フォシーガ錠に慢性腎臓病の適応症が追加

フォシーガ錠に慢性腎臓病の適応症が追加

フォシーガ錠5mg、同錠10mg

「慢性腎臓病。ただし、末期腎不全又は透析施行中の患者は除く」

上記効能効果が追加されました。再審査期間は4年間

 

厚生労働省は7月28日(水曜日)に開催する薬事・食品衛生審議会 医薬品第一部会の審議内容を開示しました。

審議品目の一つに、SGLT阻害薬「フォシーガ」について、慢性腎臓病(CKD)の効能効果を追加することが含まれました。

承認されれば国内初のCKD治療薬となります。

米国では2021年5月にFDAがフォシーガ錠についてCKDの適応症を追加しています。(以下参照)

厚生労働省「2021/7/28薬食審・審議事項」

フォシーガ錠に慢性腎臓病(CKD)治療薬の承認を取得(米国:2021/5/18)

米国にて、アストラゼネカが販売しているフォシーガ錠(糖尿病治療薬SGLT2)は、進行リスクのある成人の慢性腎臓病(CKD)でのeGFRの持続的低下、末期腎不全への進行、心血管死、心不全入院リスクの低減を適応症とする承認を承認する発表しました。

これにより、フォシーガ錠はSGLT2阻害剤の中ではじめて、糖尿病の有無に関わらないCKD治療薬として承認されたことになります。

(米国食品医薬品(FDA)がフォシーガ錠にCKDの適応を承認した背景としては、第3相DAPA-CKD試験の結果に基づくとしています。)

DAPA-CKD試験の概要

2型糖尿病合併の有無に関わらず、慢性腎臓病(CKD)ステージが2~4であり、アルブミン尿の増加が確認された4304例の被験者を対象として、

1日1回フォシーガ10mg服用群(2512人)とプラセボ群(2512人)に振り分けて、腎機能の悪化もしくは死亡率、心血管死もしくは心不全による入院率、全死亡率等を評価した試験です。被験者はACEiまたはARBによる標準治療を受けており、それに上乗せする形でフォシーガ10mgを服用した試験です。

試験期間の中央値:2.4年

腎機能の悪化、末期腎不全への進行または心血管死、腎不全による死亡いずれかのリスクは、フォシーガ服用群はプラセボ群と比較して39%発現頻度が低いという結果となりました。

(末期腎不全進行または腎不全o心血管死亡リスク:フォシーガ服用群:197名、プラセボ群:312名)

末期腎不全または腎疾患による死亡の複合リスク:フォシーガ服用群がプラセボ群と比較して44%低下させました。

全死亡リスクについてはフォシーガ服用群がプラセボ群と比較して31%有意に低下させた結果が得られています。

これらのデータをもとに、米国FDAはフォシーガ錠に糖尿病の有無を問わずCKDの適応症を承認しました。

DAPA-CKD試験

 

フォシーガ錠に慢性心不全の適応が追加される(日本国内)

2020年10月9日の厚生労働省薬食審・医薬品第一部会にてSGLT2阻害剤フォシーガ錠に「慢性心不全」の適応症に関する審議が行われ、了承されました。正式には2020年11月に正式承認される見通しです。

これにより、2型糖尿病の合併有無に関わらず、慢性心不全患者に対してβブロッカーやACE阻害薬などの標準治療に上乗せする形で、フォシーガ錠10mg1日1回を経口投与することが可能となります。

添付文書上の効能効果に関する注意として

・左室駆出率の低下した慢性心不全患者に投与すること。左室駆出率が保持された慢性心不全における本薬の有効性及び安全性は確立していない

・「臨床成績」の項の内容を熟知し、臨床試験に組み入れられた患者の背景(前治療、左室駆出率)を十分に理解した上で、適応患者を選択すること

上記の文言が追加されます。

フォシーガ錠に慢性心不全の適応症が追加となった理由となる臨床試験「DAPA-HF試験」の概要としては、1日1回フォシーガ(10mg)を服用した群(2373例)とプラセボ群(2371例)を比較した結果、

心不全の悪化または血管死が生じた割合を比較したところ、フォシーガ服用群では386例(16.3%)であったのに対して、プラセボ群では502例(21.2%)となり、ハザード比で0.74%(フォシーガを飲むと心不全の悪化または血管死が生じるリスクが相対的に26%減少する)ことが報告されています。

DAPA-HF試験概要

 

フォシーガ錠(SGLT2阻害薬)が米国で慢性腎臓病に対する画期的治療薬に指定される

FDA(米国食品医薬品局)は糖尿病治療薬フォシーガ錠について、慢性腎臓病を対象に画期的治療薬に指定することを発表しました。

 

