睡眠覚醒障害治療薬「デエビゴ錠」(レンボレキサント錠)発売開始
2020年7月6日、不眠症治療薬(オレキシン受容体拮抗薬)デエビゴ錠2.5mg/5mg/10mgが発売開始となりました。
デエビゴ錠は、既存の処方薬”ベルソムラ錠”と同じような薬理作用の睡眠薬ですので、いわゆる”クセになりにくい睡眠薬”・”処方日数制限がない睡眠薬”という区分になることが想定されます。平成30年の診療報酬改定以降、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬を12カ月以上同一用法・用量で連続処方した場合は処方料の減算ルールが設けられておりますので、デエビゴ錠のように向精神薬に分類しないタイプの睡眠薬の需要は高まっているように感じます。
不眠症治療薬“デエビゴ(レンボレキサント)”に関する臨床報告
エーザイが不眠症治療薬“デエビゴ(レンボレキサント)”はベルソムラと同様の薬理作用を有する薬剤です(オレキシン受容体1と2に対する拮抗作用)。現在、第三相試験のデータまでが開示されているのですが、デエビゴとベルソムラの比較データは公開されておりません。今回は、これまでに開示されているデエビゴの薬理作用の中から睡眠剤としての特徴をまとめてみました。
デエビゴはたくさん飲んでも寝付きはかわらない
睡眠剤としてのデエビゴ(レンボレキサント)について、一番興味深い記載内容は“10mg以上を服用しても有効性はかわらない”という記述です(第二相試験の報告より)。ベルソムラでも同様の見解かとは思うのですが、デエビゴの薬理作用は、”オレキシン(ホルモン)”という体内の目覚ましホルモンがくっつく脳内の部分である“オレキシン受容体”と拮抗することで、
“目覚ましさせない“=”眠りを促す“
という効果です。
”起きている状態”をオレキシン(目覚ましホルモン)がオレキシン受容体に100%くっついていると仮定した場合、薬によってオレキシン受容体を65%以上ブロックした時に、はじめて「眠いかも」という感覚となります(ベルソムラより)。レンボレキサントやベルソムラのようなオレキシン受容体拮抗薬は、非常に多くのオレキシン受容体を占有しなければ効果を発現しない薬と言えます。
ざっくりとしたイメージですが、デエビゴ(レンボレキサント)を10mg以上使用しても脳内のオレキシン受容体占有率に大きな変動はないため、睡眠薬としての”寝つき(入眠に対する効果)”には変化がないというデータが第二相試験を読んだ私の印象です。一方で、たくさんのデエビゴ(レンボレキサント)を飲むと、体内での代謝に時間がかかるため、日中まで眠気が持続する(睡眠時間が長くなる)という副作用が生じていました(睡眠の質に関してはたくさんのでも変わらない)。
翌朝の眠気持ち越しに関してはデエビゴ(レンボレキサント)1~10mgを飲んだ群では、眠気の持ち越しは無く、15mgや25mg服用群では眠気の持ち越しが報告されています。
ゾルピデム徐放錠6.25mgとデエビゴ(レンボレキサント)の効果比較
デエビゴ5mg/10mg、ゾルピデム徐放錠それぞれを服用して8時間後の姿勢安定性については、デエビゴ服用群ではプラセボ群と同様に姿勢の安定性に影響はありませんでしたが、ゾルピデム徐放錠服用群では、寝起きのふらつき増が確認されました。(ゾルピデム徐放錠:ベースラインに対する平均変化量:5.0)
中途覚醒後の再入眠までの時間について
デエビゴ5mg群:―22.5分
デエビゴ10mg群:-28.7分
ゾルピデム徐放剤群:-21.0分
デエビゴ10mg群ではゾルピデム徐放群に比較して、有意に再入眠までの時間を短縮した。(-の値が大きいほど、再入眠までの時間が短いというデータです)
デエビゴによる副作用
一般的な副作用は5%以上に傾眠がみられています。
デエビゴ1mg群の傾眠率は3.1%
デエビゴ25mg群での傾眠率は22%
と報告されています。