神経において「NPTX2」という痒み刺激を伝達する蛋白質が増えていきます。それが脊髄へ運ばれて、痒みを伝える神経に作用し、神経活動が高まり、かゆみ症状を増悪させることが報告されました。

マウスの爪を切りそろえ、皮膚へのひっかき刺激を抑えると、痒み伝達神経の活動の高まりは抑えられることも報告されています。

昔からいわれているように「痒くてひっかくと、より痒くなる」という仕組みがマウスを使用した研究により明らかとなりました。

対策としては

・引っ掻かないようにかゆみを抑える

・爪を短く切り引っ掻き刺激を低減させる

ということがポイントとなります。

痒みを抑えるために

・十分な保湿

・寒暖差を緩和する

・飲み薬、塗り薬でかゆみを抑える

などの対策を継続することが大切となります。

 

 

小児のアトピーなどでステロイド軟膏を長期間にわたって使用することは多々あります。「リンデロンVG軟膏を長期間つかって大丈夫でしょうか?」といった質問を小児のご家族からうけることもあります。厳密にはアトピーの範囲や症状によって回答は異なるかとは思うのですが、おおむね「大丈夫です。」とお答えします。その理由を具体的に記してみます。

 

「リンデロンVG軟膏を長期間使って大丈夫ですか?」の大丈夫とは

この質問の「大丈夫」とは

・長く使用して効かなくなることはないのかな

・体に害はないのかな

・症状が悪化することはないのかな

などなど、複数のニュアンスを含んでいるような気がします。この一つ一つについて大丈夫な理由が必要となります。

小児がステロイドをなめる・少量たべるとどうなるか→なんともなりません

~リンデロンVG軟膏を長期間使用した場合の使用量の目安と効果について~

「長期間」という定義は難しいのですが、リンデロンVG軟膏を6か月間使用した臨床報告は多数あがっております。その使用状況を見てみると1日2回、毎日塗布するケースもあれば、炎症がひどいときには1日2回使用し、落ち着いてきたら1日1回、または保湿剤で皮膚をバリアするといった報告もあります。これらを総合的に評価する場合、6か月間に使用したステロイド軟膏の総量を一つの指標して考えます。

6か月間の使用総量の目安

0~2歳未満:90g(1か月あたり15g)

2歳以上~13歳未満:130g(1か月あたり20g)

13歳以上:304g(1か月あたり50g)

軟膏を皮膚に塗ってから吸収されて効果がでるまでの時間について

ざっくりとした指標ですが、1か月の使用量の目安としては体重10kgあたり10~15gのリンデロンVG軟膏を塗布したとしても全身性の副作用は起こらないことが臨床データにより示されています。そのためこの使用量を目安にするといいかもしれません。

ointment

効果については長期間使用して効果が出ていればOKです。症状が改善しない、皮膚の状態が悪化していれば医師へ相談です。効果が維持されるかどうかは皮膚の炎症度合いと薬の強さによる相対的な評価が必要となりますので、使用後の経過観察が大切です。

リンデロンVG軟膏などのステロイド軟膏は、何かしらの原因によって生じた炎症(アトピーなど)をしずめるために使用します。本来、体はこの炎症をしずめるために体内でステロイドホルモンを合成して使用しており、リンデロンVG軟膏などのステロイド軟膏は、その補助として体の外側から塗るというイメージです。

軟膏を皮膚に塗ってから吸収されて効果がでるまでの時間について

~リンデロンVGを長期間使用した場合の体への害について~

リンデロンVG軟膏の炎症をしずめる成分「ステロイド」という薬には塗り薬と飲み薬があります。飲み薬のステロイドを一定量、長期間服用すると「体重が増える・胃が痛くなる・顔が丸くなる・感染しやすくなる」といった副作用が出る場合があります。飲み薬のステロイド薬は、小腸から吸収されて血液中を流れて全身へ行きわたり、場合によっては上記の副作用が生じます。塗り薬のステロイド軟膏で副作用が生じる場合の発生経路は

皮膚に塗布 → 皮下へ染みこんでいって血液中に到達 → ステロイドが全身をめぐる

というルートを通ります

 

そこで塗り薬のステロイドを使用した場合、どの程度が血液中に入るかを調べてみました。

湿疹が出ている部分にリンデロンVG軟膏を塗ると3~5%が皮下へ吸収されます。

リンデロンVG軟膏を手のひら(両手)に塗り広げた場合0.5gの軟膏を使用します。この量を使用した場合、血液中まで到達するステロイの成分量は0.02~0.03mgです。この量は一般的な飲み薬や注射液の50~100分の1程度の量でしかないため、血液中に入っても全身への作用は誤差であり、すぐに消失してしまいます。そのため全身性の副作用は気にしなくてよいと考えます。

 

リンデロンVG軟膏の場合、1日20gを連日にわたって全身に塗布を続けると、内服薬と同程度の副作用が生じる可能性があることがインタビューフォームに記されています。

(ジュクジュクしている皮膚にリンデロンVG軟膏を塗る場合は、通常の皮膚に比べて5~6倍吸収されますが、そのような使用例は少ないかと思われます。)

まとめ

・リンデロンVG軟膏は塗って効果が出ていれば長期間使用しても問題なし。

・ステロイド軟膏は、いわゆる「消しゴム」と言うニュアンスで湿疹がでていれば使用する、でていなければ使用しないという解釈を前提として使用する。

・ステロイド軟膏の使用方法については最新のガイドラインにより隔日で予防のために塗布するという使用方法も記されている(医師の指示のもと)

・1か月の使用量は体重10kgあたり10~15gが一つの目安

・1日の使用量が20gを超えると内服薬と同程度の副作用が生じる可能性あり

・1日に0.5g程度(人差し指の関節1つ分くらい)を塗る程度なら全身性の副作用は気にしなくてよい

 

外用ステロイド薬に貼り薬が少ない理由

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業