インド中部で咳止めシロップを飲んで子供17人が死亡
インド中部マディヤプラデシュ州で2025年9月に咳止めシロップを飲んだ小児17人が死亡しました。
死亡原因は急性腎障害を引き起こすジエチレングリコールを基準値の500倍含有していたためとしています。
ジエチレングリコール(Diethylene Glycol、略称:DEG)は、無色・粘性の液体です。
水や極性溶媒に溶けやすく、甘味を持つのが特徴です。
身近な製品に含まれる例としては
• 自動車関連
• 不凍液(ラジエーター液)
• ブレーキオイル
• 潤滑剤
• 接着剤
• 印刷インキ
• 塗料
等に含まれています。
一方で、食品や歯磨き粉などへの混入は厳しく規制されています。
過去に起こった人体への影響と過去の中毒事件
ジエチレングリコールは経口摂取すると極めて有毒で、肝臓・腎臓・中枢神経系に深刻なダメージを与えます。
誤飲による死亡例も多数報告されています。
主な症状
• 嘔吐、下痢、意識障害、腎不全、呼吸不全、最悪の場合は死亡
• 吸入や皮膚接触でも頭痛、めまい、刺激症状を引き起こす可能性あり
有名な中毒事件
• 1937年 アメリカ:風邪薬に混入し105人死亡(エリキシール事件)
• 1985年 オーストリア:ワインに甘味料として混入、毒入りワイン事件
• 2007年 パナマ・中国製薬品:風邪シロップに混入し100人以上死亡
• 2022–2023年 ガンビア・インドネシアなど:咳止めシロップ汚染で300人以上の子どもが死亡
などが報告されている成分です。
100倍量のモルヒネを処方された患者がモルヒネ中毒で死亡
2021年2月に東京都国分寺市の「武蔵国分寺公園クリニック」の40代医師(女性)と市外の調剤薬局の60代薬剤師(女性)が必要量の100倍にあたるモルヒネを誤って処方し、患者男性(93歳)を死亡させたとして書類送検されました。
93歳の男性患者はモルヒネの粉薬を服用し、1週間後にモルヒネ中毒により亡くなっています。
医師が電子カルテの入力を誤り、薬剤師が処方箋に従って薬を調剤したことが原因としています。
警視庁の任意の事情聴取に対し、2人は容疑を認めているということです。

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このニュースを聞いて薬局や病院でモルヒネ原末を扱ったことがある薬剤師であれば「モルヒネ原末は100倍散で使用する薬だなぁ」とイメージできるんですよね。
モルヒネは咳止めや痛み止めに対して1回に5~10mgを飲む薬なのですが、モルヒネ原末を0.01gとか0.005gとか計測するのは難しいため、あらかじめ
モルヒネ0.1g + 乳糖9.9g を混合しておき「100倍散モルヒネ」を作っておくんですよね。
こうすると、100倍散のモルヒネ1gの中には10mgのモルヒネが含まれていますので、
1回に100倍散モルヒネを0.5~1gで調剤することが可能となります。
今回の事件では「電子カルテの入力を誤り100倍量が処方された」わけですから、
モルヒネ原末500mg~1gが記載されていたことが想像されます。
このニュースを見て現場の薬剤師として感じたことは、
「普段から扱っている薬であれば気づくことができるはず」であり、「普段扱っていない薬であれば、よくよく調べて扱うべきである」ということです。
