クロピドグレルとワーファリンの違いはなんですか?(自分まとめ)
調剤薬局で働いていると、ふと「○○について詳しくしらべてみよう」と思うことが、たまーーにあります。
今回は「自分まとめシリーズ」から「血液サラサラの違い」について自分の言葉を作ってみました。
抗凝固薬や抗血小板薬のどちらか一方が初処方となった場合、無難なワード「血液サラサラ」を患者様へお伝えして理解していただくケースが多いのですが、プラビックス(クロピドグレル)を定期服用している患者さんにエリキュースやワーファリンが「追加」となった場合は、そうはいきません。
血液サラサラの「違いを知りたい」患者様が時折いらっしゃいます。
ここで、難しいのが「先生は〇〇と△△が違うポイントです」と言っていたのに、薬局で薬理作用の違いだけにターゲットを絞って説明すると、話がややこしくなるだけで、患者様の理解・薬識が向上せずに”混乱をまねくだけ”となることが往々にして起こりうることです。
本質は同じことを言っているとしても、人によって説明方法が異なるケースが多々あるという良い例ではないでしょうか。このとき、薬局の薬剤師が複数の説明方法を武器として用意しておくことは有益であると私は考えますので、以下にクロピドグレルとワーファリンの「違い」を患者様へお伝えるする文言を検討してみます。(自分まとめ)
患者様へお伝えする文言ということで、抗血小板薬、抗凝固薬という文言は避けます。
抗血小板薬の例
バイアスピリン、クロピドグレル、エフィエント、ブリリンタ、シロスタゾール
抗凝固薬の例
ワーファリン、プラザキサ、イグザレルト、エリキュース、リクシアナ
【一時止血と二次止血という考え方】
怪我をしたきに、最初に傷口に集まって血を止める成分が「血小板」です。血小板が集まって出血をとめることを「一時止血」と言います。
血小板による止血は不安定でもろいため、患部をより強固に止血するために「フィブリン」という物質が血小板の周囲を覆い、丈夫で安定した血栓をつくり止血が完了します。これを「二次止血」といいます。
上記を踏まえた上で、血が固まるためには2種類のシステムがあることを患者様へ“やんわり”とお伝えします。
1:素早く傷口に集まるが、それほど丈夫ではない「血小板のあつまり」
2:発現までの時間は遅いが、丈夫な血栓をつくる「フィブリンのあつまり」
クロピドグレル類は「1」によって作られる血栓を抑え、ワーファリン類は「2」によって作られる血栓を抑えます。
上記の内容は説明としてはシンプルですが、脳や心臓といった具体的な部位や動脈・静脈などの特徴的な場所の名前が出てこないので、患者様にとっては、曖昧な説明となってしまうかもしれません。
【白色血栓と赤色血栓という考え方】
白色血栓とは白い血小板が主体となって作られる血栓のことです。
赤色血栓とはフィブリンが網の線維を作り、血液中の赤血球を巻き込んで作る赤い血栓のことです。
白色血栓は一時止血機構がメインで、血小板が集まることが要因となります。動脈性血栓とも呼ばれます。
動脈性血栓と呼ばれる所以としては、動脈は流れが速く、傷口に勢いよく血液ぶつかると血小板が傷口にひっかかります。その血小板に新たな血小板がくっつき傷口をふさぐわけです。
白色血栓=一時止血=動脈性血栓
と色々な呼ばれ方があるようです
一方、赤色血栓は二次止血機構がメインであり静脈で起こりやすいという特徴があります。
一時止血が起こっていないのに二次止血が起きるのかな?と疑問がわきやすいところなのですが、静脈は動脈と比較して血液の流れが遅いという特徴があり、血液の「よどみ」が生じやすいわけです。よどんだ血液の中でフィブリンが赤血球を巻き込みながらくっつくことで血栓が作られます。
(一時止血がなくても、よどんだ血液の中では二次止血が起きます)
赤色血栓=二次止血=静脈性血栓
と色々な呼ばれ方があるようです
上記を踏まえた上で、血が固まるためには2種類のシステムがあることを患者様へ“やんわり”とお伝えします。
1:流れが速い動脈内の傷を素早く修理する「血小板のあつまり」
2:流れが遅くよどんでいる静脈内で赤血球を巻き込みながら固まる「フィブリンのあつまり」
クロピドグレル類は「1」によって作られる血栓を抑え、ワーファリン類は「2」によって作られる血栓を抑えます。
「血液サラサラ」という言葉ではなく「血小板(透明な血栓)」や「フィブリン(赤い血栓)」と言った「血栓」の違いを踏まえた上で、それぞれの血栓形成を妨げる薬であることを明確にすることが有益と考えます。