重質酸化マグネシウムも酸化マグネシウムも同じ「酸化マグネシウム」製剤です。
ネーミングの由来については、第10改正日本薬局方までは
「5.0gの容積が30ml以上を“軽質品”、30ml以下を“重質品”」と規定していましたが、第11改正日本薬局方からは容積による分類がなくなり、重質品も軽質品も共に一般名は「酸化マグネシウム」となりました。この時のネーミングがいまだに残っているため商品名として「重質酸化マグネシウム」製剤と「酸化マグネシウム」製剤が販売されております。
以上のことから「重質酸化マグネシウム」と「酸化マグネシウム」とは粉の密度の違いにより過去に名付けられた呼び名であり、いまではどちらも同じ薬であることはわかりました。
処方箋に
(般) 酸化マグネシウム 1g/1×
という処方があった場合は「重質酸化マグネシウム」を調剤しても「酸化マグネシウム」を調剤してもどちらでも問題ありません。
実際の密度が違うということなので、どの程度ちがうのかを調べてみようかと思ったのですが、そもそも密度や比重に関する記載義務がないため、重質品・軽質品に関してインタビューフォームに記載している品目は3品目しかありませんでした。
・酸化マグネシウム「NP」原末
比重:重質品:3.0~3.6、軽質品:2.75
・酸化マグネシウム「シオエ」原末
比重:重質品:3.0~3.6、軽質品:2.75
上記2銘柄は比重値を(その他の主な示性値:適否の判定基準としないもの)に記しています。
・重質酸化マグネシウム「ホエイ」
細粒状(FG)と微粒状(VFG)を目の細かな篩(ふるい)にかけて、どれくらいも目の細かさの篩(ふるい)でどれくらいの粒子が落下するかという粒度分布を示しています。他社がほとんどデータを開示していない中、「ホエイ」だけが非常に詳しいデータを開示しています。
篩号数(ふるいごうすう)という聞きなれない指標を横軸としているのですが、篩(ふるい)のメッシュのサイズにより篩号数がきまっていて、篩号数が大きくなるにつれてメッシュが細かくなる(小さな粒子径が落下する)という意味合いの指標となっています。
微粒状の製剤は篩号数200前後(網目径:75㎛)を落下する製剤であるのに対して、細粒状は篩号数60前後(網目径:250㎛)を落下する製剤となっています。
また、粗比容積(密度の逆数)を確認してみると、微粒状製剤が1.91ml/g、細粒状が0.94ml/gとなっています。(密度で表現すると微粒状:0.52g/ml、細粒状:1.06g/ml)
粒度分布とは
酸化マグネシウムの粒子群の中に、どの程度の大きさの粒子(粒子径)が、どのような割合で含まれているかをパーセンテージで表示し指標です。酸化マグネシウム(重質酸化マグネシウム)の場合は「細粒状」と「微粒状」という2種類の粉の粒子が混合されており、その比率が製品によって異なります。
・「重質酸化マグネシウム」も「酸化マグネシウム」も同じ「酸化マグネシウム」製剤です。
・呼び名は過去の基準(5.0gの容積が30ml以上か以下か)に由来します
・「重質」と記載されている製剤の方が飲む粉の量が少ない
・重質品と軽質品の比率は1.1~2倍程度の密度差がある
・重質酸化マグネシウム「ホエイ」のインタビューフォームには細粒状・微粒状・粗比容積(密度の逆数)・安息角が記されている
ニューキノロン系抗生剤と併用できない金属カチオンの量について
注意):酸化マグネシウム・重質酸化マグネシウム製剤の薬価は銘柄により1gあたり0.92~1.51円と差があります。
注意):酸化マグネシウム(粉)は後発医薬品ではないため、銘柄処方を他銘柄へメーカー変更調剤してよいというルールはありません(原則)。ただし、地域の支払基金の解釈によりこのあたりの解釈はグレーとなっているところもあるようです。