ドイツやスイス、オーストラリアでは片頭痛の治療薬としてカロナール(アセトアミノフェン)とカフェインとの併用を推奨している報告があります。急性片頭痛に対する治療成績を確認してみると、カロナールとカフェインを服用後に1時間で痛みが緩和した患者さんの割合は39%であるのに対し、何も飲まなかった場合(プラセボ)の緩和率が20%であり、有意性が示されています。国内では小児の頭痛・片頭痛にカロナールが処方されるケースを目にすることがあります。今回は片頭痛に対するカロナール(アセトアミノフェン)の効果と処方量について調べてみました。
プラセボ(薬成分が入っていない錠剤)と比べて片頭痛の治療に有意差が出ているカロナールの投与量を確認してみるとカロナール1000mg対プラセボという投与量については複数の報告がなされており、
カロナール1000mg VS プラセボ(服用から1時間後)
有効治療率: 39% VS 20%(被験者:635名)
カロナール1000mg VS プラセボ(服用から2時間後)
有効治療率: 56% VS 36%(報告1:被験者717名)
有効治療率: 38% VS 20%(報告2:被験者576名)
片頭痛発症時にカロナール1000mgを服用するとプラセボと比較して2倍程度の割合で症状が緩和・軽減されることが確認できます。いくつかの報告を確認した印象では、イブプロフェン400mgとカロナール1000mgが片頭痛に対する治療成績で同等と評価されているように感じました。
カロナールの鎮痛作用に関する報告として、血液中を流れるカロナール(アセトアミノフェン)濃度が約10㎍/ml(小児においては11~12㎍/ml)を超えると痛み止めとしての効果が発揮されるという報告がいくつかなされております。
カロナール1000mgを頓服服用すると、30分後あたりで血中濃度が10㎍/mlを超え、服用から2時間ほどは十分な血中濃度が維持されますので、一過性で片頭痛を感じた時にカロナール1000mgを飲む(空腹での服用OK)と20~30分程度で頭痛が気にならなくなる程度に回復すると思います。一方でカロナール500mgの頓服では最大でも血中濃度が8~9㎍/mlまでしか上がらないため、十分な鎮痛効果が感じられるかどうかは個人差が出てくるように感じます。
カロナール(アセトアミノフェン)の血中濃度と鎮痛・解熱効果に関する薬物動態
尚、頭の筋肉が持続的に収縮して頭痛を伴う緊張型頭痛に対してはカロナール1000mgよりもカロナール500mg + カフェイン65mgを服用する方が第一選択しとして推奨されており、その効果はイブプロフェン400mg、ボルタレン25mgと同程度の評価を得ています。
痛み止めとして小児に対するカロナール(アセトアミノフェン)を使用する場合の量15mg/kgについて
ドラッグストアなどではカロナールの成分であるアセトアミノフェン製剤が販売されており、例えば“タイレノール“という商品にはアセトアミノフェンが300mg含まれています。用法を見てみると1日3回まで、1回1錠と記されているのですが、片頭痛時に1回1錠使用することを想定してみると、血中濃度は5~6㎍/ml程度までしか上がりませんので、鎮痛剤としての治療域には到達とはいいがたい気がします。
注)熱さましとしてアセトアミノフェンを使用する場合、血中濃度が4.63㎍/ml以上であれば解熱効果があると報告されていますので、タイレノール錠300mg1錠は解熱作用としては有用な医薬品です。
痛み止めとして小児に対するカロナール(アセトアミノフェン)を使用する場合の量15mg/kgについて