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睡眠薬と“いびき(鼾)をかく”ことには関係があるかどうか

睡眠薬と“いびき(鼾)をかく”ことには関係があるかどうか

 

睡眠薬を飲むと眠りが深くなると同時に筋肉の弛緩作用が生じます。舌の筋肉が弛緩すると、舌が喉の奥の方へ落ち込み(舌根沈下)、気道が閉塞することで無呼吸やいびきの原因となる可能性が示唆されていますが、睡眠薬の使用が舌根沈下やいびきの頻度の上昇にどの程度の要因として挙げられているかを調べてみました。

睡眠薬と”いびき”についての報告

 

報告1:平均年齢72歳の女性5万2504人を対象として睡眠薬の使用と“いびき”の関係を調べた報告によると、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を服用している人数は5690人(10.8%)おり、常習的な“いびき”の有病率が29.7%であったのに対して、睡眠剤を飲んでいない群(46814人)の“いびき有病率”は28.1%であり、この2群間における有意差が確認できなかったことから、睡眠薬の使用と“いびき”との間には関連性が見いだされなかった。

(2017年、米国)

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報告2:マイスリー服用者における“いびき”への影響を調査した結果、マイスリー10mgを服用した場合、1晩あたりにいびきに費やす時間は35分±14分であるのに対し、マイスリー10mgを服用しなかった群では、24分±14分というデータが報告されています。(有意差は示されておらず、筆者らはマイスリーによる“いびきをする時間”への影響はないとしています)

(1994年、Br J Clin Pharmac)

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報告3:いびきの一般的なリスク要因について報告したデータでは、男性2187人(年齢:40~64歳)におけるいびきの有病率を調査した結果、いびきの主因はタバコの喫煙であり、喫煙する本数が多いほど、いびきの罹患率が高いという結果となっています。喫煙による咳または痰の産生量といびきの有病率に関連がみられています。アルコールや睡眠薬を定期摂取している被験者において、いびきの有病率がわずかに増加したことが示されています。

(1998年、CHEST Jornal)

睡眠薬と“いびき”について調べた私の感想としましては、報告例が少なくて何とも言えないというのが正直なところです。1980年~1990年あたりでは「睡眠薬を使用するといびきが増えるかも」といった可能性を示唆した報告がありましたが、2000年以降は検索結果でヒットするものは無いように感じました。いびきの要因としては「喫煙」「高血圧」「肥満」「開口」などが多数報告されておりましたので、睡眠薬による影響は・・副次的という認識でいいように私は捉えました。

 

上向き(仰臥位)で熟睡している状態で口を開けた場合の舌根沈下率が89.7%というデータがあり、寝ること自体に筋弛緩作用(筋肉をリラックスする効果)がありますので、睡眠薬の使用有無にかかわらず、眠っている状態で閉口から開口するだけで舌が喉の奥の方へ垂れ下がるリスクがかなりUPすることは確認されています。

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そのため睡眠薬により筋肉が弛緩して舌の筋肉も“だらーん”と垂れ下がるので舌根沈下がおきて、いびきや睡眠時無呼吸症候群の要因となるという説明が真実かどうかはわかりません。(私個人的には、いびきに対して睡眠薬は主因ではなく副次的と捉えました)

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ただし、マイスリーと“いびき”に関する報告の中で睡眠薬を飲むと睡眠時間が延びるので“いびきをかいている人”においては、相対的にいびきをする時間も増えるというデータ結果が記載されております。睡眠時間全体に占める“いびきをする時間”は睡眠薬を飲んでいてもいなくても変わらないのですが、睡眠薬を使用すると睡眠時間が増えるため、それに付随して“いびきをする時間も増える”という説明に関しては、患者様へお伝えしてもいいお話かなぁと思いました。

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ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業