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ビバンセカプセルとコンサータ錠の比較データ

ビバンセカプセルとコンサータ錠の比較データ

追記:2020年5月28日 追記

令和元年5月に薬価収載されたビバンセカプセルが令和2年6月1日に薬価収載の翌月の初日から1年間が経過します。

これまでは新薬扱いのため処方日数が14日間に制限されていましたが、2020年6月1日以降の処方日数制限について厚生労働省で検討が行われました。

2020年6月以降のビバンセカプセルの処方日数制限について

覚せい剤原料を含有しているビバンセカプセルの投与制限に関しては、メチルフェニデート塩酸塩(コンサータ)の取り扱いも参考としつつ、30日分を上限とする取り扱いでどうだろうか

という対応(案)が提示されています。

ビバンセカプセルの投与期間いついて

ビバンセカプセルとコンサータ錠の比較データ(2019年2月10日)

厚生労働省は2019年2月21日に開催する薬食審・医薬品第一部会にビバンセカプセル(注意欠陥/多動性障害AD/HD)の新薬承認可否が行われ、承認が了承されました。今後、薬価収載から発売へと進んでいくことになります。

ビバンセカプセルは英国や米国ですでに多くの使用実績がある医薬品でしたので、海外の使用実績・同類薬との比較データについて確認してみました。

 

ビバンセカプセル

 

ビバンセカプセルを服用すると、体内でデキストロアンフェタミンという成分にかわります。デキストロアンフェタミンにはドーパミンやノルエピネフリン、セロトニンといった神経伝達物質を放出させる効果があると同時に、上記の神経伝達物質が神経終末に再取り込みされるのを防ぐ効果があります。

 

イメージとしては、神経終末と呼ばれる家から放出される興奮物質の量を増やすと同時に、家の中へ帰ってくる興奮物質の量を抑制(減らす)することで、家の外で活動する興奮物質の量を増やす(活躍を促す)効果がある薬と言えます。この2つ相乗効果によりADHDの症状を軽減する働きがあります。

 

ビバンセカプセルを服用後2~3時間後に効果が発現し、半減期は9~11時間程度で次第に効き目が減少していきます。ADHDの薬は日中の活動時間中効果が発現して脳を活性化し、就寝中は効果が切れている必要があります(夜に脳が活性化すると眠れないため、夜にかけて効き目がゼロに近づくことで良質な睡眠が得られることがADHDの薬には求められます)

 

ビバンセカプセルは覚せい剤原料という分類になります。

ビバンセカプセル(注意欠陥/多動性障害AD/HD治療薬)新薬承認可否を審議

コンサータ錠

 

主作用はシナプス前ドーパミントランスポーターを阻害する働きです。イメージとしては神経終末と呼ばれる家の外で活動する興奮物質が家の中に戻って来られないようにすることで、外で活躍する興奮物質の量を減らさないという働きです。それに追加する効果として神経終末からドーパミンが放出するのを助ける効果もあります。

 

コンサータ錠を服用後2~3時間後に効果が感じられ、半減期は4時間程度です。服用後5~8時間後に効き目がピークとなります。コンサータ錠の成分に関しては、半減期が4時間ですが、薬剤の放出制御システムにより持続的に薬剤を放出する製剤であるため、効果が12時間持続することが特徴的な製剤です。

 

ビバンセカプセルとコンサータ錠は薬が作用するポイントが似ています。しかしこの2剤の分子構造は以下のように大きく異なります。そのためビバンセカプセルは覚せい剤原料、コンサータ錠は第一種向精神薬という分類となります。

bibanse

 

ビバンセカプセルとコンサータ錠の効果比較

 

2017年8月:10代ADHDに対するビバンセ/コンサータの効果比較

 

被験者:13~17歳の男性・女性

 

方法

投与量固定試験(6週間)

ビバンセカプセルを1日70mg服用する群(被験者219人)

コンサータ錠を1日72mg服用する群(被験者220人)

プラセボ(偽薬)群(被験者110人)

ストラテラカプセルのジェネリック医薬品“アトモキセチン”の各社比較データ

投与量調節試験(8週間)

ビバンセカプセルを1日30~70mgで調節して服用する群(被験者:186人)

コンサータ錠を1日18~72mgで調節して服用する群(被験者:185人)

プラセボ(偽薬)群(被験者:93人)

 

上記の投与量・投与期間で上記薬剤を服用した後、ADHD-RS-IV(ADHDの程度を評価する指標)がどの程度減ったか(ADHDがどの程度改善したか)を評価しています。

 

結果

投与量固定群(6週間)

