おじさん薬剤師の日記

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アンジェスが開発中の高血圧DNAワクチンについて

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アンジェスが開発中の高血圧DNAワクチンについて

アンジェスが開発中の「高血圧DNAワクチン」に関して、「医薬品として日の目を見る」のはいつ頃の話なのだろうか?という投稿がありましたので、これまで2018年~2022年までの期間におけるアンジェスが開示している情報を確認し、私の個人的な知見を記します。

高血圧DNAワクチン第1/Ⅱa臨床試験結果

18歳~79歳までの軽度~中等度の高血圧患者を対象として、低用量群・高用量群にそれぞれ12名を振り分け各9名にDNAワクチンを接種し、残り各3人はプラセボを接種し抗体価および有害事象を調査しています。

各被験者に1回の筋肉注射を行い、30日後に2回目のワクチン接種を行った。その後360日間の経過を観察した臨床データです。

抗アンジオテンシンⅡ抗体の産生に関して、高用量群では2回投与後、7日後、14日技、30日後の各時点で9名全員に測定可能な抗体価が検出されています。

一方、低用量群では9名中8人で2回目投与後30日時点で、そのうち6人が60日後の時点で抗体測定が可能でした。

尚、高用量群のうち6名の被験者では抗体レベルが360日後も持続的に観察されたことが報告されています。

また、低用量群・高用量群において2名ずつに高い抗アンジオテンシンⅡ抗体価(5000以上)が確認されています。

評価としては、抗体価(体内で抗体ができる量)に個人差が大きいことを挙げています。

有害事象のほとんどは、軽度または中等度に分類される、注射部位の痛みや紅斑などで、安全性に問題がないことが確認されたと記載されています。

 

さて、ここまでのデータでDNAワクチンを2回接種すると、個人差はあるものの体内で抗アンジオテンシンⅡ抗体がある程度作られることはわかりました。

では実際の降圧効果は?という点が気になるところなのですが、アンジェスは「血圧降下作用といった有効性について、別の形でデータをまとめていく予定」としており、具体的な降圧作用については開示されておりませんでした。

ここまでが、2022年8月時点で開示されている情報です。

 

以下は私の個人的な感想です。

上記の報告により「高血圧DNAワクチンの安全性に関しては、一定の忍容性が示された」

ことはわかりました。

 

低用量・高用量を接種した被験者は、治験前に降圧剤を定期服用しており、14日間以上の降圧剤の休薬期間を経て、治験に参加しています。

高用量のARB/ACE阻害薬を使用していた患者様については、耐性を評価するために2~4週間の導入期間(ウォッシュアウト期間)を設けたとしています。

 

「どうなんだろう」と感じるポイントはいくつかあるので記してみます。

・高血圧DNAワクチンを投与後の抗体発現量のバラツキはどの程度か?

・高用量ARB/ACE阻害薬を使用していた被験者は4週間の休薬を設けだけで、体内のアンジオテンシンⅡは健常人と同程度まで下がるのか?

・ARB/ACEIを服用していた被験者と服用していなかった被験者で、降圧効果の差は同の程度か?

・抗体発現量と降圧効果に正の相関はみられるのか?

・降圧効果はあったのか?

・第二b相臨床試験へ向かうことができるのか?

 

 

アンジェスの見解として「高血圧DNAワクチンの開発はモディファイすることも含めて戦略を策定中」と記してあるため、現状のままでは次の段階まではいけないのかな?

と個人的には想像しています。

 

次回報告がいつになるかはわかりませんが、経過をフォローしていきたいと思います。

 

 

 

 

以下は2018年5月5日の記事です。

アンジェスがオーストラリアにて高血圧DNAワクチンの第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験開始

 

医療ベンチャー企業「アンジェス」が高血圧DNAワクチンの第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験を開始したことを報告しました。

高血圧DNAワクチンとは血圧を上昇させる作用をもつアンジオテンシンⅡに対する抗体(免疫作用によって標的に結合する分子)を体内で作り出すことでアンジオテンシンⅡの働きを抑え、血圧を下げる作用をもつワクチンのことです。医療ベンチャー企業「アンジェス」は大阪大学と共同で高血圧DNAワクチンの特許を出願しており、2016年に米国、2017年に日本で取得していることを公開しています。

高血圧DNAワクチンの特許取得(アンジェス)

anges-vaccine

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オーストラリアにて高血圧DNAワクチンの第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験開始(平成30年4月12日)

 

被験者:軽度から中等度の高血圧患者24例

臨床試験期間:12か月にわたる経過観察

平成30年4月12日に第1例目の投与を開始した

 

高血圧DNAワクチンは1度の投与で長期間にわたって効果が持続することが期待されており、経口高血圧治療薬による「飲み忘れ」を防ぐことができるというメリットがあります。

 

高血圧DNAワクチンの第一例目の投与が行われましたので、有効性・安全性・副作用などの臨床データに関する報告が待たれます。一度の投与で長期間作用が続くタイプのワクチンということは、既存の内服薬による治験のように「副作用がでたから中止」ということはできない分野の治験であるとも言えますので、安全性に関して特に留意する必要がある気がします。

 

アンジオテンシンⅡ関連の医薬品(ARB、ACE-I)の市場規模を確認してみると(厚生労働省のNDB2より)年間で5400億円ほど市場であることとがわかります。アンジェスが開発を目指している高血圧DNAワクチンが、この市場をどこまで変革できるか非常に期待されるところです。

オーストラリアにて高血圧DNAワクチンの第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験開始

 

-ワクチン, 降圧剤
-アンジェス, オーストラリア, 大阪大学, 治験開始, 特許, 高血圧DNAワクチン

執筆者:ojiyaku


  1. 北〇 〇一 より:

    いつぐらいに高血圧ワクチンをうてますか??

  2. ojiyaku より:

    2022年8月時点における開示データを確認してみましたが、第Ⅰ/Ⅱa臨床試験データ以後、データが開示されておりませんでしたので、見通しは不明です。
    また開発元のアンジェスが「高血圧DNAワクチンの開発はモディファイすることも含めて戦略を策定中」と述べていますので、何らかの改良が必要なのかもしれません。

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