ロヒプノールとサイレースの製造販売権をエーザイが取得。ロヒプノール錠の販売中止が決定
2017年1月16日、エーザイと中外製薬が販売している不眠症治療薬“サイレース”と“ロヒプノール”について、両製剤の製造販売承認権をエーザイが取得することとなりました。
追記)2017年9月末:2018年8月でロヒプノールの販売中止が決定しました。サイレースに統一されます。
これまで中外製薬が製造販売していた「ロヒプノール錠1mg、2mg、静注用2mg」が2017年4月1日付で、エーザイへ製造販売承認の承継ならびに販売移管されます。
ロヒプノールおよびサイレースは薬効・規格が同じ製剤です。(1mg/2mg/静注用2mg)
同一企業が同一成分・同一効果の2製品を販売できるかについては「薬価基準制度」の“薬価算定の基準に
”薬価算定は行わない“
と明記されています。
具体的には
「組成、剤形、規格および医薬品、有効性及び製造販売業者の全てが同一である場合は薬価算定を行わない。」
と記されています。つまり1メーカーは同一成分・同一効果の2製品を製造販売することができないわけです。(薬価がつかないため)
仮に、エーザイがロヒプノールとサイレースの販売を永続的に続けると
サイレース1mg:12.6円(2018年4月時点)
ロヒプノール:0円
という薬価となってしまいます。薬価0円では、どうしようもないので販売中止となるわけです。
実際の例としては、先発メーカーがAG薬を発売する際、子会社ブランド名でAG薬を製造販売していることが、その例かと思います。
例
第一三共:オルメテックOD錠
第一三共エスファ:オルメサルタンOD錠「DSEP」(オルメテックOD錠のAG薬)
同一企業が同一成分・同一効果の2製品を販売できない理由
逆に言えば、販売規格や剤形、有効性などが1つでも違えば同一成分・同一効果の2製品を販売することができるとも解釈できます。アダラートCRとアダラートLなどが、この例になりますでしょうか。
これらの理由により、両製剤の製造販売権を取得したエーザイは、
「ロヒプノールの製造販売承認の承継と販売移管に向けて協働してまいります。」と販売移管に関する文章をまとめていますが、移管後は上記理由により“統一”へ向けて話を進めていくことになります。または子会社であるエルメッドエーザイへ、どちらかの製品を販売移管する可能性も0ではないかもしれません。
サイレース・ロヒプノールの薬価を比較してみると
サイレース1mg:14円
ロヒプノール1mg:13.3円
サイレース2mg:20円
ロヒプノール2mg:19.6円
各規格ともサイレースの方が値段が高いので、統一するとなると企業目線で考えればサイレースになるでしょうし、患者様目線で考えるのであればロヒプノールとなるのでしょうか。
サイレースとロヒプノールの薬価は2018年4月の薬価改定により同額に統一されました。
院内、院外、入院におけるサイレース・ロヒプノールの使用量を調べてみると
平成26年4月~平成27年3月期間における使用量は
ロヒプノール1mg:80925861錠
ロヒプノール2mg:51224383錠
サイレース1mg:10524927錠
サイレース2mg:1669911錠+α
ロヒプノール1mgが8千万錠、ロヒプノール2mgが5千万錠、サイレース1mgが1千万錠、サイレース2mgが100万錠+αというデータが厚生労働省のNDBオープンデータに記されています。
数字だけを見るとロヒプノール1mg/2mgの使用量が圧倒的に多いことがわかります。
この手の睡眠剤を使用している患者様の主観としては「安心して眠れるために同じ薬を飲みたい」と考えている方が多いように感じますので、ロヒプノールとサイレースが統一されるようなことがあれば、患者様への事情説明が必要になるかと思います。
同一企業が同一成分・同一効果の2製品を販売できない理由
☆追記)2017年9月末:2018年8月でロヒプノールの販売中止が決定しました。サイレースに統一されます。
ロヒプノール:2018年8月に販売中止予定、経過措置期限は2019年3月末日を予定
ロヒプノール錠よりもサイレース錠の方が1mg、2mgともに薬価が0.5円前後高いんですよね。ロヒプノール錠は年間で1億錠以上販売されておりますので、すべてのロヒプノール錠がサイレース錠へ移行した場合、エーザイさんには年間5000万円以上の収益が上乗せされるわけです。
サイレースとロヒプノールの薬価は2018年4月の薬価改定により同額に統一されました。