おじさん薬剤師の日記

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チック症状に対する薬物療法・行動療法について2018年の報告をまとめる

投稿日:2018年6月28日 更新日:

チック症状に対する薬物療法・行動療法について2018年の報告をまとめる

 

チック症状は子供の10〜20%に見られる疾患で、多くは一過性に消失することが多いと言われています。2018年にチック症状に関する症例報告がいくつかありましたので、まとめてみました。

◯小児の慢性チック障害における行動、教育、薬物学的治療を比較したデータ(米国:2018年3月)

チック症状に対して、心理教育的治療、行動教育的治療、薬物学的治療を用いたときの症状の軽減度合いを確認したデータです。

tic-disorders

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8歳〜17歳までの110名のチック症状を有する患者さんを対象として10週間にわたり心理教育的治療、行動教育的治療、薬物学的治療のいずれかを受けるように無作為に割り付けて、その効果を確認したところ、心理教育的治療に比べて、行動教育および薬物治療においてチック症状の有意な改善が確認されています。さらに強迫症状に関しては薬物療法が行動療法よりも効果的であるというデータとなっています。

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3種類の治療プランに関しての概要

心理教育:症状管理に関するアドバイスは行わずに、患者さん本人、その家族およびアドバイザーにはチック症状の特徴およびその病態、平行して起こりうる疾患、予後に関する情報を提供する。チックが生じたいときは不安を軽減して患者を尊重する姿勢で対応する。

 

行動教育的治療:HRTまたはERPどちらかのトレーニングを週8回行います。トレーニングの長さは1回60分です。(最初の2回は90分行われました)。尚、患者の母親は自宅にて毎日15分間チックを監視することを行います。

まばたきチックに対する行動療法

HRT(ハビット・リバーサル・トレーニング)の略です。チック行動と反対となる行動をトレーニングにより身につける治療です。例えば「まばたきチックと反対となるトレーニングとして“まばたきなし対象物注視“」などが例となります。

 

EPR(暴露療法)の略です。不安や苦痛を克服するために、患者が抱いている恐怖や不安に対してトレーニングとして直面させ症状の軽減をはかります。

薬物学的治療:1日リスペリドン0.5〜2mgを服用します。過去にリスペリドンを使用した経緯がある患者さんはアリピプラゾール2.5〜10mgを服用します。

 

筆者らはまとめとして、「行動療法が薬物療法と同程度に有効であり、さらに行動療法はチックを引き起こす重要な因子の一つ“不快な感覚”自体を減少させることができるとしています。そのため軽度から中程度のチック症状を伴う小児の治療における第一選択として提案されるべき」と述べています。

◯チック症状と薬物療法について (スウェーデン:2018年6月)

6979人のチック症状を有する方に対して以下の薬物治療が行われました。

多動性障害治療薬:53.8%

抗うつ剤:50.7%

催眠薬/鎮静薬:41.7%

抗精神病薬:41.5%

 

患者の72.1%は複数の薬剤を服用していました。チック症状に対する効能としては、抗うつ剤、定型抗精神病薬、ベンゾジアゼピン系抗不安薬が有意に症状を減少させたのに対して、非定型抗精神病薬(セロクエル・エビリファイ)、抗アドレナリン薬、ADHD薬、抗てんかん薬、非ベンゾジアゼピン薬では経時的に回数の増加が確認されたと報告しています。

◯チック症状と年齢による改善率 (米国:2018年5月)

平均年齢11.2歳のチック症状を有する99人(男性:78人、女性21人)を対象とした報告です。被験者のうち42人が精神的疾患を併発(複数)していました。(ADHD:33例、不安障害:28例、強迫性障害:15例、気分障害:1例)

 

被験者のうち、29人が精神疾患の薬を服用しており、α2アドレナリン作動薬(10人)、SSRI(9人)、抗精神病薬(8人)でした。

 

調査結果によると、年齢とチック抑制能には正の相関があり、チック抑制能を100分率で表すと、「6歳ではチック抑制能が20〜30%程度と低い値なのですが、18歳までには80%以上のチック抑制能を獲得することができる」という右肩上がりの回復データが示されています。

 

尚、年齢とともにチック抑制能が高まるというデータに関して、性別や抗精神病薬を飲んでいるかどうかといった要因は関係ありません。

筆者らは考察のなかで、年齢とともにチック症状が改善する理由として脳神経の発達、特に前頭前野の機能的及び構造的な発達がチック症状の改善を促すのではないかと記しています。

 

最後に、真実味があるかどうかはわかりまっせんが、目新しい感じの報告を見つけましたので記します。

◯チック障害を有する小児における血清ヒドロキシビタミンDとの関連について(中国:2018年5月)

チック障害を有する小児(男性:148名、女性31名:平均8.0±2.7歳)を対象として、その採血結果を、同年代のチック障害を持たない児童(女性35名、男性154名:平均8.1±2.6歳)の採血結果と比較したデータです。

 

結果

チック群

25-ヒドロキシビタミンDが適正域(30〜90ng/ml):18.4%(33名)

25-ヒドロキシビタミンDが不足(10〜30ng/ml):81.6%(146名)

 

非チック群

25-ヒドロキシビタミンDが適正域(30〜90ng/ml):44.4%(84名)

25-ヒドロキシビタミンDが不足(10〜30ng/ml):55.6%(105名)

筆者らは上記の結果より「非チック群と比較して、チック群では血清25-ヒドロキシビタミンDの値が有意に低かったことからビタミンDの不足または欠乏が若年期のチック障害と関連している可能性を示唆しています。

 

チック症状のメカニズムについては十分定義されておりませんが、神経伝達、抗酸化および神経精神障害における脳の発達および機能に対してビタミンDの影響が関与しているのではないかと考察で記しています。

上記は中国人のデータなのですが、チック群も非チック群もどちらもビタミンDが不足気味な気もするので、なんとも言えないところもあります。ビタミンDとチックの関連については、「可能性の一つ」という程度の認識で良いのかもしれません。

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執筆者:ojiyaku


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