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甲状腺機能亢進症・バセドウ病に対するヨウ化カリウム(ヨウ化カリウム丸)のはたらきについて

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甲状腺機能亢進症・バセドウ病に対するヨウ化カリウム(ヨウ化カリウム丸)のはたらきについて

先日、定期薬としてメルカゾールを3錠/1×で使用している患者さんの処方が
メルカゾール2T/1×
ヨウ化カリウム丸2T/1×
へと変更になりました。

バセドウ病のヨード剤併用療法


バセドウ病:アイソトープQ&A

ヨウ化カリウムという薬は常に在庫していたのですが、ほとんど手にすることはなく今日に至っており、具体的な薬理作用を知らぬまますごしておりました。そこでヨウ化カリウム丸がどのように甲状腺機能亢進症・バセドウ病・甲状腺クリーゼに対して効果を示すのかを調べてみました。

○甲状腺ホルモンの形
体内をグルグルまわっている甲状腺ホルモンは一般的にT3・T4とよばれる有機化されたヨウ素の形をしています。(図1)赤丸で示された部分が「ヨウ素:」I」であり、ヨウ素の数が3つのものをT3、4つのものをT4と呼んでいます。

チロキシン
チロキシン

ここでのポイントは単に「ヨウ素:I」があればよいというわけではなく、「有機化された(2つのベンゼン環にくっついたヨウ素という形」となって始めて甲状腺ホルモンとしての役割を担うということです。
図1

○甲状腺機能亢進症治療薬であるメルカゾール・プロパジール・チウラジールの薬理作用
海藻類などの食事により摂取されたヨウ化物は腸から吸収され、甲状腺に取り込まれます。甲状腺内の濾胞上皮細胞にてヨウ化物が酸化されてヨウ素となり、ヨウ素がベンゼン環と結合して甲状腺ホルモンの形を呈します。

メルカゾールやプロパジールといった甲状腺機能亢進症治療薬はヨウ化物の酸化およびヨウ素がベンゼン環に結合する反応の両方を阻害することにより「甲状腺ホルモンの合成を阻害」します。このため結合に利用されなかったヨウ素は体内および甲状腺内に浮遊することもあれば排泄されることもあります。

○ヨウ化カリウム丸50mg(分子量166)とチラーヂンS50μg(分子量798.85)中のヨウ素量を比較する
ヨウ化カリウム50mg(ミリグラム)中には0.0003molのヨウ素が含まれています
T4製剤であるチラーヂンS50μg(マイクログラム)中には0.0000000625×4molのヨウ素が含まれています。(×4はT4製剤であるためヨウ素を4つ含むという意味です)
上記数値よりヨウ素原子含有量を比較してみますと
ヨウ化カリウム:チラーヂンS=1200:1
となります。ヨウ化カリウム中に含有されるヨウ素原子の量がいかに多いかがわかります。

○ヨウ化カリウム丸の薬理作用
上記計算式のように大量のヨウ素原子であるヨウ化カリウム丸を服用したときの体内動態を想定してみます。腸管を経て体内に取り込まれたヨウ化化合物は甲状腺内および血中を浮遊します。

身体は一時的に大量のヨウ素化合物(ヨウ素原子)が取り込まれたことを感知し、通常通り甲状腺ホルモンを産生しては過剰になってしまうことを察知して甲状腺ホルモンの産生を減らします(フィードバック阻害作用)。さらに、甲状腺機能亢進時にヨウ素はcAMPを介して甲状腺ホルモンの作用を抑制する効果があります(添付文書より)。

このような作用により甲状腺ホルモンの原材料であるヨウ素を大量に服用することで甲状腺ホルモンの産生を抑えているものと推測されます。しかし、この作用はそれほど長続きしません。なぜならば甲状腺ホルモン量を制御している視床下部が「ヨウ素は大量にあるものの、そこから生産されるはずの甲状腺ホルモン量は少ない」と判断した段階で甲状腺ホルモンの産生が再開されるためです。

ヨウ化カリウムを長期にわたって使用していると効果がなくなり、甲状腺ホルモンの量が多くなってしまうエスケープ現象が生じるのはこのためです。(個人差があり、長期間服用できる患者さんもおります)
バセドウ病のヨード剤併用療法


バセドウ病:アイソトープQ&A

初回服用時の注意点を記載します。

一般的な食事から摂取されるヨウ素量は1日1~3mgと言われています。ヨウ化カリウム丸50mg1錠に含まれるヨウ素量はおよそ38mgですので一般的な食事摂取量の10~30倍の量です。

服用後消化管で38mgすべてが吸収されるわけではありませんので、実際に体内に取り込まれて薬として効力を発揮する量には個人差があります。またこの量が多いかどうかに関しては服用される患者さんの体調、適応状況、疾患内容により勘案されるべき量ですので言及は避けます。

服用時の注意点は、食直後に服用すると胃内容物とくっつくことがあるので、食直後は避けた方がよいでしょう。また制酸剤や牛乳と一緒に服用すると胃障害を軽減できることがわかっています。

服用による副作用に関してですが、この薬は使用成績調査などの副作用発現頻度が明確となるような調査が実施されておりません。そのため予想される副作用は添付文書に記載されていますが、その発現頻度は不明です。おもな副作用項目は

・ヨウ素中毒:結膜炎、鼻炎、気管支炎、流涎
・ヨウ素悪液質:皮膚の粗荒、体重減少、心悸亢進、不眠

上記以外には発疹や消化器症状などが起こりうる症状として記載されています。

ヨウ化カリウム製剤であるためカリウム含有量が1錠あたり12mgほど入っています。そのため腎機能障害患者さんや高カリウム血症患者さんでは慎重投与とされています。
(アスパラカリウム300mg中に含まれるカリウム量は分子量から計算すると68mg程度ですのでヨウ化カリウムに含まれる12mgというカリウム量は少ない量ではないと考えます)

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バセドウ病:アイソトープQ&A

ヨウ化カリウム製剤は、それほど処方頻度は多くない薬であると思いますので、手に取る時はヨウ素含有量および起こりうる副作用を毎回確認してもいい薬ではないかと思います。

 

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