AG薬が発売された薬の薬価をどんどん下げましょうというルールについて
2019年6月26日、厚生労働省の中央社会保険医療協議会薬価専門部会にて、薬価算定に関する話し合いが行われます。話し合われる内容は
・新薬創出加算の在り方
・高齢者に有用性がある薬剤に対する評価
・再生医療等製品における補正加算
・用法・用量変更、効能追加に伴う再算定の要件
・ジェネリック医薬品の薬価を段階的に引き下げるルール
などが話し合われるのですが、その中で「ジェネリック医薬品の薬価引き下げルール」において、興味深い内容がありましたので記します。
AG薬を発売したら先発品の薬価をどんどん引き下げるルール
AG薬を発売したら先発品の薬価をどんどん引き下げるルールが話し合われることがわかりました。具体的な内容を踏まえながら下記します。
既存のAG薬の在り方
2019年6月現在の状況で言いますと、ユリーフ錠という先発医薬品をキッセイおよび第一三共が製造販売(提携)しており、ユリーフ錠の特許期間が満了したことを受けて2019年6月14日に各ジェネリックメーカーがユリーフ錠のジェネリック医薬品(シロドシン錠)を発売しました。
しかし、その3カ月ほど前である2019年3月13日に、ユリーフ錠と全く同じ薬(AG薬)を第一三共エスファが発売しております。
この場合、AG薬の利点としましては、「他社より3カ月も先駆けてユリーフ錠のジェネリック医薬品を発売することができる」という利点と、「添加物・製造ラインも含めて先発と全く同じ薬である」という2つの利点です。ユリーフ錠を飲んでいた患者さんとしてはユリーフ錠と全く同じ薬が半額で飲むことができるため、AG薬は非常に有益な薬に思われます。
実際、先行発売されたAG薬の市場シェアは7割ともいわれており、ユリーフ錠を飲んでいた患者さんの中で、ジェネリック医薬品を希望する方の7割はAG薬へ移行することとなります。残り3割の方をめぐって、3か月後に発売された他社のジェネリック医薬品が市場を取り合う形となります。
しかし、この状況ではAG薬を発売した会社(先発メーカーの子会社)の一人勝ちとなってしまいます。この現状を打開するための策であり、薬価引き下げの策でもある対策を厚生労働省が打ち出しました。
それが「AG薬が発売された薬の薬価をどんどん下げましょうというルール」です。
AG薬が発売された薬の薬価をどんどん下げましょうというルール
既存のルールとしましては、ジェネリック医薬品が発売されて5年を経過した時点で、後発品への置き換え率が80%未満となっている先発医薬品の薬価は「特例的な引き下げ」を受けるというルールがあります。
言い換えますと、ジェネリック医薬品が発売されたにもかかわらず、5年間も後発医薬品への置き換えが進まずに、いまだに先発医薬品が選ばれているような薬は医療費を圧迫するために「薬価を大幅に下げます」というルールです。このルールは先発医薬品に適用されるルールです。このルールは“特例引き下げZ2”と呼ばれています。
さらに、ジェネリック医薬品発売から10年を経過した時点で先発品の薬価を後発品の薬価を基準として段階的に引き下げるというルールがあります(G1・G2・Cルール)
今回、厚生労働省で話し合われる内容は、AG薬を発売したメーカーについてはZ2(5年後から10年後)およびG1、G2(10年後以降)を適用するまでの期間を短縮してはどうか?
後発医薬品への置き換えが進んでいる場合は、先発メーカーの撤退の意向も踏まえて、段階的引き下げまでの期間を短縮してはどうか?といった内容が話し合われます。
上記のルールが採用され場合、先発メーカーとしては非常に痛手ですね。ユリーフ錠を例にして記載します。
ユリーフ錠の特許が切れて、売り上げが下がると見込んだ先発メーカーが、子会社にAG薬を発売させ、ユリーフ市場→ユリーフのAG薬市場へと移行させて損益最小限に抑えようとしました。
しかし、AG薬を発売したために、先発品であるユリーフ錠(AG薬の薬価の2倍)の薬価が非常に速度で後発品と同等額まで引き下げられてしまう結果となるようなルールです。
このルールができてしまった場合、先発メーカーがAG薬を発売することがメリットなのかデメリットなのかわからなくなってしまいます。一方で、他社のジェネリック会社にとっては天敵となっていたAG薬に足かせが着くことになりますので喜ばしい内容かもしれません。
AG薬に関するルールが設けらえた場合、AG薬の在り方が変わるかもしれません。