画期的治療薬とは重篤な疾患や治療に対する新薬の開発・審査の促進を目的とした制度です。

フォシーガ錠を販売しているアストラゼネカ社がCKD患者を対象としたフォシーガ錠の臨床試験データが有益であることを受けて、FDAが上記の判断をしたものと思われます。

日本では、フォシーガ錠についての適応症は「2型糖尿病」「1型糖尿病」の2つのみです。

米国では「2型糖尿病」「心血管リスクを有する2型糖尿病患者における心不全による入院リスクの低下」「2型糖尿病合併の有無に関わらず左室駆出率が低下した成人心不全による入院リスクの低下」の3つが承認されています。

 

フォシーガ錠服用により慢性腎臓病患者の腎機能低下リスク・死亡リスクを低減

2020年8月6日

フォシーガ錠は「2型糖尿病」および「1型糖尿病」に対する適応症を有している血糖降下剤ですが、慢性腎臓病における腎機能低下低減作用も有することをアストラゼネカが第三相試験の結果として報告しています。

フォシーガ錠の慢性腎臓病における腎機能低下低減作用

 

2型糖尿病合併の有無を問わず、慢性腎臓病ステージ2~4、かつアルブミン尿の増加が確認された4304例を対象としてフォシーガ10mgを投与した際の効果と安全性をプラセボと比較した報告によると、腎機能の悪化または死亡に関する主要複合評価項目(推定糸球体ろ過量[eGFR]の50%以上の持続的低下、末期腎不全への進行、心血管死、腎不全による死亡のいずれかの発生と定義)で、統計学的に有意かつ意義のある効果を示したとしています。

 

また副次的複合評価項目として定めていた「腎機能の悪化もしくは死亡(eGFRの50%以上の持続的低下、末期腎不全への進行、腎不全による死亡)、心血管死もしくは心不全による入院、および全死因死亡のいずれかの初発までの期間」とした副次的評価項目も達成したことを報告してます。

 

現時点で、フォシーガ錠が慢性腎臓病の適応症を取得している国および地域はありません。

 

フォシーガ錠服用によるアルブミン尿・起床時の家庭内血圧改善効果について(2019/9/12)

 

日本人の2型糖尿病患者さんを対象としたデータによると、アルブミン尿が高い方では糖尿病性腎臓病が悪化するリスクが8.45倍に上昇することが報告されており、さらに心疾患リスクが2.6倍に悪化することも報告されております。

 

そのため、2型糖尿病患者さんにおけるアルブミン尿を低く保つことは病状を維持するために非常に大切な要素と考えられています。

 

SGLT阻害薬フォシーガ錠を服用した2型糖尿病患者さん(日本人対象)85人に関して、アルブミン尿の減少効果・起床時の家庭内血圧低下作用が報告されました。

 

フォシーガ錠を5mg~10mgを24週間服用しHbA1c7.0%未満となるよう目標値を設定しデータ収集が行われました。結果、尿中アルブミン/クレアチニン比(UACR)はフォシーガ錠服用により有意な減少を示し、服用から8週目には0.23mg/g減少、24週目には開始時点と比較して0.37mg/gの減少が確認されております。

 

フォシーガ錠服用後の家庭内血圧変化について

フォシーガ錠を24週間服用することでアルブミン尿値が改善し、それに伴い家庭内血圧についても改善が報告されております。

起床時

収縮期血圧:-8.32±11.42mmHg

拡張期血圧:-4.18±5.91mmHg

 

夕方

収縮期血圧:-9.57±12.8mmHg

拡張期血圧:-4.48±6.45mmHg

 

夜間

収縮期血圧:-2.38±7.82mmHg

拡張期血圧:-1.17±5.39mmHg

 

上記のデータにおいて、特に起床時の自宅収縮期血圧がアルブミン尿の減少と関連があることを筆者らは報告しています。

フォシーガ錠服用によるアルブミン尿改善と血圧改善について

ジャディアンス錠(SGLT2阻害薬)による延命/腎症悪化防止に関する報告

sglt2-kidney

2019年8月23日追記

フォシーガ錠のEUにおける販売承認内容について、2型糖尿病に関する添付文書改訂が行われました。

フォシーガ錠はDECLARE-TIMI 58試験という臨床試験において「心血管死または心不全による入院を減少させた」という臨床報告を行っており、今回、欧州の2型糖尿病患者さんに関する添付文書が改訂され、心血管リスク低下のデータ記載が加わりました。

