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メトグルコにおける禁忌「腎機能障害」の見直しについて

メトグルコにおける禁忌”腎機能障害”の見直しについて

腎機能障害患者を対象とするメトグルコの使用制限が見直されました。2016年4月にFDA(米国食品医薬品局)が見直しを行い、同年10月に欧州医薬品庁が公表文献等を参考に、軽度から中等度の腎障害患者ではメトホルミンの使用は可能と結論づけました。

腎機能障害患者のうち推定糸球体ろ過量30ml/min/1.73㎡未満の患者に関してのみ禁忌とされました。

 

上記の欧米の状況を踏まえて、日本糖尿病学会の賛同を得て、メトグルコの添付文書における腎機能障害患者および乳酸アシドーシスに感留守注意喚起については以下の見解となりました。

2019

1:腎機能障害患者への投与については、リスク最小化(少量から投与開始、患者の状態に応じた用量調節、慎重な経過観察)を行ったうえで、禁忌は重度の腎機能障害患者(eGFR<30)のみとする。腎機能評価について欧米の添付文書、日本糖尿病学会のreccomedationでeGFRによる評価が推奨されることを踏まえ、これに基づく記載に変更kする。

2:eGFRに基づき腎機能障害患者にかかるメトホルミン塩酸塩のお1日最高用量の目安20172019

60≦eGFR<90:メトホルミンの1日最高用量2250mg

45≦eGFR<60:メトホルミンの1日最高用量1500mg

30≦eGFR<45:メトホルミンの1日最高用量750mg

 

3:腎機能障害以外のリスク因子として、経口摂取が困難な場合などの脱水リスクや、過度のアルコール摂取には特に注意が必要である旨を追加するとともに、その他、乳酸アシドーシスに関する注意を整理する。

 

4:低投与量製剤と高投与量製剤の乳酸アシドーシスに関する注意喚起の差異を是正する。

メトグルコにおける禁忌「腎機能障害」の見直しについて

metglco

以下、メトグルコとアルコールの関係についての内容です

メトルグコとアルコールの多飲について

肝機能や腎機能が正常である患者さんであれば、メトグルコを服用することによる乳酸アシドーシスの副作用は生じにくいと言われていますが、特定の条件がそろうと一過性の乳酸アシドーシスが生じるケースがあります。それが過度のアルコール摂取者です。今回は体内(特に肝臓)での乳酸とアルコールとの関係について調べてみたいと思います。

体内で産生された乳酸は、通常ピルビン酸を経てグルコースとなるか、クエン酸サイクルの基質となります。しかしメトグルコを服用している患者さんではピルビン酸からグルコースへの反応を阻害することで血糖降下作用を示します。体内で産生された乳酸は、その1/3が腎臓で、2/3が肝臓で代謝すると言われています。

ジャディアンス錠による腎機能悪化抑制データ

一方でアルコールはアセトアルデヒドを経て酢酸とアセチルCoAへと酸化され、代謝されます。これらの酸化過程においてNAD+が消費され、NADHが産生されます。このNAD+→NADHへの還元反応は乳酸→ピルビン酸への酸化反応やクエン酸サイクルにも関わっており、NADHの蓄積がこれら乳酸からピルビン酸への反応やクエン酸サイクルを抑制するように働きます。

メトホルミン内服中に多量飲酒により乳酸アシドーシスを発症した症例

体内で産生された乳酸について上記2つの条件を満たす患者さんについてまとめますと、乳酸→ピルビン酸→グルコースという経路はメトグルコを服用することにより絶たれます。

つぎに、アルコールを多量に摂取することで体内のNADHの蓄積が進み、乳酸からピルビン酸への酸化反応が抑制され、ミトコンドリアで行われるクエン酸サイクルの回転もNADHの増加により抑えられてしまいます。その結果、乳酸の行き場がなくなり血中の乳酸値が急激に上昇します。

メトグルコ服用と体重増減について

実際の症例は少ないですが、普段は1日焼酎2合ほどの飲酒をしているメトグルコ服用患者さんが年末の忘年会シーズンに4日間で焼酎2升(1日飲酒量換算:焼酎0.5升またはウイスキーダブル15杯またはビール大瓶15本または日本酒15合またはグラスワイン30杯:この量を4日連続)という飲酒量まで増量した結果、乳酸アシドーシスになり多呼吸、嘔吐、吐血の自覚症状で病院を受診し血液透析により乳酸を除去したという症例があります。

 

内科の門前の調剤薬局にて勤務していると高用量のメトグルコを服用している患者さんは多数います。同様のケースを未然に防ぐためにも、定期的な飲酒量の確認や忘年会シーズンの飲み過ぎには注意喚起を行う必要があると感じました。

 

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業