イギリスの研究チームは全欧共同研究の結果として「アルコールの摂取量が全死亡・全心血管疾患に与える影響を考慮すると安全域は週100gまで」という結果を公開しました。
注)アルコール100g換算(概算)
ビール500cc:4~5缶
日本酒:4合
ウイスキーシングル:7杯(アルコール度数40~50%で計算)
カクテル:7杯
ワイン:6杯
研究方法
心血管疾患罹患歴のない飲酒者に関する前向き研究に参加した59万9912人を対象として飲酒量が全死亡・前心血管疾患に与える影響を評価しています。アルコール摂取量は週100g以下群、100~200g群というように1週間あたりの摂取量を100g増量ごと群に分類して死亡率との関係を示しています。
結果
全死亡と飲酒量との関係は正の相関を示しており、1週間当たりの摂取量でみるとアルコール摂取量が週0~100g(平均56g)群において最も死亡率が低くなっていました。各疾患の発症増加率を確認してみると
脳卒中:1週間あたりのアルコール摂取量が100g増えるごとに脳卒中の発症率が14%UP
冠疾患:1週間あたりのアルコール摂取量が100g増えるごとに冠疾患の発症率が6%UP
心不全:1週間あたりのアルコール摂取量が100g増えるごとに心不全の発症率が9%UP
致命的高血圧:1週間あたりのアルコール摂取量が100g増えるごとに脳卒中の発症率が15%UP
というデータとなりました。さらに40歳時点での平均余命を見てみると
男性・女性ともに週350g以上のアルコールを摂取すると平均で4~5年、平均寿命が短くなっています。週200~350gのアルコールを摂取した場合は1~2年、平均寿命が短くなるというデータとなっています。
これらの結果をうけて、筆者らは「アルコール摂取と全死亡率について解析した結果、最低の閾値はおよそ週100g程度(平均56g)であることが示された。心筋梗塞以外の血管疾患についてはアルコールの摂取がすくないほど疾患リスクも低下している傾向にあります。」とまとめています。
アルコール摂取量が週100g以下という量は、現行のガイドラインで推奨されているアルコール摂取量よりも、さらに少ない量となっています。非常に具体的な数字としてアルコール摂取がもたらす各疾患の増加率・死亡率が示されました。医療機関の問診では「アルコール摂取」に関する問診を受けることがありますので、過剰摂取が疑われる患者様に関しては今回のデータを参考例として示すことは有用かもしれません。
「酒は百薬の長」という言葉はありますが、ストレス解消のためにアルコールを摂取する場合においても週100g程度までに摂取量を制限しなければ、「長」とはならないようです。