注意:第III相DECLARE-TIMI 58試験によるとフォシーガ錠は心血管死・心筋梗塞・虚血性脳卒中に関する主要有害心血管リスクに関してはプラセボと比して有意な減少を示すことはできませんでしたが、心血管死または心不全による入院リスクを減少させた報告がありました。

DECLARE-TIMI 58試験データの添付文書への追加については、現在米国および中国において規制当局の審査中です。日本国内においてフォシーガは、心血管イベント、心不全あるいは死亡のリスク低下を効能とした承認は取得していません。

欧州におけるフォシーガ錠の添付文書内容改訂

 

2019年6月6日追記

SGLT2阻害薬による心血管リスク減少効果や腎保護作用に関する報告はジャディアンス錠が先駆けて報告されることが多い印象ですが、それ以外のSGLT2阻害剤でも同様の報告が行われております。すでにARBまたはACE阻害薬を飲んでいる2型糖尿病患者さんを対象そして、フォシーガ錠(SGLT2阻害剤)またはフォシーガとオングリザ(DPP4阻害剤)の併用における腎保護作用に関する報告がありましたので追記します。

 

フォシーガ・オングリザによる腎保護作用・血糖降下作用について

 

ARBまたはACE阻害薬を飲んでいる2型糖尿病患者さんを対象としてフォシーガ・またはフォシーガとオングリザが追加投与された際の腎保護作用・血糖降下作用に関する報告が開示されました。

(フォシーガを製造販売しているアストラゼネカが資金提供を行ったデータです。)

フォシーガ:SGLT2阻害剤

オングリザ:DPP4阻害剤

 

ARBまたはACE阻害薬を飲んでいる2型糖尿病患者さん461人を対象として

フォシーガを追加服用した群:145人

フォシーガとオングリザを併用追加服用した群:155人

プラセボ(偽薬)群:148人

として24週間服用した後の“尿中アルブミン/クレアチニン比”と“HbA1c”を確認したデータです。

 

24週間服用後

フォシーガ追加服用群はプラセボ群と比べて―24%のアルブミン/クレアチニン比の減少が確認されました。フォシーガとオングリザの併用群では―38%の減少効果が確認されました。いずれも有意差があり腎保護作用が確認されました。

 

HbA1c低下作用についてはフォシーガとオングリザの併用がプラセボに比べて―0.58%の減少効果があることが示されました。

 

有害事象(副作用)について

有害事象発現率はフォシーガ服用群で54%、フォシーガ・オングリザ併用群で68%、プラセボ群で54%、重大な副作用発現率はフォシーガ服用群で8%、フォシーガ・オングリザ併用群で8%、プラセボ群で11%となり、差は確認できなかったとされています。

 

中等度~重度の慢性腎臓病を合併する2型糖尿病患者さんにおいて、フォシーガ服用またはフォシーガとオングリザの併用は腎機能保護に有益であることが確認されたとしています。

慢性腎臓病を合併する2型糖尿病患者さんにおけるフォシーガまたはフォシーガとオングリザの併用効果について

 

2018年10月31日追記

ジャディアンス服用が延命に寄与する

心血管疾患を有する2型糖尿病患者さんを対象としたジャディアンスの効果を確認するEMPA-REG OUTCOME試験の結果を詳細に解析したところ、2型糖尿病患者さんの寿命が伸びることが示唆されました。

2型糖尿病患者さん7020人を対象としてジャディアンス服用群とプラセボ群(何も飲まなかった群)を比較したところ、45歳の被験者における平均推定生存期間がジャディアンス服用群で32.1年、プラセボ群で27.6年という結果となり、ジャディアンスを服用することで4.5年間の延命となる可能性が示唆されました。(50歳の被験者では3.1年、60歳の被験者では2.5年、70歳の被験者では2年、80際の被験者においては1年の寿命延長が示されています)

データを解析したBrian Claggett氏はジャディアンスの服用で心血管疾患の既往がある2型糖尿病患者さんの寿命が2.5年長くなることが推定されると記しています。

ジャディアンス服用による延命についての具体的な効果については今後の検討が必要かと思いますが、現状で報告されている内容から推測しますと、ジャディアンス服用による腎保護作用が延命につながる有用なポイントだと思います。心臓と腎臓の循環血流量が維持されることが心腎連関が維持され、心血管リスクの増悪を回避しているのではないでしょうか。

