脳神経外科・神経内科の門前で勤務しいてると各種痛み・痺れ止めが処方されることが多々あります。
・セレコックス、ロキソニン
・リリカ、タリージェ
・カロナール
・トラムセット配合錠
・ノイロトロピン
・サインバルタ
などなど様々です。
上記の薬剤がさまざまな組み合わせで処方さえれるのですが、複数の鎮痛剤が処方された場合は、それぞれの効き目の違いについて、患者様からご質問いただくことがあります。
その中で、どうも「トラムセット配合錠」の”効き目”を説明しにくいなぁと最近感じるようになったので、患者様にお届けする言葉でトラムセット配合錠の効果をお伝えできるよう文言を考えてみました。
トラムセット配合錠に含まれている2つの鎮痛剤「トラマドール」「アセトアミノフェン」について、それぞれの鎮痛作用をまとめます。
トラマドールの効果を患者様にお伝えするにあたり、「オピオイド」・「麻薬性鎮痛剤」・「医療用麻薬には該当しない」・「μオピオイド受容体」などのような「患者様にとって聴きなじみのない言葉」は避けます。
特に「麻薬かもしれない?」などの誤解を生じかねない文言は、鎮痛治療の妨げ(飲みたくない)となりかねませんのでお薬をお渡しする際に十分注意が必要と考えます。
トラマドールの痛み止め効果は大きく2つに分けることができます
1つめ
・痛み止めの効果は、痛い部分(腰や足)に直接効くのではなく、痛み感じる「脳」と、痛みの感覚を伝える「脊髄(首から腰をつないでいる神経)」に作用して痛み止めの効果を発揮します。
具体的にいいますと、脳では刺激を感じる「知覚神経」の働きを抑えて刺激を感じにくくさせることができます。脊髄では痛みの伝わり「痛覚伝達」を抑えることで痛みを伝わりにくくさせることができます。
「腰痛」を例に例えますと、トラムセット配合錠を飲んでも「腰の痛み自体」は変わりません。
トラムセット配合錠は、腰から発せられた「痛み刺激」について、腰から首までつながっている「脊髄」でのバトンリレーを伝えにくくします(痛覚伝達低下作用)。さらに、バトンリレーの最終到達地である「脳」において痛みを感じにくくします(知覚神経抑制作用)。
これら2つの作用により「腰痛症状が感じにくくなる」=「鎮痛効果」という作用があります。
ここまでは、痛みを脳に伝える神経を抑えることで痛み止めの効果を発揮する説明です。
2つめ
痛みを感じ取るのは「脳」ですが、脳は「痛みの伝わり方」について、「痛みを敏感に伝える(off-cell)」~「痛みをちょっと弱めに伝える(on-cell)」というコントロールを行うことができます(下行性疼痛抑制系)。
「痛みをちょっと弱めに伝えましょう(on-cell)」という状態を維持できれば、脳に伝わる痛みの量を減らすことができます。
トラムセット配合錠を飲み続けると、脳・脊髄内の「セロトニン」「ノルアドレナリン」をちょっとずつ増やすことができます(再取り込み阻害作用)。セロトニン・ノルアドレナリンが増えると、「痛みをちょっと弱めに伝えましょう」という神経がパワーアップしますので、「痛み」を脳に伝える量が減ります。その結果「痛みを感じにくい状態」=痛み止めの効果が発揮されます。
上記2つの作用によりトラムセット配合錠に含まれる「トラマドール」は鎮痛作用を示します。
注意)ただし、痛み部分へ直接作用するわけではないため、痛み部分を酷使すれば痛みは強まることが示唆されます。
低用量で飲むと、解熱効果があり、高用量で飲むと鎮痛効果も得られます。
痛みどめの効果は不明とされておりますが、痛みを誘発する成分(プロスタグランジン)を作らないようにさせる?という作用や、脳内において「痛い」と感じる閾値を上昇させるのでは?などが推定されています。
また、アセトアミノフェンが肝臓にてパワーアップされ(AM404)という物質に代わり、脳と脊髄に移行し、大麻の作用部位であるCB1に、うっすら作用して鎮痛効果のではという仮説や、唐辛子でおなじみのカプサイシンの作用部位であるTRPV1をパワーアップさせて鎮痛効果をしめすのでは?などの仮説がとなえられています。
が、現状ではアセトアミノフェンの鎮痛作用を解説したものは確認できませんでした。