Categories: 降圧剤

カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)とカルシウム摂取について患者様へお伝えする

カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)とカルシウム摂取について患者様へお伝えする

カルシウム拮抗薬(Ca拮抗薬)をお飲みの患者様から
① 「この薬を飲んでいるとカルシウムの吸収量が減って骨がスカスカになるの?」
② 「食事でカルシウムを摂るとカルシウム拮抗薬の効果が下がって血圧があがるの?」
という質問いただくことがあります。どちらも答えは「NO」です。

「降圧剤のCa拮抗薬と食事中に含まれるカルシウムを一緒に摂取しても問題ありません。」

と回答するのですが、「理由」・「根拠」・「患者様に伝える言葉」を曖昧にしていたため患者様の疑問を完全に払拭しきれない状態でおりました。今回は、「患者様へお伝えするカルシウム拮抗薬とカルシウム摂取について」まとめてみました。


1:人の体の中にあるカルシウムの割合

体内にあるカルシウムの分布割合を確認してみると
・骨と歯:98~99%
・全身60兆個の細胞内にある滑面小胞体内に含まれるカルシウムの合計:1%(濃度1mM)
・血液中に含まれるカルシウムの合計:0.1%(濃度2.25~2.5mM)
・細胞質内(小胞体などの各種オルガネラを除く)に含まれるカルシウムの合計:0.00001%(濃度0.0001mM)

これらの数字から見て、血液中に流れているカルシウムの量(0.1%)というのは体全体にあるカルシウム量と比較して非常に少ない量であることがわかります。

体内のカルシウム量

次にカルシウムにより血圧が上がる仕組みについて調べました。

 

2:血圧があがる仕組み

血液中にあるカルシウムが、血管を取り巻く細胞(血管平滑筋)の内部(細胞質内)に流入すると、血管を取り巻く細胞が縮んで(収縮して)血圧が上がります。

~カルシウム拮抗薬の作用ポイント~
血管をとりまく細胞(血管平滑筋)の表面にあるカルシウムの入り口をふさぐことで、細胞内(細胞質内)へのカルシウム流入を抑え、血圧上昇を妨げます。骨や歯へ移行するカルシウムの入り口をふさぐことはありません。

 

続きまして、血液中のカルシウム濃度管理と骨や歯に蓄積するカルシウムの関係について調べました。

3:血液中のカルシウム濃度は厳格に管理されている

血液中のカルシウムの役割
・心臓の筋肉を一定のリズムで一定の時間収縮させる(心臓を動かす)きっかけを作る
・手足などの筋肉の収縮を行う
・脳の神経細胞における興奮のきっかけ、非興奮時の鎮静化に寄与
・血管を取り巻く細胞(血管平滑筋)の収縮・弛緩による血圧変動
・出血部位の止血

このように血液中のカルシウムは「心臓を動かす」「物事を考える」「体を動かす」「血圧を保つ」など生きることに不可欠な物質であることがわかります。そのため、血液中のカルシウム濃度は非常に厳格に管理されなければなりません。

細胞内カルシウムストア(滑面小胞体に蓄えられているカルシウムの役割)

4:血中カルシウム濃度の管理方法

骨や歯に蓄えられているカルシウム量は1000~1200g程度です(約99%)
血液中に含まれるカルシウム量は1g程度です(0.1%)

量でいいますと約1000倍の差があります。この量の違いを具体的にいいますと、「満水にいれたお風呂の水」と「コップ1杯の水」程度の違いとなります。つまり骨には生命を維持するために必要がカルシウムが大量に貯蔵されていることになります。

血中カルシウム濃度は、2つのホルモンにより管理されております。
〇血中カルシウム濃度低い場合
・骨を少し溶かしてカルシウムを血中に移動させる
・食事摂取後に腸管からカルシウム吸収を増やす
・尿中から排泄させるカルシウムを減らす

〇血中カルシウム濃度が高い場合
・多い分のカルシウムを骨に吸着させる
・食事摂取後に腸管から吸収するカルシウム量を減らす
・尿中に排泄させるカルシウム量を増やす

アムロジピン服用時の24時間血圧の推移について

これらのことから、骨や歯に蓄積しているカルシウムはある程度の幅をもって濃度変わることがありますが、生命維持に直結する血液中のカルシウム濃度が大きく変動すると生命に危険があるため、非常に正確かつ厳格に管理される必要があるということがわかりました。

以上を踏まえまして、一番はじめに記した問題についての回答を考えてみます。

まとめ

○カルシウム拮抗薬を飲んでもカルシウムの吸収量がへらない(骨がスカスカにならない)理由

・カルシウム拮抗薬は小腸からのカルシウムの吸収に影響しないため
・カルシウム拮抗薬は血液中から骨・歯へ移行するカルシウムの流入・流出に影響しないため
(血液中からその周りにある細胞へのカルシウム移動を制御する薬だから)

・体の中にあるカルシウムの99%は骨か歯に集積していていますが、カルシウム拮抗薬は血液中に含まれる0.1%のカルシウムの動きを制御する薬だからです

神経細胞における細胞外・細胞内カルシウムの役割

ARBの違いを代謝経路、インバースアゴニスト、尿酸低下作用、インスリン抵抗性改善作用などの複合要素から検討する

○食事中に含まれるカルシウムが、カルシウム拮抗薬の効果に影響しない理由

・血液中に流れているカルシウムは「心臓を動かす」「脳で考える」「動く」ために非常に大切な成分であるため、その濃度は厳格に管理されています。

・血液中に流れているカルシウムが多ければ、多い分が骨に移動します。少なければ骨が少し溶けて補います。この方法でカルシウム濃度を一定に保つことができます。
そのため、牛乳を1杯のんだ直後に急激に血中カルシウム濃度が上昇することはありません。小腸から吸収された牛乳は99.9%骨か歯に集積します。その後必要に応じて血液中にほんの少しだけ0(0.1%ほど)が溶け出るイメージです

・カルシウム拮抗薬は血液中のカルシウムが血管を取り巻く細胞へ移動することを妨げることにより血圧を低く保つ薬です。血液中のカルシウム濃度は、食事で摂取したカルシウム量により急激な変動することはありませんので、カルシウム拮抗薬への影響もないと考えてさしつかえありません。

尚、厚生労働省によると1日のカルシウム摂取量の上限は2300mg(牛乳2L)とされています。サプリメントなどでカルシウムを補う場合の目安になるかと思います。

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業