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アトピー性皮膚炎に対するtapinarofクリームの有効性について
グラクソスミスクラインは、アトピー性皮膚炎に対するtapinarofクリームの有効性についての第Ⅱ相臨床試験データを公開しました。
被験者:思春期および成人のアトピー性皮膚炎患者(約270人:米国・カナダ・日本)
約30人の日本人が被験者に含まれています。
被験者のアトピー性皮膚炎の程度
体表面積の5~35%において、IGAスコアが3以上(中等度~重度)
IGAスコアとは、アトピー性皮膚炎の医師による全般的評価を表します。IGAスコア0=アトピー消失を意味します。
tapinarofクリームを12週間使用した後の治療成績としては、IGAスコアが0または1まで軽減した、またはIGAスコアが2段階以上改善した患者を治療成功と評価しています。
アトピー性皮膚炎に対するtapinarofクリームの有効性について
Tapinarofクリームの効果について
tapinarofクリーム1%を1日2回使用した群の治療成績:53%
tapinarofクリーム1%を1日1回使用した群の治療成績:46%
tapinarofクリーム0.5%を1日2回使用した群の治療成績:37%
tapinarofクリーム0.5%を1日1回使用した群の治療成績:34%
プラセボクリームを1日2回使用した群の治療成績:24%
プラセボクリームを1日1回使用した群の治療成績:24%
グラクソスミスの評価
tapinarofクリーム1%使用群は開始1週間目で効果が確認され、8~12週目で最大治療効果が確認された。taipnarofクリームを使用して効果が感じられた被験者の70%が、tapinarofクリームの使用を中止した後も改善が維持されました。
副次評価項目としてはEASIスコア(EASI-75)に関して、75%改善を達成した群を確認すると
tapinarofクリーム1%を1日2回使用した群:60%
tapinarofクリーム1%を1日1回使用した群:51%
プラセボ群:26%
有害事象
tapinarofクリームを使用した群の4%、プラセボ群の7%が有害事象により治験を中止しています。
tapinarofクリーム使用群で最も多く確認された有害事象は「毛嚢炎」および「接触皮膚炎」であったことから、第Ⅲ相試験では接触皮膚炎のパッチテストが組み込まれることになります。
tapinarofクリームの薬理作用とは
tapinarofクリームの具体的な薬理作用が示されたデータは少ないのですが、皮膚のターゲットとなる部分は“芳香族炭化水素受容体(AhR)”です。Tapinarofが芳香族炭化水素受容体に対して作用薬として記されている報告が多いのですが、一部では“遮断薬(アンタゴニスト)”と記されているデータもありました。私としては以下“マウスに対するtapinarofの効果”が一番詳しく書かれているのではないかと感じており“作用薬”と解釈しました。
Tapinarofは細菌によって産生されるポリフェノール構造を持つ製剤であり、アトピー性皮膚炎および乾癬の治療にむけて治験が行われている天然由来の医薬品です。
Tapinarofは芳香族炭化水素受容体を活性化する作用に加えて、Nrf2経路活性に由来する抗酸化ストレス応答系の制御に関する有効性が期待されている製剤です。
Tapinarof治療後のヒト末梢血管T細胞およびsRICA培養においてIL-17Aの発現レベルが減少することが見いだされており、前炎症性メディエータを阻害することで皮膚バリア機能の増強に寄与する薬理作用が示唆されています。
IL17Aは乾癬治療においても重要な役割を果たすことが示唆されているためtapinarofの第Ⅲ相試験ではアトピー性皮膚炎および乾癬に関する報告が期待されるところです。