抗コリン薬の服用量が多いほど認知症のリスクが増大する
抗コリン薬の服用量が多いほど認知症のリスクが増大するというデータをイギリスの研究チームが公開しました。報告によると、抗コリン薬を「うつ病・パーキンソン病・泌尿器系」に用いると将来的に認知症を発症するリスクが増加すると記されています。
報告では、抗コリン薬の使用量の指標として、ACBスコアを使用しています。ACBスコアとは抗コリン負担(Anticholin-ergic Cognitive Burden:ACB)スコアという指標のことで,抗コリン作用を有する可能性のある薬剤をACB=1点,抗コリン作用が明らかな薬剤はその程度によりACB=2点または3点として分類しています。以下がその例です。
ACBスコア1:チアジド系利尿薬・ループ利尿薬・抗ヒスタミン剤
ACBスコア3:三環系抗うつ薬
ACBスコア0:抗コリン作用をしめす塗薬、目薬、外用薬
対象患者は2006年4月~2015年7月までの期間に認知症と診断をうけた65~99歳までの4万770例と認知症と診断を受けていない28万3933例が対象群として設定されました。各郡における抗コリン薬の1日投与量および服用期間・総量を勘案して評価しています。尚、認知症患者に関しては、認知症と診断をうける4~20年前の抗コリン薬の処方量が評価に含まれています。
結果
ACBスコア3の抗コリン薬を1つ以上服用していた割合
認知症患者:1万4453例(35%)
対象群:8万6403例(30%)
認知症患者の方がACBスコア3の抗コリン薬を服用している割合が高いことがわかります。言い換えますと、ACBスコア3の抗コリン薬を服用すると認知症の発症リスクが増えるとも解釈きます。筆者らはACBスコア3の抗コリン薬を服用すると11%認知症の発症リスクが高くなるとまとめています。
今回の報告におけるACBスコア3の抗コリン薬として「トリプタノール(29%)」、「プロチアデン(16%)」、「パキシル(8%)」、「ポラキス(7%)」、「デトルシトール(7%)」を記しています。
ACBスコア2の抗コリン薬を服用していた割合
認知症患者:1429例(3.5%)
対象群:7909例(2.8%)
こちらも認知症対象群の割合が高くなっています。この時使用されたACBスコア2の医薬品のうち87%はテグレトール(カルバマゼピン)であったと記されています。
今回の報告では、ACBスコア3の抗コリン薬であっても消化器系の治療薬として用いられる薬(ブスコパンなど)では認知症との関連は報告されず、抗うつ薬や抗パーキンソン病治療薬のように定期服用がつづく場合に認知症との関連が認められております。さらに使用量がく累積総量が多ければ認知症リスクの増大が見られることから、使用さえる際の経過観察が大切になるかと思われます。