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感染性腸炎治療薬ダフクリア錠(フィダキソマイシン)200mgについて

投稿日:2018年5月10日 更新日:

感染性腸炎治療薬ダフクリア錠(フィダキソマイシン)200mgについて

 

2018年5月23日、厚生労働省の薬事・食品衛生審議会 医薬品第二部会において感染性腸炎治療薬「ダフクリア錠(フィダキソマイシン)200mg」について医薬品の承認可否が審議されます。今回はダフクリア錠の抗菌作用と臨床データについてまとめてみました。

ダフクリア錠(フィダキソマイシン)の特徴について

 

ダフクリア錠は服用後、腸管内において狭域抗菌作用を示す抗菌剤です。「狭域」とはターゲットとする細菌を絞って選択的に殺菌作用を示すというニュアンスです。ヒトの腸内には非常に多くの種類の細菌が繁殖して腸内環境を保っています。ダフクリア錠は、その中で感染性腸炎を引き起こすクロストリジウム属(クロストリジア)に対して強い殺菌作用を示す抗菌剤です。(最小発育阻止濃度:0.03~0.25㎍/ml)

2018年5月23日ダフクリア錠200mgの医薬品承認可否を審議

fidaxomicine

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ダフクリア錠はクロストリジウム属のようなグラム陽性菌に対して高い抗菌作用を示す一方で、ヒトの腸内細菌叢の50%を占めるバクテロイデスや15%を占めるビフィズス菌はどちらもグラム陰性菌という種類に属するため、ダフクリア錠による抗菌作用を受けないという特徴があります。

 

また、ダフクリア錠の分子量は1058g/molと大きなサイズであるため、腸管のから吸収されにくく、ダフクリア錠を飲んでもごく一部しか吸収されません(吸収量はAUC:14ng・hr/ml程度しかありません)。経口投与したダフクリア錠は吸収されずに、そのまま消化管内で殺菌作用を示し、その92%は大便中に排泄されます。同じように分子量が大きな殺菌剤として経口バンコマイシン(分子量1449g/mol)があります。経口バンコマイシンもダフクリア錠と同様に、腸管内の殺菌薬として用いられます。

クロストリジウム・ディフィシル菌に感染した患者さんに対してダフクリア錠を200mg1日2回10日間服用した群とバンコマイシン125mgを1日4回10日間服用した群を比較したデータではダフクリア錠の治癒率が88.2~92.1%、バンコマイシン群の治癒率が85.2~89.8%という結果となり、どちらの薬も良く効くことが示されました。また再発患者数はダフクリア錠服用群で13.3~15.4%、バンコマイシン服用群で24~25.3%という結果となり、ダフクリア服用群の方で、有意に再発率が低いという結果となっています。

(データは解析方法により幅をもって示されており、その幅を“~”を使用して表示しました)

 

ダフクリア錠は米国FDAでは2011年5月に承認されております。

 

クロストリジウム・ディフィシル感染症は既存の広域抗生物質(内服・点滴)を投与した後に、腸内細菌叢の乱れが原因で生じることがあります。広域抗生剤の使用増加に伴いクロストリジウム・ディフィシル感染の発生率および重症度も増加傾向にあり、北米および欧州では毒性の強いディフィシル菌の発生も確認されています。狭域抗菌剤であるダフクリア錠は感染性腸炎治療薬として非常に期待される製剤に感じます。

整腸剤の効果・使用方法・違いについて(ビオフェルミン・乳酸菌・糖化菌・酪酸菌)

クロストリジウム・ディフィシル感染症対策(厚生労働省:2017年9月)

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-クロストリジウム・ディフィシル感染, ダフクリア, フィダキソマイシン, 感染性腸炎

執筆者:ojiyaku


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