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パーキンソン病の原因はパーキンタンパク質の制御不能が原因か?
パーキンソン病の原因遺伝子産物と考えられている”Parkin(パーキン)”に関与するミトコンドリア酵素に関する新たな発見がありましたので下記します。
Parkin(パーキン)とは
Parkinとは機能が低下したミトコンドリア(細胞内オルガネラの一つ)のみを選択的に除去する作用(マイトファージ)に関連する蛋白質と考えられています。Parkinに変異が生じると、遺伝性若年性パーキンソン病の要因となることが報告されておりますが、Parkinがどうのように細胞死を引き起こしているかについての詳細は不明です。
今回の報告では、ミトコンドリア外膜に存在する4回膜貫通タンパク質”MITOL”がPakinとどのように関与するかについての詳細が解明されたという内容です。
パーキンソン病の関連タンパク質Parkinの制御機構に関するMITOLのはたらきについて
MITOLとは
MITOLとはミトコンドリア外膜に存在する酵素(蛋白質)であり、周辺の蛋白質にユビキチンを不可することで、タンパク質の分解を促し、細胞内の品質管理を担っているタンパク質です。
MITOLはParkinと結合することで、Parkinによるミトコンドリアの除去(マイトファージ)を管理していることが報告されました。MITOLを欠如させた細胞内ではPakinが蓄積するとともに、細胞死を抑制させる蛋白質であるFKBP38も減少することが報告されました。一方でMITOLが存在する条件では、Parkinが分解され、細胞死抑制タンパク質であるFKBP38が保護されることが報告されました。
さらに、MITOLとFKBP38は機能低下したミトコンドリアの除去(マイトファージ)の際に、ミトコンドリアから小胞体へ移動する様子も観察されました。
上記の結果から、Pakinによる細胞死において、MITOLがPakinを分解し、FKBP38を保護することで細胞死をコントロールしていることが示唆されました。さらに、MITOLはミトコンドリア外膜だけでなく小胞体へ移行することで細胞機構を調節していることも示唆されました。
過去の知見では、Parkinに変異が生じることでパーキンソン病が発症するのでは?という考えもありましたが、今回の報告では老化に伴うPakinの制御不能がパーキンソン病の原因となる可能性が示唆され、その制御においてMITOLの活性化がポイントとなることも示されました。
今後は、MITOLの活性化(Parkinの分解)を標的とした研究がパーキンソン病の治療戦略になるのでは?と期待されます。