日本人を対象としたDPP4阻害薬に関する興味深い報告がありました。報告によると動物性脂肪(飽和脂肪酸や一価不飽和脂肪酸)の摂取量が多い人はDPP4阻害薬の効果が減弱するというものです(HbA1cが下がりにくいという報告です)
2006年9月から2017年6月までの約11年間においてDPP4阻害薬を単剤で1年間処方変更なく継続服用した2型糖尿病患者さんをピックアップして、 HbA1cの変動状況と食生活についての関係を報告しています。
結果、DPP4阻害薬の服用を開始して半年から1年において、HbA1cが上昇していた群は体重も増加しており、さらに食生活調査の結果、飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸の摂取量が有意に高いことが示されました。
炭水化物及びタンパク質の摂取量に関してはHbA1c維持群・上昇群ともに群間差は見られませんでした。
飽和脂肪酸(動物性脂肪)の取りすぎはDPP4阻害薬の作用を減弱する
この結果から、DPP4阻害剤単独療法におけるHbA1c低下効果において、過剰の飽和脂肪酸摂取は薬の効果を減弱させる可能性があると筆者らはまとめています。
飽和脂肪酸・一価不飽和脂肪酸とは動物性脂肪に多く含まれている脂肪酸のことで、代表的な食品としては
バター・生クリーム・ラード・鶏皮・牛サーロイン・チーズ・ベーコンなど
年末年始の暴飲暴食によるメトグルコとアルコールの危険性について
加工食品として動物性脂肪が多い食品としては
カップ麺(インスタントラーメン)・ウインナー・チョコレート・ピーナッツバターなど
動物性脂肪の覚え方としては“常温・室温で固まっている油“です。常温で固まっている油を多く含む食品の取りすぎはDPP4阻害剤による糖尿病治療の妨げとなる可能性が報告されましたので、今後DPP4阻害剤を初めて服用する患者様には上記のような国内報告が上がっていることをお伝えしてもいいのかもしれません。
そもそもDPP4阻害剤は、その働きの一つに消化管の運動を遅らせて、食欲を抑える効果が備わっている薬だと認識しております。この働きを持つDPP4阻害剤を1年間服用してからも、体重増加が続くという患者様がいらっしゃった場合、これまでは「食べ過ぎ!」という認識でとどまってしまっておりました。
しかし、今回の報告を受けて
「もしかしたら動物性脂肪の取りすぎかも・・」
と、より具体的な食品までお伝え出来るかもしれません。
調剤薬局で出来ることには限りがありますが、今回のような報告は調剤薬局においてお薬をお渡しした後の「プラス一言」としても活用出来るかもしれません。