トラベ症候群(Dravet症候群)とは指定難病であり、薬物療法に強い抵抗性を示す難治性のてんかん症候群です。
1歳未満に発症し、けいれん発作をくりかえす疾患です。1歳をすぎると、発達遅延・運動失調が出現することが報告されています。
フェンテプラ内用液2.2mg/mlは他の抗てんかん薬では十分な効果が得られないトラベ症候群患者におけるてんかん発作に対する治療薬です。
他の抗てんかん薬との併用療法で使用します。
警告:心臓弁膜症および肺動脈性肺高血圧症を引き起こすおそれがある
禁忌:MAO阻害剤(エフピーOD,アジレクト錠、エクフィナ)
フェンテプラ内用液の薬理作用
セロトニン作用
・セロトニントランスポータに作用して、シナプス間隙からシナプス前終末へのセロトニンの取り込みを阻害する
・シナプス前終末において、シナプス小胞内のセロトニンの貯蔵を阻害する
・シナプス後細胞表面にあるセロトニン受容体(5HT受容体)に対して、アゴニストとして作用する。
上記3種類の作用により、抑制性のセロトニン神経伝達を促し、興奮状態の抑制に寄与します。
シグマ-1受容体への作用
・活性酸素の調整
・小胞体ストレスの抑制
・神経細胞内へのCa2+の流入抑制・過剰なCa2+の低減
FDAは2020年6月25日、2歳以上のトラベ症候群に伴う発作の治療薬として商品名Fintepla(fenfluramine)を承認しました。
トラベ症候群治療薬Fintepla
トラベ症候群とは1歳未満で最初のてんかん発作がおこり、その後も発作を繰り返す疾患です。2~4万人に1人の割合で発症する稀なてんかん症候群と考えられています。運動障害・発達障害・予期せぬ突然死などのリスクの増加などが特徴の小児期に発症する稀なてんかんです。
Fenfluramineは1種類以上の抗てんかん薬で発作を十分にコントロールできなかったトラベ症候群患者を対象に行われた7カ月間の臨床試験データ(平均年齢9歳:119例)を確認したところ、28日間あたりの発作回数の変化(中央値)は
Fenfluramine0.7mg/kg服用群:20.7→4.7回
Fenfluramine0.2mg/kg服用群:17.5→12.6回
プラセボ服用群:27.3→22回
上記のようにFenfluramine0.7mg/kg服用群はプラセボ群と比べててんかん発作を62.3%有意に減少したことが示されています。てんかん発作頻度の低下は3~4週間以内にみられ、治療期間を通じて、その効果は一定であることが報告されています。
主な副作用は食欲減退・傾眠・鎮静などが報告されています。
ここまでを見ると有益な薬のようにも思いますが、非常に重大な注意点があります。Fenfluramineは心臓弁膜症・肺高血圧症のリスクが高い医薬品であるため、使用する患者は治療前・治療中6か月ごと、治療後3~6カ月に1回の頻度で心エコーによるモニタリングを繰り返し受ける必要があります。
5-HT2B受容体アゴニスト活性を有するセロトニン作動薬としてのはたらきや、セロトニンの放出を促し、神経終末からの再取り込みを阻害する効果が報告されています。
(セロトニン症候群や血圧上昇にも注意が必要です)
以下は余談ですが、Fenfluramineは1973~1997年まで米国で肥満治療薬として使用されていた薬剤ですが、1997年9月15日に心臓弁膜障害を理由に医薬品としての使用が中止されました。Fenfluraminを服用するとセロトニンの放出が促進され、セロトニン量の増加により食欲抑制作用が生じて肥満治療が行われると考えられています。しかしセロトニンの過剰分泌は心臓弁膜障害である可能性が示唆されたため販売が中止されました。(その後の報告でFenfluramin+phentermineを使用すると心臓弁膜異常の割合が22.6%上昇することが報告されています)