ステロイド含有貼り薬であるエクラープラスターの強さを調べる
ステロイド含有の貼り薬であり、以前から名前は聞いたことがあったのですが、これまで手に取る機会がなく調べることもありませんでした。数日前に、たまたまエクラープラスターを購入することとなったのを機に、今回はエクラープラスターの効き目、強さについて調べてみることにしました。
プラスターとは
貼り薬の構造は支持体、薬成分、剥離フィルムの3層構造になっています。支持体といわれる布部分にはニット、プラスチックフィルム、不織面などが用いられ、用途によりその素材は異なります。薬成分の部分は、水分を多く含む製剤をパップ剤とよび、水分を含まない成分をプラスター製剤とよんで区別しています。
ステロイド含有貼り薬では、支持体の組成が非常に重要な意味を持ちます。支持体がニットや不織面などの通気性素材であれば効能効果は軟膏やクリームとそれほど差はでないのですが、支持体が患部を密封することができるプラスチックフィルムの場合は、ステロイド外用薬治療の効果を高める密封療法(ODT)となるため効き目が数倍強くなるためです。
久光製薬のホームページからエクラープラスターの支持体について確認してみると、製剤写真の備考欄に
「無色透明~淡黄色透明の膏体をポリエステルフィルムに展延した貼付剤」
という記載があります。
このためエクラープラスターは支持体がポリエステルフィルムである密封療法に使用するステロイドテープ剤であることがわかります。
密封療法(ODT)として用いられるエクラープラスターの力価に関して久光製薬に確認したところ
「エクラーの成分であるデプロドンプロピオン酸エステルとしての力価がストロングであることを考えると、密封療法であるエクラープラスターの力価は1ランクまたは2ランクアップするものと考えられます。ランクアップ度合に関しては貼付時間および皮膚状態により異なります」
という回答をえました。つまりエクラープラスターを力価分類すると、ベリーストロングかストロンゲストクラスのステロイド含有テープ剤であることがわかりました。(貼付時間により異なる)
次にエクラープラスターに含有されている有効成分量(デプロドンプロピオン酸エステル)がエクラー軟膏と比べてどれほどの含有量なのかについて計算してみました。
エクラープラスターには1平方センチメートルあたり20μgのデプロドンプロピオン酸エステルが含まれています。一般的な軟膏塗布量を参考にして同一成分であるエクラー軟膏0.3%とエクラープラスターとの有効成分量を比較してみます。一般的な軟膏塗布量は1FTU(人差し指の第一関節の長さに薬を出した量)あたり0.5gと言われています。両手の大きさは人によって異なりますが、1FTU=大人の手の2枚分の面積(300平方センチメートル)を塗ることができると考えます。
エクラー軟膏0.3%は300平方センチメートルを塗るために0.5gを使用すると考えますと、0.3%有効成分であるデプロドンプロピオン酸エステルの塗布量は1500μgとなります。
同様の面積(300平方センチメートル)をエクラープラスター20μgで覆うとすると必要なデプロドンプロピオン酸エステル量は
20μg×300=6000μgとなります。
あくまで単純計算での話ですが、エクラープラスター1枚24時間貼付する場合、エクラー軟膏0.3%を24時間中に4回塗りなおせば同様のデプロドンプロピオン酸エステルを使用したことになります。
ただし、上記使用量換算については、エクラー軟膏は単純塗布を1日4回行う作業なのに対し、エクラープラスターはステロイド密封療法による治療ですので、実際の治療効果はエクラープラスターの方が、軟膏塗布の数倍の力価であることが示唆されます。
○エクラープラスターとドレニゾンテープとの比較について
ステロイド含有テープ剤であるエクラープラスターとドレニゾンテープ(フルドロキシコルチドテープ)との比較データがエクラープラスターのインタビューフォームに記載されています。
苔癬化型湿疹・皮膚炎群・尋常性乾癬及び痒疹群の患者を対象として1日1回寝る前に両薬剤を塗布し、3週間の治療成績をフォローしたデータでは、いずれの疾患においても、全般改善度合いに関して、エクラープラスター(当時はエクラーテープ)とフルドロキシコルチドテープとの間に有意差は認められなかった。とまとめています。
○蒼白化反応に関するデータ
ステロイド外用剤には血管を収縮する働きがあり、塗布部位が一時的に蒼白化します(青白くなります)。ステロイド外用剤の強さ(ストロンゲスト~ミディアムまでの5段階)は、血管収縮に伴う皮膚の蒼白化反応の度合いを指標として評価されています。
エクラープラスターとドレニゾンテープ(フルドロキシコルチドテープ)との血管収縮作用を調べたデータがエクラープラスターのインタビューフォームに記載されています。両薬剤を0.5時間、1時間、2時間、4時間貼付し、薬剤除去後の血管収縮作用を比較したデータです。2剤間に有意差は示されなかったものの、血管収縮に伴う皮膚蒼白化現象人数はエクラープラスター(当時はエクラーテープ)を貼付した人の方が多かったというデータが示されています。
エクラープラスターとドレニゾンテープを単純比較することは難しいですが、含有成分の力価だけから考えるのであればエクラープラスター>ドレニゾンテープとなります。あとは使用時間や皮膚表面状況、塗布部位などを考慮にいれて治療していくことになるかと思います。密封療法(ODT)であるストロングクラスのステロイド含有テープ剤はエクラープラスターのみですので、今後患者さんへエクラープラスターをお渡ししていく中で、その効き目を把握することができればと考えております。
★エクラーテープからエクラープラスターへの変更点について
「エクラーテープは薬成分に少量の水を含んでいましたが、エクラープラスターへの変更で水を含まない製剤へとかわりました。また皮膚への粘着度合いがテープからプラスターへかわることで増しました。薬の効きめに関しては誤差はありません」という回答をメーカーから得ました。