心腎連関について

以下は心血管疾患を有する2型糖尿病患者さんがジャディアンス錠服用したことで腎機能を保護したことに関するデータをまとめたものです。

心血管疾患を有する2型糖尿病患者におけるジャディアンス錠の延命効果について

ジャディアンス錠による腎保護作用について

2015年11月に公開されたEMPA-REG OUTCOME試験により、SGLT2阻害剤「ジャディアンス」を服用している2型糖尿病患者さんの心血管イベントは有意に抑制することが報告され話題となりました。

2型糖尿病患者におけるSGLT阻害剤、GLP-1作用薬、DPP-4阻害剤の心血管疾患イベントへの影響について 

2016年6月、EMPA-REG OUTCOME試験の副次アウトカムとしてジャディアンスの腎臓への影響を調査したデータが第76回米国糖尿病学会にて報告されました。

ジャディアンス1日1回10mgまたは25mg服用群(4124例)、プラセボ群(2061例)を対象として比較データが集約され、Cox回避ハザードモデルを用いて腎機能に対するハザード比が算出された結果、

腎症の新規発生または悪化の発生率
ジャディアンス群:12.7%
プラセボ群:18.8%
ハザード比:0.61 95%信頼区間0.53~0.7 P<0.001有意差あり
ジャディアンスで39%という有意な発生率低下が示されました。

また、腎機能低下の評価項目として
たんぱく尿(マクロアルブミン尿)への進行率
ジャディアンス群:11.2%
プラセボ群:16.2%
ハザード比:0.62 95%信頼区間0.54~0.72 P<0.001有意差あり
ジャディアンス群で38%という有意な尿たんぱく発生低下が示されました。

血清クレアチニン値の倍増率
ジャディアンス群:1.5%
プラセボ群:2.6%
ハザード比:0.57 95%信頼区間0.39~0.79 P<0.001有意差あり
ジャディアンス群で44%の有意な血清クレアチニン値の低下が示されました。

腎代替療法の開始率
ジャディアンス群:0.3%
プラセボ群:0.6%
ハザード比:0.45 95%信頼区間0.21~0.97、P=0.04有意差あり
ジャディアンス群で55%の有意な相対リスク減少が確認されています。

しかし、アルブミン尿の新規発症リスクは
ジャディアンス群:51.5%
プラセボ群:51.2%
両群間に差はみられませんでした。

ジャディアンス錠によるARBやACEIのような腎保護作用の可能性について

さらに、非常に興味深い考察として、ジャディアンス服用患者さんのeGFRはACE阻害薬やARBによる腎保護作用と類似したeGFR変動を示したという記述があります。

ACE阻害薬やARBは、腎臓の輸出細動脈と輸入細動脈の収縮を抑制する働きがあります。特に輸出細動脈をより広げることによって腎糸球体内圧をさげ、腎臓を保護する作用が見出されています。このとき、腎保護作用により腎臓内の圧力がさがるためにeGFR(老廃物を尿へ排泄する能力)の値も低下します。(下図参照)

ACE阻害薬やARBによる腎保護作用とは右肩下がりで減少していたeGFR(赤線)を改善するために糸球体内圧を下げて、eGFRの減量率を低下させる働きをいいます。(ACE阻害薬やARBを服用することで赤線から青線へ移行します)その代わりと言ってはなんですが、ACE阻害剤やARBの服用開始時はeGFRが一過性にガクンと低下するという事実があります。(青線の開始部分でeGFRの値が赤線よりも低い値となっています)。データとしてはACE阻害薬やARBを継続的に3〜4年飲み続けていると青線が赤線よりも上になり、その後は青線の右側のように、なかなか腎機能が低下しにくくなるという事実があります。

考察の中で、ジャディアンス服用群のeGFRを確認したところACE阻害剤やARB服用群と似たようなeGFRパターンを示したという記述があり、ジャディアンスの服用中止によりeGFRが改善するというデータが確認されています。

ジャディアンス錠による腎機能悪化抑制データ 

さらに、上記データはACE阻害剤やARBを服用している2型糖尿病患者さんがジャディアンスを服用したときのデータであることから、ACE阻害剤やARBによる腎保護作用に追加して、ジャディアンスが糸球体内圧をさらに低下させたことを意味します。

筆者らは慢性腎臓病を有する2型糖尿病患者さんにはACE阻害薬やARBに追加してジャディアンスの併用を支持するとまとめています。

上記データはEMPA-REG OUTCOME試験の追加データですので、ジャディアンスを対象としていますが、SGLT2阻害剤全般に言えるとすると、非常に有用な報告に感じます。

2型糖尿病患者におけるSGLT阻害剤、GLP-1作用薬、DPP-4阻害剤の心血管疾患イベントへの影響について 

ジャディアンス錠による腎機能悪化抑制データ 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業