おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

抗コレステロール薬

ベンペド酸によるLDLコレステロール低下作用(スタチン療法への上乗せ効果)

投稿日:2019年3月21日 更新日:

ベンペド酸によるLDLコレステロール低下作用(スタチン療法への上乗せ効果)

 

ベンペド酸によるLDLコレステロール低下作用に関する報告が2019年3月14日付のThe New England Journal of Medicineに掲載されました。被験者は既存でスタチンの最大容量を服用しており、それに上乗せしてベンペド酸を追加したときにコレステロールの低下作用が確認されたとまとめられております(第三相試験)。以下に今回の報告内容の概要とベンペド酸の薬理作用、第Ⅰ相試験、第Ⅱ相試験に関する情報をまとめました。

ベンペド酸によるLDLコレステロール低下作用(第三相試験の概要)

 

被験者

アテローム性動脈硬化・家族性コレステロール血症(ヘテロ)またはその両方をもつ患者2230名。被験者は既存で最大耐用量のスタチン療法を受けており、それに上乗せする形でベンペド酸を服用した場合の有効性・安全性について調査が行われました。(52週中12週目のLDLコレステロールレベルに関する報告です)

ベンペド酸によるLDLコレステロール低下作用(第三相試験)

結果

被験者2230名中、1488名がベンペド酸を服用し、742名はプラセボ(偽薬)を服用するよう割り当てられました。

bempedoic-acid

bempedoic-acid

ベンペド酸服用群のLDLコレステロール値の平均変化(服用から12週目時点)

103.2mg/dl→84mg/dl(19.2mg減少を確認、ベースラインからの変化は-16.5%、対プラセボとの変化率:-18.1%)

最大耐用量のスタチン療法に追加してベンペド酸を服用することは、LDLコレステロール値を有意に減少させる結果となりました。

パルモディア錠(ペマフィブラート)とリピディルとの比較データ

有害事象

ベンペド酸服用群:1167人/1487人(78.5%)

プラセボ服用群:584人/742人(78.7%)

 

重篤な有害事象

ベンペド酸服用群:216人/1487人(14.5%)

プラセボ服用群:104人/742人(14.0%)

両群間での有害事象の発生率に有意差はありませんでした。

 

投与中止に至る有害事象発生率

ベンペド酸服用群:162人/1487人(10.9%)

プラセボ服用群:53人/742人(7.1%)

 

痛風発生率

ベンペド酸服用群:18人/1487人(1.2%)

プラセボ服用群:2人/742人(0.3%)

ベンペド酸がLDLコレステロール低下させる薬理作用

 

ベンペド酸はATPクエン酸リアーゼ(ACL)のはたらきを阻害することでLDLコレステロールの合成を抑えるはたらきがあります。

 

ATPクエン酸リアーゼは肝臓や白色脂肪組織などの脂質を合成する組織に多く発現している酵素です。ヒトのコレステロール生合成経路は以下の図のようにクエン酸とATPとCoAからアセチルCoAを生成することが起点となるわけですが、ATPクエン酸リアーゼは、この合成段階を阻害することで、LDLコレステロールの合成を抑制する働きがあります。

bempedoic-acid

bempedoic-acid

スタチン系の薬はHMG-CoA還元酵素を阻害する働きでコレステロールの合成を抑制する働きですので、ベンペド酸はその経路の上流段階を阻害する働きであることがわかります。

スタチンとフィブラートの併用が可能になる(2018年10月16日)

ベンペド酸の特徴

 

内服薬です。

1日1回の服用で半減期は15~24時間

内服後は小腸から吸収されるのですが、ベンペド酸は分子量が小さい製剤であり、肝臓に取り込まれる際の肝臓表面の受容体(入口)はスタチン系のトランスポーター(入口)とは異なります。そのため、スタチン系の薬と競合して肝臓に取り込まれることはありません。

(肝臓へ取り込まれる際にスタチン系の薬とベンペド酸が互いの働きを阻害することはありません)

 

ベンペド酸はプロドラッグであり、肝臓にあるアシルCoAシンテターゼによって活性をうけてから肝臓におけるコレステロールの合成を抑制します。理論的には肝臓で活性化されて効果を発揮する薬ですので、スタチン系のような筋肉痛関連の副作用は生じにくいのではないかと示唆している記述がみられました。

