おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

FDA承認

トラベ症候群治療薬「フェンテプラ内用液」が医薬品として国内承認

投稿日:2022年11月13日 更新日:

トラベ症候群治療薬「フェンテプラ内用液」が医薬品として国内承認

トラベ症候群(Dravet症候群)とは指定難病であり、薬物療法に強い抵抗性を示す難治性のてんかん症候群です。

1歳未満に発症し、けいれん発作をくりかえす疾患です。1歳をすぎると、発達遅延・運動失調が出現することが報告されています。

フェンテプラ内用液2.2mg/mlは他の抗てんかん薬では十分な効果が得られないトラベ症候群患者におけるてんかん発作に対する治療薬です。

他の抗てんかん薬との併用療法で使用します。

警告:心臓弁膜症および肺動脈性肺高血圧症を引き起こすおそれがある

禁忌:MAO阻害剤(エフピーOD,アジレクト錠、エクフィナ)

 

フェンテプラ内用液の薬理作用

セロトニン作用

・セロトニントランスポータに作用して、シナプス間隙からシナプス前終末へのセロトニンの取り込みを阻害する

・シナプス前終末において、シナプス小胞内のセロトニンの貯蔵を阻害する

・シナプス後細胞表面にあるセロトニン受容体(5HT受容体)に対して、アゴニストとして作用する。

上記3種類の作用により、抑制性のセロトニン神経伝達を促し、興奮状態の抑制に寄与します。

fenfluramine-2

fenfluramine-2

シグマ-1受容体への作用

・活性酸素の調整

・小胞体ストレスの抑制

・神経細胞内へのCa2+の流入抑制・過剰なCa2+の低減

 

 

トラベ症候群治療薬「fenfluramine」をFDAが承認

 

FDAは2020年6月25日、2歳以上のトラベ症候群に伴う発作の治療薬として商品名Fintepla(fenfluramine)を承認しました。

トラベ症候群治療薬Fintepla

トラベ症候群とは1歳未満で最初のてんかん発作がおこり、その後も発作を繰り返す疾患です。2~4万人に1人の割合で発症する稀なてんかん症候群と考えられています。運動障害・発達障害・予期せぬ突然死などのリスクの増加などが特徴の小児期に発症する稀なてんかんです。

fenfluramine

fenfluramine

Fenfluramineは1種類以上の抗てんかん薬で発作を十分にコントロールできなかったトラベ症候群患者を対象に行われた7カ月間の臨床試験データ(平均年齢9歳:119例)を確認したところ、28日間あたりの発作回数の変化(中央値)は

Fenfluramine0.7mg/kg服用群:20.7→4.7回

Fenfluramine0.2mg/kg服用群:17.5→12.6回

プラセボ服用群:27.3→22回

 

上記のようにFenfluramine0.7mg/kg服用群はプラセボ群と比べててんかん発作を62.3%有意に減少したことが示されています。てんかん発作頻度の低下は3~4週間以内にみられ、治療期間を通じて、その効果は一定であることが報告されています。

 

主な副作用は食欲減退・傾眠・鎮静などが報告されています。

 

ここまでを見ると有益な薬のようにも思いますが、非常に重大な注意点があります。Fenfluramineは心臓弁膜症・肺高血圧症のリスクが高い医薬品であるため、使用する患者は治療前・治療中6か月ごと、治療後3~6カ月に1回の頻度で心エコーによるモニタリングを繰り返し受ける必要があります。

 

Fenfluramineの薬理作用

5-HT2B受容体アゴニスト活性を有するセロトニン作動薬としてのはたらきや、セロトニンの放出を促し、神経終末からの再取り込みを阻害する効果が報告されています。

(セロトニン症候群や血圧上昇にも注意が必要です)

 

以下は余談ですが、Fenfluramineは1973~1997年まで米国で肥満治療薬として使用されていた薬剤ですが、1997年9月15日に心臓弁膜障害を理由に医薬品としての使用が中止されました。Fenfluraminを服用するとセロトニンの放出が促進され、セロトニン量の増加により食欲抑制作用が生じて肥満治療が行われると考えられています。しかしセロトニンの過剰分泌は心臓弁膜障害である可能性が示唆されたため販売が中止されました。(その後の報告でFenfluramin+phentermineを使用すると心臓弁膜異常の割合が22.6%上昇することが報告されています)

アルコールに強い人が糖尿病になりやすり理由(2021/6/14)

-FDA承認
-fenfluramine, fentepla, トラベ症候群

執筆者:ojiyaku


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

red-tab1

米国でリリカのジェネリック医薬品が承認される/日本国内でのリリカのジェネリック医薬品発売時期は?

米国でリリカのジェネリック医薬品が承認される/日本国内でのリリカのジェネリック医薬品発売時期は?   2019年7月22日、米国のFDAアメリカ食品医薬品局は、糖尿病性末しょう神経障害に伴う …

famciclovir1000mg

ファムビル錠250mgに“再発を繰り返す単純疱疹に1回1000mg”の用法追加となる

ファムビル錠250mgに“再発を繰り返す単純疱疹に1回1000mg”の用法追加となるか   2019年1月30日に開催される薬事・食品衛生審議会(薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会)において …

palforzia

ピーナッツアレルギーの小児によるフードチャレンジ報告(2022/1/30)

ピーナッツアレルギーの小児によるフードチャレンジ報告(2022/1/30) ピーナッツアレルギーを有する幼児は、ピーナッツが入っていない食品(ピーナッツフリー)をとることが標準的な対応策となります。 …

oral-semaglutide-1

リベルサス錠が発売開始(2021年2月5日)

リベルサス錠が発売開始(2021年2月5日) 2型糖尿病治療薬であり世界初の経口GLP-1受容体作動薬「リベルサス錠」が2021年2月5日発売開始となりました。 GLP-1受容体作動薬は、これまで注射 …

海外承認済み、国内では未承認の抗がん剤の薬剤費(2018年4月公開)

海外承認済み、国内では未承認の抗がん剤の薬剤費(2018年4月公開)

海外承認済み、国内では未承認の抗がん剤の薬剤費(2018年4月公開)   国立研究開発法人 国立がん研究センター先進医療・費用対効果評価室は「国内で薬事法上未承認・適応外となる医薬品・適応の …

  google adsense




2023年12月発売予定のGEリスト(エクセルファイル)

2023年12月発売予定のGEリスト(エクセルファイル)

2023年4月薬価改定 新旧薬価差比較データ(エクセルファイル)

2022年4月薬価改定。新旧薬価差比較データ(エクセルファイル)

おじさん薬剤師の働き方

how-to-work

薬剤師の育成について

how-to-bring-upo

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト

日医工・沢井・東和・日本ジェネリック・日本ケミファ・アメルの出荷調整リスト




how-to-work