喘息の吸入薬を吸うときの口および舌の形と吸入量に関する報告がありました。私はこれまで「フー」っと息を吐いて、そのまま吸入薬をくわえて大きく深く吸い込みましょうとお伝えすることが多かったのですが、どうやら「フー」ではなく「ホー」の方が、咽頭や気管へしっかりと薬が届くようです。
今回の報告は28〜41歳の健康な成人6人を対象として、レルベアまたはフルティフォームの吸入器(吸入器の中身は薬ではなく粉が入っている)を吸ったときの吸入量について内視鏡を用いた撮影動画から画像を解析して比較したデータとなっています。
「フー」または「ウー」という唇の形(唇を前に突き出した形)で吸入器を加えると、舌は口腔内の中央に位置します。この状態で吸入すると、薬の多くが舌や口腔内に付着します。画像解析のデータでは舌・口腔内・咽頭に付着した薬のうち咽頭に達したい割合は17.4%と報告されています。このデータはあくまで画像のデータですので、実際の薬成分は咽頭から更に奥の気管まで分布しています。ただ、舌や上口蓋といった薬が付着しなくてもいい部分に薬が付着しているため「無駄」となってしまった薬が多いという事実が明らかになりました。
一方で、「ホー」または「オー」という唇の形(口の中に大きな空間をつくるイメージ)をして、さらに吸入口の下に舌を入れて吸入すると、吸入口から咽頭につながる真っ直ぐなルートができるため、気流が喉の奥まで流れます。この方法で吸入したときの画像解析データでは舌・口腔内・咽頭に付着した薬のうち咽頭に達した割合は60.7%と報告されています。(吸入した薬の60%という意味ではありません。吸入した多くの薬は気流とともに気管にまで届いています。ただ、前述した吸入方法よりは口腔内の無駄な部分に付着する薬の量が低下しています。)
口腔内に付着する薬の量が減るということは、喘息の炎症部位に届いている薬の量が増えると同時に、口内炎などの口腔内での副作用の軽減にもつながるため、非常に有用な吸入方法に感じます。
吸入器を加える際の舌の位置ですが、吸入口の下に舌を置き、前から見たときの舌の断面がUの字となるように軽く湾曲させます。さらに舌が吸入経路を妨げないように咽頭の後部を広げるような意識で吸入することが好ましいと記されています。
患者さんがこの吸入方法を習得することができれば、気管内へ喘息薬が届く量が増えますので、症状の軽減にもつながると同時に口腔内の副作用軽減にも繋がります。また吸入薬の有効成分を最大限に活用することができるため医療費の削減にもつながるかもしれません。今回はレルベアとフルティフォームの吸入器についての報告でしたが、吸入口を加えるタイプの吸入薬であれば、同等の成績が挙げられると思います。
調剤薬局では患者様へ吸入薬をお渡しするケース多々ありますので
という吸入説明が今後増えてくるかもしれません。