ビバンセカプセルを1日70mg服用する群:-25.4±0.74

コンサータ錠を1日72mg服用する群:-22.1±0.73

プラセボ(偽薬)群:-17±1.03

上記の結果よりビバンセカプセルを服用することでADHDの評価指数が25.4減少していることがわかります(改善していることがわかります)。さらに、減少率が大きいことからビバンセカプセルの効果がコンサータ錠より有益であることが確認されました。臨床的総合印象度尺度の改善度(CGI-I)を確認したところ、ビバンセカプセル群が、コンサータ群と比較して有意な改善が確認されました(81.4%対71.3%)

 

投与量調節試験(8週間)

ビバンセカプセルを1日30~70mgで調節して服用する群:―25.6±0.82

コンサータ錠を1日18~72mgで調節して服用する群:―23.5±0.8

プラセボ(偽薬)群:-13.4±11.9

10代ADHDに対するビバンセ/コンサータの効果比較

投与量調節試験においてはビバンセカプセル群とコンサータ錠群の治療成績に関し、有意差はありませんでした(どちらも、同程度に効果がでていました)

 

投与量固定試験・投与量調節試験のいずれにおいても、プラセボ(偽薬)と比べてビバンセカプセル/コンサータ錠は有効性が確認されました。

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副作用報告

プラセボの2倍以上の頻度で報告され、被験者の5%以上で発生した副作用

・食欲減退

・体重減少

・不眠症

・眩暈

・口渇

 

 

2016年8月:リタリン/コンサータで効果不十分なADHD障害患者に対するビバンセ/ストラテラの費用対効果

 

小児および青年期におけるADHDに対してメチルフェニデート(リタリン/コンサータ)による初期治療を行った場合、3分の1の患者において十分な効果が得られないケースがあります。その場合、第二候補の治療薬として他剤が検討されるわけですが、ビバンセカプセルまたはストラテラカプセルを使用した際の費用対効果にについてイギリスでの報告がありました。

 

メチルフェニデート(リタリン/コンサータ)服用で効果不十分だった被験者に対して

ビバンセカプセルを1日30mgまたは50mgまたは70mg

ストラテラカプセルを1日0.5~1.2mg/kg(体重70kg以下の方が対象、1.4mg/kgを超えない程度)、(体重70kg以上の被験者には40mgまたは80mgまたは100mg

を9週間投与した場合の費用対効果について調べたデータです。

 

結果

ビバンセカプセル服用群はストラテラカプセル服用群に比して0.011QALYs改善が見られたと報告されています。

QALYsとは質調整生存年と記載され、完全に健康な状態で1年間生活できること=1QALYと記載されます。ビバンセカプセルを服用した群はストラテラカプセル服用群にくらべて0.011だけ生活の質が改善されたという報告です。

 

ビバンセカプセル服用群の総医療費:2352ポンド=33万6千円

ストラテラカプセル服用群の総医療費:2332ポンド=33万3千円

 

治療に要した医療費を確認してみると、ビバンセカプセル群の方が総医療費は3000円ほど高いですが、その分0.011QSLYsだけ改善していることがわかります。費用対効果として考える場合

{(2352ポンド)-(2332ポンド)}/0.011=1802ポンド(25万7千円)

 

医療費の差を質調整生存年で割ることでビバンセカプセルとストラテラとの費用対効果が確認できます。筆者らはメチルフェニデート(リタリン/コンサータ)が効果不十分だった場合、ビバンセカプセルを選択することが費用対効果の面で有効であるとまとめています。

リタリン/コンサータで効果不十分なADHD障害患者に対するビバンセ/ストラテラの費用対効果

ストラテラカプセルのジェネリック医薬品“アトモキセチン”の各社比較データ

2015年6月:小児/青年におけるADHDに対する各種治療薬の効果

 

小児/青年におけるADHDに対して、各種治療薬がプラセボと比してどの程度効果がでているかを標準化平均差(SMD)で評価したデータ

ザイバン錠(国内未承認):-0.32

ストラテラカプセル:-0.68

コンサータ錠:-0.75

ビバンセカプセル:-1.28

小児/青年におけるADHDに対する各種治療薬の効果

 

2018年8月:成人ADHDに対するビバンカ/コンサータの効果比較

ビバンセカプセル:-0.89

混合アンフェタミン塩:-0.64

コンサータ錠:-0.5

モディオダール錠:有効性は確認できなかった

成人ADHDに対するビバンカ/コンサータの効果比較

まとめ

海外の使用報告を確認した感じですと、ビバンセカプセルの方が有益である半面、副作用頻度も高いという報告を多く目にしました。コンサータなどの既存の治療薬でも症状の改善が見られない場合などの第二選択肢として、使用される報告も見かけましたのでADHDに対する治療の幅が広がるのではないでしょうか。

ojiyaku

2002年:富山医科薬科大学薬学部卒業