米FDAに2019年5月24日に、2歳未満の小児における脊髄運動性筋萎縮症(SMA)に対する遺伝子治療薬ゾルゲンスマが2億3200万円という最高額で米国での医薬品収載となったことが話題となりましたが、その動物実験データに関して、一部操作があったことが公開されました。
FDAが公開した情報によると、動物実験における製品テストデータにおけるごく一部分のデータについて操作が行われたということです。
ヒトにおける臨床試験のデータに関して、治療の有益性を評価するにあたり変更はないということです。(ヒトに関して、製品の有効性・安全性を示す全体的な証拠は有益です。)
製造開発を行っているノバルティスの声明としては「問題のデータは提出したデータ全体におけるごく一部であり、使用されていない古いデータに限定されている」としています。
ただ、2019年3月14日の時点(承認される前段階の時点)でノバルティスはデータ操作に気づいていたという証言もあることから、民事制裁金を含む民事・刑事的な責任が追及される可能性があるとFDAの代理人がツイートしています。
米国で2億3200万円もの薬価がついたゾルゲンスマの薬効について調べてみました。
脊髄性筋萎縮症とは運動神経(筋肉の収縮をコントロールする神経細胞)の遺伝子に突然変異が生じ、筋肉を上手に動かすことができない疾患です。
突然変異が生じている遺伝子を正しく修復すれば筋肉操作が改善します。ゾルゲンスマは注射剤なのですが、アデノウイルスというウイルスの遺伝子感染経由を利用します。突然変異が生じている遺伝子部分に正常な遺伝子をウイルスの力を借りて組み込み、継続的、持続的に正しいタンパク質を作ることができるように治療する薬です。
ゾルゲンスマを投与された小児は、投与されていない群と比較して治療一か月後の運動能力スコアで有意な改善が確認されており、FDAでは画期的治療薬に分類されている製剤です。