パルモディア錠の薬価収載が10か月遅れた理由を考察
パルモディア錠が2018年5月22日に薬価収載されることが厚生労働省の中央社会保険医療協議会により公開されました。パルモディア錠は高脂血症治療剤(中性脂肪を下げる薬)としての働きがあり、医薬品としては2017年7月に認可を得ていましたが、その後の厚生労働省側と製薬企業側との薬価交渉がうまくいかず10か月間も遅れて薬価収載されました。
パルモディア錠0.1mg:33.9円という薬価について
パルモディア錠0.1mgの薬価は1錠あたり33.9円です。1日2回、1回1~2錠を飲む薬です。金額で考えますと1日当たり67.8~135.6円の売り上げ見込まれる薬となります。既存で使用されている同類薬である「リピディル80mg(33.9円)」、「トライコア80mg(33.7円)」、「後発医薬品(19.5円)」ですので、この薬価を基準としてパルモディア錠の薬価が決められました。パルモディア錠0.1mgと既存で使用されているリピディル・トライコアの効能が同程度であれば、パルモディア錠33.9円という薬価は妥当と考えられます。以下にパルモディア錠とリピディル錠の効能効果のおおまかな比較データを記します。
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パルモディア錠0.1mgは国産の医薬品であり、臨床試験も日本人を対象に行われておりました。大まかな臨床データを確認してみると、リピディル80mgやトライコア80mgを1日1回使用した時の、中性脂肪の変化率が‐30%前後であるのに対して、パルモディア錠0.1mgを1日2回使用すると、中性脂肪の変化率は‐42%まで低下することが示されています。さらにリピディル錠は既存の抗コレステロール薬との併用が原則禁忌であるのに対し、パルモディア錠は既存の抗コレステロール薬(リピトールやリバロ、クレストールなど)との一緒に飲んでもよいとされています(腎機能に異常がみられる場合を除く)。
加えて、パルモディア錠の臨床試験フェーズ2におけるデータではありますが、パルモディア錠0.1mgの副作用発現頻度は2.7~5.4%、リピディル錠の副作用発現頻度は10.8%となっておりました。
以上のことからパルモディア錠を販売する興和株式会社はパルモディア錠0.1mgの有用性として
・中性脂肪の変化率が既存の薬より10%良く効く
・HMG還元酵素阻害剤(既存の抗コレステロール薬)と一緒に飲むことができる
・副作用の発現頻度が低い
というメリットがあるにも関わらず、薬価が既存の薬と同額であることに納得がいかないため薬価交渉に時間を要した可能性が示唆されます。
厚生労働省の総会での話し合いにおいてパルモディア錠の薬価収載までに10か月の時間を要した設営として「企業が希望する薬価と、厚生労働省側が算定している薬価の交渉に継続して取り組んできたため」と薬価が決まらなかった理由を説明しています。
ただ、高脂血症治療薬は直ちに命に関わる製剤でないとはいえ、製薬企業が価格が妥当ではないからということを理由に薬価収載を遅らせるということが適切な姿勢かどうかについては疑問が呈されたかたちとなりました。
リピディル/トライコアの市場に関してはリピディル/トライコア80mgの年間合計使用量が1億7000万錠以上、リピディル/トライコア53.3mgの年間合計使用量は5000万錠以上であることがNDBデータで確認できます。さらにこの市場は2017年12月に発売されたフェノフィブラート「武田テバ」が50%に迫る勢いで変更調剤された結果、フェノフィブラート「武田」が欠品(2018年7月ころに再開供給見込み)という状態となっています。この市場にパルモディア錠がどこまで参入していくか2018年5月22日の薬価収載が興味深いところです。
追記
パルモディア錠0.1mgの発売日が2018年6月1日と決まりました。