ミオナール錠、テルネリン錠、リオレサール錠(ギャバロン)の作用の違いについて

ミオナール錠、テルネリン錠、リオレサール錠(ギャバロン)の作用の違いについて

多発性硬化症の患者様で、ミオナール、テルネリンの2剤を定期服用しているの方がいるのですが、先日、下肢の痛みの訴えがあり、ミオナール・テルネリンに加えて、「リオレサール(ギャバロン)」が追加となりました。

ミオナール・テルネリン・リオレサールは、筋肉のけいれん・こわばりを和らげて痛みを緩和する薬ですが、その働きの違いを患者様に質問されたときにお答えできるよう、自分の言葉でまとめてみました。

リオレサール錠(ギャバロン)のはたらき

リオレサール錠は、脊髄において中枢神経系の抑制系伝達物質であるGABA(γアミノ酪酸)を誘導して、筋肉のこわばり・痙攣を軽減する効果があります。

脊髄に存在するシナプス前ニューロンのGABAB受容体にリオレサールがくっつくと、細胞内のCa流入が抑えらえれて、興奮伝導が抑えられ、グルタミン酸などの神経伝達物質の排出量が低下します。さらに、リオレサールはシナプス後ニューロンのGABAB受容体にもくっつき、細胞内のK(カリウム)の流出を促進させて、興奮を抑える働きも持っています。

この作用により、筋肉への指令を担う2つの神経細胞間における入口・出口両方の情報伝達量を低下させて、筋肉のこわばり、痙攣を抑える効果を示します。

ミオナール錠のはたらき

筋肉は伸び縮をする際に、感覚神経が活性化して、その情報を求心性神経を経由して脳へ伝えます。筋肉には伸び縮みを検知するような機械が備わっていると考えると理解が容易になるかと思います。ミオナール錠を服用後20分程度で、この「伸び縮みを検知する機械の感度」を下げる効果が出始めます。

すると、感覚神経を介した脊髄・脳への情報伝達量が抑えられ、筋肉の緊張・こわばり・痛みが軽減します。

また、ミオナール錠は血管拡張作用・血流増加作用を併せ持ち皮膚・筋血流増加作用を併せ持ち、血流障害による疼痛を緩和する効果も期待されます。

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テルネリン錠のはたらき

テルネリンは中枢性α2アドレナリン受容体作動薬という分類の医薬品です。α2アドレナリン受容体作用薬は、中枢におけるノルアドレナリンの遊離を抑制します。すると脳・脊髄におけるノルアドレナリンの量が低下することで、「筋肉を収縮する」という伝達が弱まり、筋肉がリラックスします。

イメージとしては興奮したときや、スポーツ選手が運動した時に脳・脊髄で「アドレナリンが増加した」状態と表現されることが多いかと思いますが、テルネリン錠を飲むと、その類似物質である「ノルアドレナリンが減少した」状態となり、筋肉を収縮する指令が減少し、筋緊張が低下します(筋肉が緩和・リラックスします)。これにより筋肉のこわばり・痛みを軽減します。

脳におけるノルアドレナリンの量が減量しますので、眠気・ふらつきの副作用が比較的多く生じます。

慢性腰痛に対するミオナール錠とテルネリン錠の効果および副作用の比較

 

慢性的な腰の痛みに対して、中枢性筋弛緩薬(自分の意思で動かすことができる筋肉をリラックスさせる薬)が処方されることがあります。今回はミオナール錠とテルネリン錠の効き目についての臨床報告および作用の違いについてまとめました。

慢性腰痛に対するミオナール・テルネリンの効き目について

筋肉のこわばりを伴う腰痛治療

ミオナール錠50mgを1日3回飲んだ場合と、テルネリン錠2mを1日3回飲んだ場合の効き目と有効性を比較したデータを確認してみました。50人の患者さんを対象として14日間にわたって痛み具合を調査しています。痛みの尺度を数値化して、数字が大きいほど痛みが大きいという指標で評価が行われております。

慢性腰痛に対するミオナール錠とテルネリン錠の効き目・有害事象について

ミオナール錠服用群の腰痛に対する痛み評価

初日:16.48±1.15

7日後:7.92±1.15

14日後:2.56±1.53

しびれ・冷えに対するメチコバールの効果を患者様へしっかりお伝えする

テルネリン錠服用群の腰痛に対する痛み評価

初日:15.96±1.62

7日後:6.76±1.66

14日後:2.88±1.92

 

結果としては両群ともに同程度に腰痛症状が緩和していることがわかります。(服用日数の増加に伴い、痛み数値が減っているためです)。より詳細なデータとしては安静時の痛み、夜間の痛み、可動域の制限、硬直、しびれ、柔軟性についてはミオナール・テルネリンともに同程度の効果が示されています。

 

なお、動かしたときの痛み、運動痛については統計的な有意差は示されてはおりませんが、ミオナールの方が若干ながら治療成績が良いというデータとなっています。服用による有害事象の頻度はミオナール錠(16.6%)に対してテルネリン錠(30%)という値となっています。

 

上記とよく似た報告は2012年にもなされており、慢性疼痛に患者さんに対してトラマールとミオナールまたはトラマールとテルネリンを服用したときの痛みお具合を調査した結果、安静時および労作時において痛いが有意に減少し、両群間で差がないという報告となっています。有害事象に関しては傾眠の副作用がミオナール群で16.6%、テルネリン群で43.3%と報告されています。

 

結果としてはどちらの薬も同じ程度に慢性腰痛に効果があり、副作用の観点からはテルネリンが眠くなるケースが多いかなぁという感じになっています。

 

ミオナール錠もテルネリン錠も中枢性の筋弛緩薬という分類ですので、どちらの自分の意思で動かすことができる筋肉をリラックスさせる効果があるのですが、その作用するポイントは若干異なります。

 

 

また、テルネリンには併用禁忌(一緒に飲んではいけない薬)があるため、調剤薬局としてはミオナール錠の方が取扱しやすい印象を受けます(ミオナール錠には副作用が少なく、併用禁忌がないため)。緊張性頭痛の治療に関してはテルネリンがグレードB、ミオナールがグレードCとなっているためテルネリンに分があるのですが、慢性腰痛症に関しては総合的に考えるとミオナール錠の方がいいのかなぁと感じたりします。

慢性腰痛に対するミオナール錠とテルネリン錠の効き目・有害事象について

 

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業