リスパダールやインヴェガの副作用に追加となった睡眠時遊行症について
リスパダールやリスペリドン・インヴェガの副作用リストに“頻度不明:睡眠時遊行症”が追加となりました。薬局勤務の私には耳なじみのない言葉だったので調べてみました。
睡眠時遊行症とは
“夢遊病”や“夢中遊行症”とも呼ばれており、就眠から1~3時間後のノンレム睡眠時(脳の血流量が低下して、脳の活動が休息している深い睡眠状態)に無意識に起きて、歩いたり何かをしたりして再び就眠すること。その間の行動は記憶していない。睡眠時遊行症時、目は開いているが、その表情はうす暗く、どんよりしている。睡眠時遊行症は30秒~30分ほどの長さで発症する。通常は、夜間に1回発生する。
睡眠時遊行症の発症頻度
10万人以上の小児および成人に関する報告によると
生涯罹患率:4.6~10.3%
成人:1.5%
小児:5%
(小児の年齢変化に伴う睡眠時遊行症の変化に関する報告はありません)
レキサルティ錠(ブレクスピプラゾール:統合失調症)とエビリファイの比較
睡眠時遊行症の行動例
・トイレへ行く
・ベッドに座る
・話す
・料理をする
・食事をする
・洗濯をする
・暴力
など
誰でもわかりやすく読める統合失調症ガイドラインを日本神経精神薬理学会が公開
睡眠時遊行症を引き起こす原因(仮説)
睡眠時遊行症の原因は不明です。
以下に仮説を記します。
・興奮状態のまま睡眠薬を服用して眠りについたとき
・精神的ストレスを抱えて眠りについたとき
・就寝前にトイレへ行かずに眠りについたとき
・抗精神病薬の服用
・発熱による熱せん妄時の脳波の徐波化(インフルエンザによる異常行動との関連は不明)
・過度の疲労状態で眠りについた時
・遺伝要因;両親のどちらかが睡眠時遊行症を罹患している場合、その子供が睡眠時遊行症を発症する割合は45%、両親どちらも発症している場合、その子供が発症する率は60%という報告があります。
睡眠時遊行症に対する治療
・心理療法または薬物治療により睡眠時遊行症の発症を予防する有効なデータはありませんでした。
報告されている治療
心理療法
・リラクゼーショントレーニング
・攻撃的感情の管理
・遊び(子供の場合)
レキサルティ錠(ブレクスピプラゾール:統合失調症)とエビリファイの比較
薬物療法
・抗コリン薬
・抗てんかん薬(テグレトール、デパケンなど):脳の過活動を抑える
・第二世代抗精神病薬(クエチアピンなど)
・ベンゾジアゼピン系睡眠薬(ホリゾン・ハルシオンなど)
ホリゾンに関しては「飲んでも症状が変わらない」といった報告もあれば、「飲んでいる間は軽減した」という報告もあり、効果は不明です。
・SSRI(パキシルなど)
・ハーブ
・カフェイン摂取量の制限(イギリスで推奨)
まとめ
・睡眠時遊行症の治療方法はない
・発症率は小児で5%、成人で1.5%
・興奮状態や脳の活動状態に睡眠剤を使用して就眠することは避けたほうがいいかもしれない