ハンマーでも破砕できない“オキシコンチンTR錠”が2017年12月8日発売
厚生労働省からの開発要請を受けて「オキシコンチンTR(Time Release)錠」が発売となりました。オキシコンチンTR錠は麻薬製剤の乱用防止を目的とした持続性がん疼痛治療薬です。
海外において麻薬製剤をハンマーで砕き、それを水に溶かして注射投与するという乱用事例が報告されております。米国FDAは2013年以降、乱用防止を目的としてオキシコンチンTR錠の使用を推奨しております。
オピオイド誘発性便秘症治療薬スインプロイク錠0.2mg(ナルデメジントシル酸塩)について
~オキシコンチンTR錠の特徴~
オキシコンチンTR錠は,薬剤改変による乱用を防止することを目的に,錠剤の強度を高くすることで粉末まで砕くことが困難な硬い製剤に設計されています。その破砕抵抗性は,乱用目的にハンマー等の鈍器で破砕を試みる衝撃以上を想定した圧力を錠剤に加えた際に,破砕が可能であるかどうかにより確認したところ、「粉末又は砕きやすい塊を生じなかった」と報告されております。
また,添加物であるポリエチレンオキシドは酸化エチレンの非イオン性ホモポリマーで,溶解するとゲル状になる特徴を有しているため、水に溶解してもゲル化して注射投与が出来ない錠剤設計となっております。
オキシコンチンTR錠は水を含むとゲル化するため,舐めたり,ぬらしたりせず,口に入れた後は速やかに十分な水でそのまま飲み込むよう患者に指導する必要があります。
嚥下が困難な患者様の中には、錠剤を口にいれてから飲みこむまでに時間がかかる方がおります。また認知機能が低下している患者様の場合、口にいれた錠剤を長時間飲みこまずに口腔内にとどめている方を目にしたことがあります。消化管閉塞のリスクが高まるためオキシコンチンTR錠は上記の様な嚥下困難な患者様への処方には注意が必要です。
さらに、経鼻や胃瘻など経管チューブを用いて薬を投与する方法に「簡易懸濁法(微温湯で薬を崩壊させて投与する方法)」があります。オキシコンチンTR錠では錠剤がゲル化してチューブを閉塞してしまう恐れがあるので、こちらも投与前に粘度を確認する必要があります。
~オキシコンチン錠とオキシコンチンTR錠の比較~
食事の影響
オキシコンチン錠:食事の影響はほとんど見られなかった(160mg高脂肪食摂取後を除く)
オキシコンチンTR錠:空腹時とくらべて食後投与は血中濃度が高くなる
生物学的同等性試験
空腹時および食後(高脂肪食摂取後を除く)でのオキシコンチン錠およびオキシコンチンTR錠の生物学的同等性試験の統計解析結果はlog(0.8)~log(1.25)の範囲内であるため医薬品ルールとしては判定基準をみたしています。
食事の有無を問わず、オキシコンチン錠に比べて、オキシコンチンTRのAUCが上がるためオキシコンチン錠からオキシコンチンTR錠へ変更される患者様の主観として、「効果は変わらない」と感じるかなぁと思います。
尚、高脂肪食摂取後にオキシコンチンTR錠を服用すると、吸収速度が上がるため、血中濃度が早い段階で上昇してしまう半面、有効作用時間が短くなるため、徐放性としての特性が減弱するので注意が必要です。
薬価に関してはオキシコンチン錠とオキシコンチンTR錠の薬価は同じです。
オキシコンチンTR錠を患者様へお渡しする際は、上記の点を踏まえてお伝えしていこうと思いました。