小児が整形外科を受診した際に痛み止めとしてモーラステープが処方されることがあります。モーラステープを使用したことがある親御さんからは「子供に貼っても大丈夫ですか?」と質問を受けるケースがあります。今回はモーラステープを子供に貼っていい理由を調べてみました。
「モーラステープを子供に貼って大丈夫ですか?」と親御さんが心配する理由は、痛み止めとして大人が使用する貼り薬を子供が使って、子供に害はありませんか?子供に貼った場合、その成分が皮膚から血液中に入ってきて、子供の肝臓や腎臓などの臓器に害はありませんか?と親御さんの心配度合いを拡大解釈しても過言ではないかもしれません。以下にモーラステープを小児に貼ってよい理由について、「量」と「成分」について言及して記してみます。
一般的な飲み薬について大人が飲む量を100とした場合に子供が飲む量を換算してみます。
大人:100
12歳:66
7歳半:50
3歳:33
1歳:25
新生児:5~10
飲み薬は消化管で吸収された後、血液中をぐるぐるとめぐって効果を発揮しますが、小児は体格に加えて肝臓や腎臓などの臓器が大人と比べて未発達ですので、薬を飲む量も少なくなります。
モーラステープの成分は「ケトプロフェン」という成分ですが、日本国内においてはこの成分の飲み薬はありません。ケトプロフェン製剤の坐薬および注射薬はあります。
ケトプロフェン坐薬75mgを大人に1本投与すると24時間以内に“15.5㎍・hr/ml”という量のケトプロフェンが体内をめぐります。大人では1日2回使用することができますので、1日2回使用した場合24時間以内に大人の血液中をおよそ“30㎍・hr/ml“という量のケトプロフェンがながれることができると考えます。
モーラステープ20mgを背中に1枚24時間貼った場合にどれほどのケトプロフェンが血液中を流れるかを確認したところ2~2.5㎍・hr/mlという量が血液中を流れることがわかりました。
大人の血液中には30㎍・hr/mlのケトプロフェンが流れることが可能であることを考えますと、モーラステープ20mgを1枚24時間貼った場合の量(2~2.5㎍・hr/ml)は1/10~1/15程度のケトプロフェンが血液中を流れることになります。
一般的に子供の薬の使用量は大人の使用量の1/10程度であることを考慮しますと、モーラステープ20mgを1枚24時間貼付した際に、血液中をながれるケトプロフェン量は小児用量としては問題ない量と考えることができます。
モーラステープの成分“ケトプロフェン”はNSAIDS(非ステロイド性抗炎症薬)と呼ばれますが、小児に対しては禁忌ではありません。しかし、水痘やインフルエンザのようなウイルスに罹患している小児にボルタレン(ジクロフェナク)というNSAIDSを使用した場合に急性脳症を患う可能性が示唆されているため原則禁忌となっております。
体の痛みで整形外科を受診した小児にモーラステープが処方された場合、インフルエンザや水痘のようなウイルスに感染して発熱が確認されないケースにおいては、脳炎を発症する報告はありませんので、モーラステープを使用することは差し支えないと考えます。
注意することがあるとすると、アスピリン喘息の既往がないかどうかでしょうか。あとは大人に比べると子供の皮膚はやわらかいため24時間貼付するとかぶれる頻度が高くなる可能性があるかもしれませんので、そのあたりに気を配る感じかと思います。
・小児がモーラステープ20mgを貼ると1日で大人がケトプロフェンを使用する量の1/10~1/15程度のケトプロフェン成分が体内を流れることとなります。この量は小児量換算で計算した数値的には問題ない量と考えます。
・ケトプロフェンを小児に投与することについては、ウイルス感染していない小児にNSAIDSを投与した場合にライ症候群のような脳炎を発症した報告がないことから差し支えないと考えます。