胃瘻・経管で酸化マグネシウム製剤を投与すると、チューブの先端でつまることが多々あります。酸化マグネシウム(粉)は詰まりやすいのに対して、錠剤は詰まりにくく、スーッと投与することができます。この理由について調べてみました。
20mlディスペンサーおよび経管チューブ(8Fr.)
マグミット200mg3錠(合計600mg)
マグミット250mg2錠(合計500mg)
マグミット330mg2錠(合計660mg)
マグミット500mg1錠(合計500mg)
上記の投与量で、それぞれ簡易懸濁を行い、酸化マグネシウム粒子が沈殿市内程度によく転倒混和してから経管投与を行います。投与後は水でフラッシングを行います。
その結果、チューブは閉塞しなかったというデータがインタビューフォームに記されておりました。
尚、マグミット330mgをとろみ調整剤と一緒に100mlの水に入れた場合は、とろみ製剤の量によって崩壊性がことなることが報告されています。
(とろみ製剤の量が多いと、マグミットは崩壊しない)
とろみ製剤の例:つるいんこQuickly、ネオハイトロミールⅢ、ハイトロミール
酸化マグネシウム「ケンエー」ではマグミットよりも更に過酷な条件で簡易懸濁試験を行っています。
条件
酸化マグネシウム錠330mg「ケンエー」3錠(合計1g)
水20mlに上記の薬剤を入れ、10分間放置したあと振り混ぜてよく懸濁し、経管栄養チューブに注入する。その後、水20mlでフラッシングする。
使用するチューブ
ニューエンテラル フィーディングチューブ6.5Fr
結果、酸化マグネシウム錠「ケンエー」はシリンジおよびチューブを閉塞することなく、スムーズに薬剤た通過したことを報告しています。
簡易懸濁法における崩壊懸濁試験及び通過性試験を実施したところ、酸化マグネシウム錠 250mg「モチダ」及び酸化マグネシウム錠 330mg「モチダ」は、温湯に対し 10 秒以内に崩壊・懸濁し、最小経管チューブサイズの 8Fr のチューブを通過した
(インタビューフォームに記されておりました)
酸化マグネシウムは粉製剤も錠剤もどちらも水にはほとんど溶けません。さらに粉も錠剤も比重も2.75〜3.6の製剤ですので水にいれれば沈みます。胃瘻や経管チューブを通過できるかどうかの違いは、崩壊性です。
崩壊性(どれほど小さい粒子まで崩れるか)がポイントとなります。酸化マグネシウムの粒子も水には溶けません。しかし小さい粒子ならばチューブを容易に通過できます。報告によると重質酸化マグネシウム(粉)の水中での粒子径が約150μmであるのに対して、マグミット錠の水中での粒子径は約55μmとされており、1/3も粒子径が異なることが報告されています。
水に入れた時に、酸化マグネシウム(粉)と錠剤で、なぜ3倍もの粒子径に差がでるのか?という疑問がわきました。ここからさきはインタビューフォームを調べても各種報告をみても記されておりませんでしたので私の個人的な主観となりますのでご了承ください。
酸化マグネシウムが医薬品として登録されるためには安定性を確認するために過酷試験という試験を受けます。試験条件は40度、相対湿度75%という条件下でどれだけ安定性を保つことができるかが調べられます。この試験に通過して医薬品として登録されます。
酸化マグネシウム製剤は水には溶けませんが、空気中の湿気を吸収する性質があります(インタビューフォームに記されています)。粉製剤は錠剤と比較して空気に触れる面積が大きい(表面積が大きい)という特徴があります。そのため医薬品としての安定性を保持するために必要最低限の硬さ(崩壊しにくい状態)を確保しなければなりません。
また、酸化マグネシウムの特徴の1つとして、デンプンを混ぜると著しく粉体としての流動性を増すという性質があります。
(酸化マグネシウム「シオエ」のインタビューフォームより)
酸化マグネシウムの粉製剤は基本的に100%酸化マグネシウム製剤として販売されているのに対して、マグミットや酸化マグネシウム錠「ケンエー」などには、「トウモロコシデンプン」「結晶セルロース」といった添加物が含まれています。錠剤では添加物を加えることで製剤として特徴を加味することができます。
マグミット錠の特徴を確認してみると、「少量の水で速やかに崩壊する」ことを開発のポイントにおいて製造された医薬品であることが開発の経緯に記されています。
酸化マグネシウム(粉)製剤は、ガチガチに固く作られた製剤あるため、水の中に入れても崩壊しにくい製剤であるため胃瘻などの経管チューブの先端をつまらせることがあるのに対して、マグミットなどの酸化マグネシウム錠剤は、室温では安庭な状態を保ちつつ、水の中に入れると非常に細かな粒子にまで崩壊することができるように製剤設計された製品であるため経管チューブの先端が詰まりにくいことを学びました。