ベシケアとベタニスの併用について/過活動膀胱への相乗効果
過活動膀胱治療薬として使用されるベシケアとベタニスとの併用については、2018年9月3日のベタニス錠の添付文書改訂により
「抗コリン剤との併用は避けることが望ましい」
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「過活動膀胱の適応を有する抗コリン剤と併用する際は閉尿などの副作用の発現に十分注意すること」
と変更となり、併用における注意喚起が緩和されました。そこで今回はベシケアとベタニスを併用した場合の治療成績・有害事象などの報告を調べてみました。
ベシケアとベタニス併用の効果(第二相試験)
プラセボ群
ベシケア2.5mg群
ベシケア5mg群
ベシケア10mg群
ベタニス25mg群
ベタニス25mg + ベシケア2.5mg群
ベタニス25mg + ベシケア5mg群
ベタニス25mg + ベシケア10mg群
過活動膀胱治療薬である“選択的β3アドレナリン受容体作動薬ベオーバ”vibegron”の日本人を対象とした第Ⅲ相試験データ開示
ベタニス50mg群
ベタニス50mg + ベシケア2.5mg群
ベタニス50mg + ベシケア5mg群
ベタニス50mg + ベシケア10mg群
1306人の患者が1回以上、上記の服用量で12週間(3か月)服用を行い、24時間当たりの排尿回数、尿量、失禁回数、緊急エピソード回数および有害事象が調査されました。
結果
1回あたりの尿量の増加量
ベシケア5mg:22ml
ベシケア5mg + ベタニス25mg:40ml
ベシケア5mg + ベタニス250mg:40.2ml
ベシケア5mg単独療法を基準とした場合、ベシケアとベタニスを併用した場合は、1回当たりの尿量の有意な増加が確認されました。(膀胱にたまる尿量の量が増えていることが確認されました)
トイレの回数
ベシケア5mg単独療法を基準とした場合、ベシケア5mg + ベタニス50mg群、ベシケア10mg + ベタニス25mg群、ベシケア10mg + ベタニス50mg群という3群において、統計学的に有意な24時間あたりの排尿回数の減少が確認されました。(1日にトイレへ行く回数がデータ上は24時間あたり0.9~1回ほど減っているようなグラフが以下のリンクに掲載されています。図4参照)
失禁回数については、プラセボ群を含むすべての群で失禁回数の減少が報告されました。
緊急エピソード(急にトイレへ行きたくなる回数)については、ベシケア5mg単独療法を基準とした場合、ベシケアとベタニスを併用することで改善が確認されました。(ベシケア2.5mgとベタニス25mgの併用を除く)
有害事象に関しては、ベシケアとベタニスの併用により便秘の発生率がわずかな上昇が確認されました。
筆者はディスカッションの中で、ベシケアを10mg服用すると口渇・便秘・消化不良といったムスカリン関係の有害事象の発生頻度が上がってしまいます。しかし、ベシケアとベタニスを併用することで、ベシケア単独高用量の服用を回避することにつながるため、ムスカリン関係の副作用を回避することができると記しています。
結論
ベシケアとベタニスの併用療法は、排尿量、排尿頻度、緊急エピソードを改善できる。さらにベシケアを単独高用量服用した時に生じるような副作用(口渇・便秘・高血圧・頻脈)を回避することもできる。
ベシケアとベタニスの12か月間2剤併用療法の有効性について(2018年5月)
ベシケアとベタニスの長期間併用による安全性と有効性(第Ⅲ相試験)
過活動膀胱患者1795人(平均年齢60歳)を対象として、ベシケア5mg + ベタニス50mgを12か月以上服用した場合の有効性・安全性について、ベシケアまたはベタニスの単独療法と比較したデータ
有効性について(12か月間の治療終了後のデータ)
1回の排尿における尿の増加量
ベタニス群:21.8ml
ベシケア群:24.9ml
2剤併用群:37.7ml
併用群で有意な尿量の増加が確認されました。(膀胱にたまる尿量が増えていることが確認できます)
24時間あたりの失禁回数の変化
ベタニス群:3.2→1.5(変化量:-1.6)
ベシケア群:3.1→1.2(変化量:-1.9)
2剤併用群:3.0→1.0(変化量:-2.0)
24時間あたりにトイレへ行く回数の変化
ベタニス群:10.5→8.4(変化量:-2.1)
ベシケア群:10.7→8.5(変化量:-2.2)
2剤併用群:10.5→8.0(変化量:-2.5)
上記のデータより、12か月服用において、2剤併用群で有意な改善が確認されています。
ベシケアとベタニスの12か月間2剤併用療法の有効性について(2018年5月)
有害事象の頻度
ベタニス群:41%
ベシケア群:44%
2剤併用群:49%
2剤併用群では便秘がより頻繁に報告されています。それ以外の副作用に関してみてみると、2剤併用群の副作用はベタニスまたはベシケアどちらかの副作用と同程度です。
(2剤併用群の副作用を確認してみると、口渇ではベシケアと同程度、頻脈はベタニスと同程度です。)
過活動膀胱治療薬である“選択的β3アドレナリン受容体作動薬ベオーバ”vibegron”の日本人を対象とした第Ⅲ相試験データ開示
結論
12か月間のベシケアとベタニスの併用療法は安全性および有効性において長期的にも有用なデータが示されました。これは過活動膀胱における併用療法の選択肢の可能性が示唆される。