高用量でカロナール錠を定期服用した場合の血圧上昇について(2022/2/13)
カロナール錠(アセトアミノフェン)を定期服用し続けた場合の血圧への影響について記載された報告が2本ほどありましたので、以下に記します。
カロナール錠を痛み止めとして使用する場合、1回300~1000mgを4~6時間以上の間隔をあけて使用することが出来ます。1日最大量として4000mgを限度とされています。
報告1
103人の高血圧患者さんがカロナール(アセトアミノフェン)を1日4回1回1000mg(1日量4000mg)を2週間飲み続けた場合、血圧にどのような影響があるかを報告しています。対象として偽薬(プラセボ)を1日4回服用した103人の血圧データと比較します。
結果
アセトアミノフェンを飲んだ群
平均収縮期血圧:132.8±10.5→136.5±10.1mmHg
平均拡張期血圧:81.2±8.0→82.1±7.8mmHg
プラセボ群
平均収縮期血圧:133.9±10.3→132.5±9.9mmHg
平均拡張期血圧:81.7±7.9→80.9±7.8mmHg
結論としては、カロナール(アセトアミノフェン)を1日4g(1日4回、1回1g)を毎日定期服用すると、高血圧患者さんの収縮期血圧はプラセボと比較して5mmHgほど上昇することが報告された。これによる心血管リスクが症状することも示唆されるためアセトアミノフェンの高用量定期服用による安全性に疑問を呈する結果となった。
報告2
冠動脈疾患を患っている33人の患者さんに対して、カロナール(アセトアミノフェン)を1日3回1回1000mg(1日量3000mg)またはプラセボ(偽薬)を2週間投与した期間における血圧変動を調査したデータです。
アセトアミノフェンを飲んだ群
平均収縮期血圧:122±12→125±12mmHg
平均拡張期血圧:73±7→75±8mmHg
カロナール(アセトアミノフェン)の定期服用と収縮期血圧のわずかな上昇(2~4mmHg)には、特に強いエビデンスがあり、用量依存性が認められる副作用であると筆者らは述べています。(有意差あり)
カロナール(アセトアミノフェン)の定期服用が用量依存的に血圧をわずかに上昇させる
カロナール500mg(アセトアミノフェン)の鎮痛作用について他剤との比較データ
整形の門前薬局で勤務することがあるのですが、数年前までであれば
ロキソニン60mg錠 3T/3×N
といった処方を良く目にしていました。しかし最近は頓服薬としてロキソニン60mgを目にすることはありますが、ロキソニン60mg錠に変わって
カロナール(アセトアミノフェン)500mg 3T/3×
という処方を良く目にするようになりました。
2014年12月にカロナール500mgが発売開始となってから1年ほどが経過しますが、整形外科周辺の薬局ではカロナール500mg錠を取り扱う頻度が増えているのではないでしょうか。
カロナール(アセトアミノフェン)は中枢性の解熱鎮痛作用です。解熱作用については体温調節中枢に作用して皮膚血管を拡張し、解熱を促す作用が考えられています。また鎮痛作用に関しては視床と大脳皮質に作用して痛覚閾値を上昇させ鎮痛作用を示すという示唆や、また脊髄にてN-アシルフェノールアミンを合成し強力な鎮痛作用を示すという報告はあるものの具体的な作用機序の解明には至っていません。末梢におけるプロスタグランジン合成阻害作用はNSAIDSに比べて極めて弱いため抗炎症作用はないものと考えられています。
これらのことからカロナール(アセトアミノフェン)の中枢における解熱剤としての評価は、ある程度確率されているものと私は感じています。一方で末梢における抗炎症作用が期待できない状況下で腰痛や歯痛、関節痛などの疾患にカロナールを服用する際、どの程度の鎮痛作用を感じることができるのかを把握する必要があると感じました。そこでカロナールの用量とNSAIDSとの比較について調べてみました。
~歯科領域での鎮痛作用~
○抜歯後の疼痛
ロキソニン60mg錠による有効率88.2%
カロナール500mg錠による有効率:87%
○下顎埋伏智歯抜歯術後の疼痛
カロナール1回1000mgの鎮痛効果はロキソニン60mgに匹敵するかそれ以上の鎮痛効果あり。カロナール1回500mgでは臨床的欲求を満たすに足りる量ではあるが、ロキソニン60mgにはやや劣る。
○抜歯後疼痛および歯痛
カロナール1回400mgを服用すると87.5%で有効。4時間以上効果が続いた割合71%
~頭痛を有する気管支ぜんそく患者への鎮痛作用~
カロナール1回500mg 1日3回を上限とした頓服用法
著効:70%、有効5%、やや有効20%、無効5%
~腰痛症に対する鎮痛作用~
カロナール1日1800mg(900~2700mg)の服用で大幅に改善したという報告あり
~膝の変形性関節症に対する鎮痛作用~
カロナール1日4000mg
イブプロフェン鎮痛用量1日1200mg、抗炎症用量1日2400mg
との比較において改善効果に有意差なし。
カロナールはイブプロフェンと同程度の効果を有している。
~膝の変形性関節症に対する鎮痛作用~
カロナール1回650mg、1日2600mg
ナプロキセン1回375mg 1日750mg
との比較において鎮痛効果に有意差なし。
カロナールはナプロキセンと同程度の鎮痛効果を有している。
まとめ
鎮痛度合いによりカロナール錠の服用量を増減することによりロキソニンなどのNSAIDSと同程度の鎮痛作用を有していることを確認しました。鎮痛部位ごとのカロナール有効量をリストアップできれば、薬局でお薬をお渡しする際に有用かと感じました。