おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

FDA承認 抗がん剤

リムパーザ錠が発売開始/海外では転移性乳がんでの治療を目的とした臨床試験データ開示

投稿日:2018年4月19日 更新日:

リムパーザ錠が発売開始/海外では転移性乳がんでの治療を目的とした臨床試験データ開示

 

2018年4月18日、リムパーザ錠100mg/150mgの発売が開始されました。

適応症:白金系抗悪性腫瘍剤感受性の再発卵巣がんにおける維持療法

薬価:

100mg1錠 3996.00円

150mg1錠 5932.50円

リムパーザ錠はDNAの修復に関わるタンパク質のはたらきを阻害することで腫瘍細胞の増殖を抑制するはたらきがあります(PARP阻害作用)。

日本国内では再発卵巣がんの維持療法という適応症で認可されましたが、米国では、それに加えて転移性乳がん治療薬としての適応症が承認され、欧州医薬品庁では治験が承認申請の段階まで進んでいます。

転移乳がん患者さんに対するリムパーザの臨床試験(OlympiAD試験)

lynparza-brca

lynparza-brca

BRCA遺伝子変異陽性・HRE2陰性転移乳がん患者さんに対するリムパーザ錠の臨床第Ⅲ相試験(OlympiAD試験)

 

OlympiAD試験はBRCA遺伝子変異陽性HER2陰性転移乳がん患者さんを対象としてリムパーザ錠1日2回1回300mg服用群(205例)と化学療法群(97例)を無作為に割り付けて有効性および安全性を比較した試験です。

 

結果

無増悪生存期間の中央値を確認してみると

リムパーザ群:7か月

化学療法群が4.2か月

有意差をもってリムパーザ群で無増悪生存期間が長くなっています。

 

奏効率

リムパーザ群:59.9%

化学療法群:28.8%

 

グレード3以上の有害事象発生率

リムパーザ群:36.6%

化学療法群:50.5%

 

毒性作用による治療中止率

リムパーザ群:4.9%

化学療法群:7.7%

米国がん研究会議におけるリムパーザ錠の評価について

という結果となっており筆者らはリムパーザ単独療法は化学療法に比べて無増悪生存期間の延長という大きな利点をもたらしたとまとめています。

(2017年8月)

また上記の結果をうけて米国がん研究会議(AACR)は転移乳がんのリムパーザと化学療法の比較試験において、副次評価項目の最終全生存期間の中央値には有意差はないものの

リムパーザ群:19.3か月

化学療法群:17.1か月

リムパーザ群の患者さんでは13%が治療を続けているのに対して、化学療法群では治療を継続している患者さんはいない

転移乳がん患者さんに対するリムパーザの臨床試験(OlympiAD試験)

という見解を発表しました。副次評価項目では有意差が得られなかったものの、主要評価項目にて無増悪期間の延長が確認されていることから、2018年1月に米国食品医薬品局(FDA)が転移性乳がんの適応症を承認しています。国内では2017年10月に同適応症について承認申請している段階です。

 

2018年4月18日、再発卵巣がんの適応で発売開始となったリムパーザ錠100mg/150mgですが、転移乳がんの適応拡大を視野にいれて売り上げが期待されるかもしれません。

米国がん研究会議におけるリムパーザ錠の評価について

 

-FDA承認, 抗がん剤
-FDA, OlympiAD試験, リムパーザ錠, 再発卵巣がん, 転移乳がん

執筆者:ojiyaku


comment

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

vitamine-D-anthicancer

血中ビタミンD濃度と癌の発症リスクに関する日本人を対象としたデータ

血中ビタミンD濃度と癌の発症リスクに関する日本人を対象としたデータ   日本人を対象として血液中のビタミンD濃度と癌の発症リスクに関するデータが公開されました。その結果、血中ビタミンD濃度と …

red-tab1

米国でリリカのジェネリック医薬品が承認される/日本国内でのリリカのジェネリック医薬品発売時期は?

米国でリリカのジェネリック医薬品が承認される/日本国内でのリリカのジェネリック医薬品発売時期は?   2019年7月22日、米国のFDAアメリカ食品医薬品局は、糖尿病性末しょう神経障害に伴う …

sippui

シクレスト舌下錠の有効成分を含む“貼り薬“を久光製薬がFDAへ申請

シクレスト舌下錠の有効成分を含む“貼り薬“を久光製薬がFDAへ申請   久光製薬は統合失調治療薬アセナピンマレイン酸塩の貼り薬タイプ(経皮吸収治療剤)を米国食品医薬品局(FDA)へ新薬承認申 …

kyuunyu

3成分配合COPD治療薬テリルジー100エリプタ

3成分配合COPD治療薬テリルジー100エリプタ   3成分配合COPD治療薬“テリルジー100エリプタ”(Trelegy)が2019年2月22日の薬事・食品衛生審議会医薬品第二部会にて承認 …

obesity-Pancreatic-cancer

肥満が膵臓と小腸の癌細胞の除去を抑制してしまうことを北海道大学の研究チームが報告

肥満が膵臓と小腸の癌細胞の除去を抑制してしまうことを北海道大学の研究チームが報告   北海道大学の研究チームが「肥満が上皮組織からがん細胞の除去を抑制する」ことをマウスをつかった実験で明らか …