 

ベンペド酸による第Ⅰ相試験

健康な被験者24人に2週間ベンペド酸を投与したデータによると、1日140mg、180mg、220mgを被験者に投与したところ、プラセボ群(偽薬服用群)のLDLコレステロール値が4%上昇したのに対して、ベンペド酸220mg服用群でLDLコレステロール値の36%減少が確認されています。重大な有害事象は確認されておりません

 

ベンペド酸第Ⅱ相試験

ベンペド酸を1日1回80mgを2週間服用後、次の2週間は1日1回120mgへ増量した結果、4週間後のLDL-コレステロール値のが平均で43%減少した(プラセボは4%)

スタチン不耐性患者におけるゼチーアとベンペド酸との比較および併用効果

 

スタチンが効かない“スタチン不耐性患者さん”に対してゼチーアとベンペド酸を比較または併用したときのデータとしては12週間のデータによると、ゼチーア単独服用群と比較してベンペド酸単独服用群ではLDL-C値の減少率が最大で30%有意に高いデータが観察されております。さらにベンペド酸服用群におけるLDL-C減少は服用開始から2週間以内に効き目があらわれています。

 

スタチン不耐性患者さんにおいて、ベンペド酸治療における筋肉関連の有害事象に関しては、ゼチーア服用群と比較して増加は確認されておりません。

 

ベンペド酸とゼチーアを併用した群では最大で48%のLDL-C低下作用が確認されました。2剤組み合わせによる安全性・認容性は高いことが示唆されています。

 

高用量スタチンについて

 

スタチン系の医薬品はLDL-Cの低下作用によって冠状動脈疾患・心血管疾患のリスクを軽減することが知られていますが、有効性の高いスタチン系製剤は、筋肉関連の副作用(横紋筋融解症な)が知られているため、最大用量で処方することが懸念されるという背景もある薬です。ベンペド酸は現在第三相試験が行われている製剤ですが、スタチン系と比較して、“筋肉関連の副作用が少ない”という現在の報告が維持されるのであれば、臨床上非常に有用な薬剤となる可能性を秘めています。

ベンペド酸によるコレステロール低下作用の報告(第Ⅰ相試験、第Ⅱ相試験を含む)

 

-抗コレステロール薬
-LDL, コレステロール, スタチン, ゼチーア, ベンペド酸

執筆者:ojiyaku


  1. […] ベンペド酸によるLDLコレステロール低下作用(スタチン療法への上乗せ効果) […]

comment

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください

関連記事

cholesterol-yakureki

コレステロールを下げるお薬がDo処方で続く患者様への薬歴

目次 コレステロールを下げるお薬がDo処方で続く患者様への薬歴抗コレステロール薬の主な副作用抗コレステロール薬の投薬時の副作用確認・薬歴内容 コレステロールを下げるお薬がDo処方で続く患者様への薬歴 …

epadel-OTC

エパデールTの適正販売に関する通知/エパデールTを販売するためには定期的な採血結果を確認すること

目次 エパデールTの適正販売に関する通知/エパデールTを販売するためには定期的な採血結果を確認することおもな販売要件薬局での対応 エパデールTの適正販売に関する通知/エパデールTを販売するためには定期 …

PARMODIA-10-months-reason

パルモディア錠の薬価収載が10か月遅れた理由を考察

目次 パルモディア錠の薬価収載が10か月遅れた理由を考察パルモディア錠0.1mg:33.9円という薬価について パルモディア錠の薬価収載が10か月遅れた理由を考察   パルモディア錠が201 …

differece-between-parmodia-and-lipidil

パルモディア錠(ペマフィブラート)とリピディルとの比較データ

パルモディア錠(ペマフィブラート)とリピディルとの比較データ 高脂血症治療薬“パルモディア錠(ペマフィブラート”が2017年6月9日に厚生労働省で開催される薬事・食品衛生審議会医薬品第一部会において新 …

Fenofibrate-Shipment-adjustment

フェノフィブラート錠「武田テバ」の出荷調整(2018年3月付)

フェノフィブラート錠「武田テバ」の出荷調整   武田テバファーマ株式会社はフェノフィブラート錠「武田テバ」の出荷調整を発表しました。 リピディル・トライコアのジェネリック医薬品として2017 …