エイベリス点眼液とキサラタン点眼液の違いについて
2018年12月追記
エイベリス点眼液とタプロス点眼液が併用禁忌
エイベリス点眼液の併用禁忌薬に”タプロス点眼液、タプコム配合点眼液”が追加されました。
エイベリス点眼液とタフルプロスト点眼液(タプロス・タプコム)を併用すると、中等度以上の羞明、虹彩炎等の眼炎症が高頻度に認められるためです。
(原因・機序不明)
緑内障治療薬ルミガン・キサラタン・トラバタンズ・タプロス点眼の比較データ
さらに、エイベリス点眼液の併用注意薬に”チモロールマレイン酸塩(β受容体遮断薬)を含む点眼液”が追加されました。
チモロールマレイン酸塩との併用例で結膜充血等の眼炎症性副作用の発現頻度の上昇が認められたためです。
尚、他の薬剤との併用経験はないと添付文書に記されていますので、緑内障治療でエイベリス点眼液と併用する薬剤についてはも眼炎症の可能性について念頭にいれてもいいかもしれません。
チモロールマレイン酸塩を含む点眼液を下記します。
・アゾルガ配合懸濁性点眼液
・コソプト配合点眼液
・ザラカム配合点眼液
・タプコム配合点眼液
・チモプトールXE点眼液
・チモプトール点眼液
・チモロール点眼液
・デュオトラバ配合点眼液
・ドルモロール配合点眼液
・ラタチモ配合点眼液
・リズモンTG点眼液
コンタクトレンズをした状態でムコスタ点眼液をした時の効果について
参天製薬が2018年9月21日に製造承認を取得した緑内障・高眼圧症の治療薬“エイベリス点眼液”のはたらきと既存のプロスタグランジン製剤“キサラタン点眼液”との違いについて調べてみました。
エイベリス点眼液のはたらきについて
生体内でつくられる生理活性物質の一つにプロスタグランジンと呼ばれる生理活性脂質があります。プロスタグランジンは細胞膜受容体に存在するプロスタノイド受容体と呼ばれる部分に作用することで様々な効果を示すことがわかっています。プロスタノイド受容体はこれまでにFP1、EP1、EP2、EP3、EP4、DP1、DP2、IP、TPなどの受容体が同定されています。
エイベリス点眼液はプロスタノイド受容体のうちの一つ“EP2受容体”に対してのみ高い親和性を有する作用薬です。エイベリス点眼液がEP2受容体に作用すると、線維柱帯流出路およびブドウ膜胸膜流出路の双方から房水を流出させることで眼圧を下げる効果が確認されています。
エイベリス点眼液を使用して2時間後から眼圧が下がり始め、効果は24時間継続します。エイベリス点眼液は房水の産生量には影響を与えずに、線維柱帯流出路およびブドウ膜強膜流出路からの流出量を増やすはたらきが確認されております。
緑内障治療薬ルミガン・キサラタン・トラバタンズ・タプロス点眼の比較データ
キサラタン点眼液などのプロスタグランジンF2α(PGF2α)誘導体のはたらきについて
キサラタン点眼液は上記のプロスタノイド受容体の一つFP受容体に作用します。それによりブドウ膜強膜流出路からの房水流出量をUPさせることで眼圧を下げる効果が確認されています。キサラタン点眼液の厳密な薬理作用は不明な点があるのですが、仮説として言われている作用としては、細胞外マトリクスのタンパク分解酵素の産生が促進され、ぶどう膜強膜間隙のコラーゲンが分解されて流出路が広がるという説や、ヒト毛様体平滑筋にキサラタンが作用することで毛様体筋が弛緩して、細胞間隙が広がり、流出路が広がるという説などが示唆されています。
キサラタン点眼液は点眼後3〜4時間後に眼圧が下がり始め、8〜12時間語に最も効果が得られます。その作用は24時間持続するため1日1回の点眼という用法となっております。
エイベリス点眼液 VS キサラタン点眼液
第Ⅱ/Ⅲ相試験として原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者189名を対象として1日1回エイベリス点眼液または1日1回キサラタン点眼液を4週間使用したときの眼圧降下作用を確認したデータでは
4週間の眼圧変化量
キサラタン点眼液使用群(95名)
23.4mmHg → 16.96mmHg (変化量:−6.45)
エイベリス点眼液
23.78mmHg → 17.81mmHg(変化量:−5.96)
比較試験の結果、エイベリス点眼液はキサラタン点眼液に対する非劣性(劣っていない)ことが示されました。治験段階における眼圧降下平均値はキサラタンの方が下がっているように見えますが、統計的には遜色ないデータということです。
ドライアイ症状に対するジクアス・ヒアレイン・ムコスタ点眼の比較
キサラタン点眼液治療に抵抗性を示した患者に対するエイベリスト点眼液の効果
キサラタン点眼液を8週間点眼した結果、キサラタン点眼液治療に抵抗性を示した患者さん(26名)に対してエイベリス点眼液を1日1回(21時)に4週間使用した結果“日中眼圧変化量:−2.99mmHg”という結果となり、眼圧降下作用が示されました。キサラタン点眼液は1方向の流水路に作用するのに対して、エイベリス点眼液は2方向の流水路へ作用しますので、キサラタンが効きにくい患者さんに対してもエイベリス点眼液は効果を発揮することがわかります。
ただし、原発開放隅角緑内障または高眼圧症患者に対するエイベリス点眼液の効果が“-5.96mmHg”であるのに対して、キサラタン抵抗性のある患者に対してのエイベリス点眼液の効果では“-2.99mmHg”と値が下がっています。このことからブドウ膜強膜流出路からの流水量が下がっていることが示唆されます。
緑内障治療薬ルミガン・キサラタン・トラバタンズ・タプロス点眼の比較データ
有害事象(承認時の副作用比較)
エイベリス点眼液
国内臨床試験における副作用発現状況を確認してみると、結膜充血の副作用が10%以上の発現頻度で報告されています。キサラタン点眼液の臨床試験でも同程度の副作用発現頻度が報告されておりましたので、私としては同等と捉えております。
エイベリス点眼液に特有な副作用としては黄斑浮腫、角膜肥厚といった副作用の発現頻度が高いように感じます。
キサラタン点眼液の副作用といえば目の周りの皮膚や虹彩が徐々に黒くなる“色素沈着”といった副作用がありますが、エイベリス点眼液の国内臨床試験時における副作用には色素沈着関連の報告はありません。まつげが長くなるといった副作用の報告例もありません。