慢性心不全治療薬ベリキューボが医薬品として承認される
バイエル薬品が承認申請をだしていた慢性心不全治療薬「ベリキューボ錠」が新規有効成分として医薬品承認されました。
ベリキューボ錠は2.5mg/5mg/10mgという規格があり、通常は1日1回2.5mgを食後服用から開始し、2週間間隔で1回投与量を5mgおよび10mgに段階的に増量していく製剤です(血圧等患者の状態に応じて適宜減量する)
ベリキューボ錠の薬理作用は「可溶性グアニル酸シクラーゼ刺激薬」という機序の薬剤ですが、あまり聞きなれない作用なので調べてみました。
可溶性グアニル酸シクラーゼについて
「可溶性グアニル酸シクラーゼ」とは細胞内にあって、一酸化窒素(NO)の指示を受けてGTPからcGMPを生産することで血管拡張作用・心不全悪化防止を促すタンパク質です。
心不全患者では、一酸化窒素(NO)→可溶性グアニル酸シクラーゼ→cGMPまでの流れが低下していることが報告されており、NOの利用能率が低下しているために、心不全や血管障害が引き起こされると考えられています。
ベリキューボ錠を服用すると、一酸化窒素(NO)と可溶性グアニル酸シクラーゼとの結合が安定(NOと可溶性グアニル酸シクラーゼとの感受性UP)するだけでなく、NO非依存的に、ベリキューボが直接的に可溶性グアニル酸シクラーゼを刺激することで、cGMPの産生が促され、血管拡張作用・細胞増殖作用など心不全症状の改善効果が期待されます。
ベリキューボ錠の臨床データ
被験者:左室駆出率の低下した心不全治療患者5050例(2016年9月~2018年12月)
ベリキューボ服用群:1日1回2.5mgから開始し、最終的に1日1回10mgまで増量(2526例)
プラセボ服用群:(2524例)
心血管死および心不全による初回入院率
ベリキューボ錠服用群:35.5%
プラセボ群服用群:38.5%
ハザード比:0.9(有意差あり)→ベリキューボを服用すると10%だけリスクが低減される
心血管死割合
ベリキューボ服用群:206例(8.2%)
プラセボ服用群:」225例(8.9%)
全死亡または心不全による初回入院率
ベリキューボ服用群:957例(37.9%)
プラセボ服用群:1032例(40.9%)
ハザード比:0.9→ベリキューボ錠を服用すると10%リスクが低減される。