健康的な生活習慣が認知症の遺伝リスクをカバーできるかどうか
英国のバイオバンクに参加した19万6383人の被験者(平均年齢64歳)を対象としたデータによると、認知症の遺伝リスクがある方でも生活習慣を改善することで認知症のリスクが軽減することが示されました。
実験開始時に認知機能障害または認知症を発症していない被験者19万6383人を対象として、認知症の遺伝要因リスクを“低度”・中度・高度“に分類します。
また生活習慣リスクとして禁煙・運動・健康的な食事・アルコール摂取量を基準として生活習慣についても“良好・中度・不良”に分類し、認知症の発症リスクと遺伝的要因・生活習慣リスクに関する関連を調査したデータです。(中央値8年間)
結果
遺伝リスクが高い参加者の認知症発症リスク:1.23%
遺伝リスクが低い参加者の認知症発症リスク:0.63%
遺伝リスクが高く、生活習慣が不良の参加者の認知症発症リスク:1.78%
遺伝リスクが低く、生活習慣が良好な参加者の認知症発症リスク:0.56%
遺伝リスクが高く、生活習慣が良好な参加者の認知症発症リスク:1.13%
上記の結果より、認知症の発症リスクについて「遺伝リスク」と「生活習慣」に関しては、それぞれ別々の要因と考えられ、遺伝リスクが高くても、生活習慣に気を付けることで認知症発症リスクを軽減できることが示唆されました。
アリセプトやメマリー、リバスタッチといった認知症の薬を自己判断で中止した結果、認知症が悪化したという患者様の家族からの訴えを何度か耳にしたことがあります。今回は認知症の薬を一定期間休薬すると、どの程度認知機能の低下に影響が出るのかをまとめました。
アリセプト5mgまたは10mを6か月間服用した後に2~4週間休薬をした場合、6か月間何も飲まなかった場合を比較したデータによると、アリセプト錠を2~4週間休薬した期間中に認知機能は低下するものの、6か月間何も飲まなかった群ほどまでは認知機能は低下しておりません。
しかし、アリセプト5~10mgを6か月間服用した後に4~8週間休薬をした場合、6か月間何も飲まなかった場合を比較したデータによると、アリセプト錠を4~8週間休薬した期間中に認知機能は大きく低下し、6か月間何も飲まなかった場合と同程度まで認知機能が低下しています。
メマリーの消失半減期が55時間~71時間であるため1~2週間程度の休薬であれば、血液中にメマリーが残存していると考えられるため、効果への影響は少ないと考えられます。しかし、それ以上の休薬になると、効果の減弱に伴う症状の悪化が懸念されます。メマリーを長期間服用後、4週間休薬した場合、認知機能の顕著な悪化が報告されています。
リバスタッチパッチ/イクセロンパッチなどの貼付薬に関するデータはないのですが、治験段階で同一成分の内服薬を服用して、治験を中止した群の予後に関するデータは開示されていましたので記します。リバスチグミン6~12mgを平均102日服用した後に何らかの理由により服用中止した群について、その後約3か月後の認知機能に関しては、何も飲まなかった場合に比べると、認知機能の低下は少なかった。(何も飲まないよりは、リバスチグミンを飲んで中止した方が認知機能が高かった)というデータが開示されています。
長期間服用後に休薬したという臨床報告をみつけることができませんでした。