「水分補給をしっかり行いましょう」と言う声掛けは古来より言われていますよ。特に高齢になると冬場のトイレが近くなることを理由に「水を飲まないようにする」方も散見されますが、これは死亡リスクを高める要因と言われます。
汗をかきやすい夏場だけでなく、冬場も十分な水分補給が大切です
(水分制限をされている方を除く)
米国での報告なのですが、水分補給が死亡リスク・慢性疾患リスクに対してどの程度影響があるのかについて、25年間にわたり継続的に調査されたデータが公開されていましたので概要を記します。
被験者:1万1255人(45~66歳)
(平均血中Na濃度:正常域(135~146mmol/l)、血症グルコースレベル正常域、BMI<35未満の被験者)
1987年から1989年の期間に、上記の被験者を抽出し、以下のスケジュールで血中Na濃度をフォローし続けたデータです。トータル25年間の追跡調査終了時における水分補給、血中Na濃度が加齢性慢性疾患や死亡リスクにどの程度の影響をもたらしていたかを調査しています。
1回目:1987年~1989年(平均年齢57歳)
2回目:1990年~1992年
3回目:1993年~1995年
4回目:1996年~1998年
5回目:2011年~2013年(平均年齢76歳)
(採血を行う8~12時間前から絶食しています)
採血データや検査データにより15のバイオマーカーをを選出し、「生物学的年齢」を算出し、実年齢との乖離とリスクについて調査も行っています。
バイオマーカー
心血管(収縮期血圧)、腎臓(eGFR、シスタチンC、尿素窒素、クレアチニン、尿酸)、呼吸器(FEV)、代謝(グルコース、コレステロール、H生物学的年齢1c、糖化アルブミン、フルクトサミン)、免疫/炎症(CRP、アルブミン、ベータ2ミクログロブリン)
血清ナトリウムが144.5~146mmol/lの群では早期死亡リスクが21%増加した
血清ナトリウム142mmol/l超の群では慢性疾患を発症するリスクが39%上昇した
血清ナトリウムが142mmol/lを超えると、生物学的年齢が高くなる割合は10~15%
血清ナトリウムが144mmol/lを超えると、生物学的年齢が高くなる割合は50%
生物学的年齢(採血データ、検査データによりえら得た推定年齢)が実年齢を上回ると、慢性疾患を発症するリスクが1.7倍、早期死亡リスクが1.59倍高くなることがデータで示されました。
世界的な調査では、50%以上の人が推奨される量の水分が摂取できていないといわれています。
(水分量が足りなく体液量が減少すると、神経体液性因子の活性化が生じ、循環血流を維持するために高濃度の尿を少量だけ排泄するサイクルとなり、心負荷・腎負荷が増します)
筆者らは25年間の追跡調査の結果として、血清ナトリウムの閾値は142mmol/lと考え、この値を上回ると、生物学的年齢が上昇し(老化)、慢性疾患や早期死亡リスクが上昇する可能性があるため、十分な水分補給を持続する必要があるとまとめています。