おじさん薬剤師の日記

調剤薬局で勤務するおじさんです。お薬のはたらきを患者様へお伝えします

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薬剤師の育成に関するおじさん薬剤師の考え方について

投稿日:2022年9月18日 更新日:

薬剤師の育成に関するおじさん薬剤師の考え方について

 

以前に「調剤薬局でのおじさん薬剤師の働き方~失敗談・学習方法・注意点など~」という記事を書いたところ、多くの薬剤師さんからご意見をいただくことができました。ご連絡いただいた皆様ありがとうございました。

調剤薬局でのおじさん薬剤師の働き方~失敗談・学習方法・注意点など~

 

今回は、その第二弾と言いますか、「薬剤師の育成」に関して私の考えを記してみました。文字数は1万8000文字程度の内容です。

追記:2022年9月18日

ビジネスの手綱を握り直す「TRACTION」

著:ジーノ・ウィックマン

を参考として、調剤薬局ではたらく薬剤師が、どのように自身のスキルアップを考えるかについて自分なりの解釈を記します。

「ビジネスに成功したい場合は、正しい席に正しい人を座らせること」

という経営者目線の文言があるのですが、調剤薬局の薬剤師として働く場合、いわゆる一般企業のような「人事部」「企画部」「総務部」「営業部」といった部署分けは、ほとんどありません。

しいて言うのであれば「一人薬剤師店舗」「本社所属」「派遣(ヘルプ)専門」「固定店舗」といった感じで「誰と働くか」に関して「働く場所」の区別があるだけです。

経営者は該当薬剤師の力量を見定めて、「正しい人」を「正しい場所」に配置することが腕の見せ所かもしれません。

適材適所で働き、ある程度の結果がついてくると、上司からの信頼を獲得でき、会社からの評価も、それ相応のものとなるのだと考えます。

 

私のような調剤薬局薬剤師は、所属している会社の「企業理念」を実践し続けることが自身の評価につながります。

ヒトの価値を評価する方法の一つに「コアバリュー評価」という方法があります。以下にコアバリュー評価で優良な職員となる方法を記します。

コアバリュー評価方法

①職場にいる有能な薬剤師を一人イメージします(スター薬剤師と呼びます。年齢は問いません。)

②「スター薬剤師」と考える理由をリストアップします。以下に例を示します。

・患者様への薬の説明が上手

・在庫管理にかける時間が少ないにも関わらず欠品がすくない

・繁忙時の判断が適切

・PC処理が早い(薬歴記入・処方入力作業など)

・スタッフへの気配り、コミュニケーション力が高い

・お金を稼ぐ力が高い(かかりつけ薬剤師・地域支援体制加算・後発医薬品調剤体制加算への意識が高い)

・休日出勤・救急当番・救急電話対応を厭わない(長時間労働を苦にしない)

・解決力があり、困っているスタッフへのフォローが早い

・調剤報酬・レセプト請求・労災・自賠責などの請求に関する理解が深い

・メンタルが安定しており、忙しくても余裕を失わない。イライラしない

・パソコン操作、調剤分包機、散剤分包機の操作に関する理解が深い

などなど

 

③スター薬剤師の要件としてピックアップしたものの中から「特に大切だ」と思う案件を3~5個を思い浮かべます。

おそらく、スター薬剤師は「特に大切な3~5個」が優れているために会社からも店舗スタッフからも信頼があり、それ相応の地位にいる(賃金を得ている)と考えられます。

 

④では、逆に「問題がある薬剤師」「職場で浮いている薬剤師」を想像したとき、「特に大切な3~5個」のうち、いくつを満たしているかを考えます。おそらく複数項目で「マイナス」となるのではないでしょうか。

 

⑤それでは最後に、自分は「特に大切な3~5個」に関して、いくつを満たしているかを考えます。3~5個のうち1つでも「まったくダメ」という項目があれば、早急に改善を行う必要があります。

「早急に改善」と記載した理由は、「特に大切なポイントの1つが全くできていない」ことが、遅かれ早かれ自分の足を引っ張り、結果としてその職場に溶け込めない(馴染めない)要因となるからです。

 

「会社の理念と価値観があわない」というやつです。

 

自分ができていないポイントをリカバリーする方法に関しては、「リカバリーする価値があるかどうか」を考えます。

例えば「調剤・投薬・薬歴すべてスピード重視」というポイントを会社が求めているにもかかわらず、「私は一人一人の患者さんとじっくり接していきたいの!」という信念を持っているのであれば、見直す価値はありません。他の会社へ転職することが本人にとっても会社にとっても有益でしょう。「リカバリーする価値はない」と考えます。

 

要するに、「特に大切なポイント」について向き合ったときに「素敵な理念だ」「自分が取り組む価値がある理念だ」と思うことができるのであれば自分を改善していけばいいわけです。一歩一歩でも理念に近づくことができれば、それ相応の評価がついてくると思います。改善を行うと考える場合は、一定の期限を設け、定期的に自分を振り返ることが有益のようです。

一方で、「特に大切なポイント」に魅力を感じない、自分のはたく理念と異なるのであれば、その会社での評価はされにくいということです。居心地が悪い時間を過ごし続けることになるでしょう。

 

上記のような人材評価のツールとして「ピープルアナライザー」という手法が紹介あるようですので、必要な方は検索してみてください

 

薬剤師の育成に関するおじさん薬剤師の考え方について

 

2022年1月時点の現状認識において、調剤薬局や病院勤務の薬剤師は「今の職場になじめない、合わないから転職する」ということが容易な職業であると私は感じています。

 

特に勤務地を指定しなければ「薬剤師不足」は日本各地で散見されます。

 

一般的な仕事探しに関して、再就職をした場合、就職先での給料は

「これまでの社会人としての勤務年数×0.8」

といったように、スタート時点での給料は「引き下げ」から開始されるケースが多いようです。(看護師の給料体系などで目にします)。

 

一方で薬剤師の場合は「これまでの社会人としての勤務年数×1」から開始されることが多々あります。人手不足の職場に就職する場合は給料UPから開始されるケースも目にします。

 

上記のような「需要」>「供給」という薬剤師事情がある以上、

「今の職場を辞めずに、向上心をもって働き続ける薬剤師」

を育成することは、「雇う側(迎える側)」からすると、永遠の課題とも考えられます。

 

大手調剤薬局では「次から次から薬剤師を雇って、辞めずに現場に残った人で業務を回すこと」をこの問題の解答としている会社もあります。これも一つの答えかもしれません。

 

ただ、人材派遣会社から薬剤師を紹介してもらうと、その都度「紹介料(年収の1/3程度)」を支払わなければならないため、出来れば薬剤師を雇った後は長期間働いてほしいと願うのが会社の本心だと思います。新人薬剤師は紹介料が無料で入社されますので、それこそ「じっくりと育成して、長期間働いてもらう」ことが期待されます。

 

昔から「会社にとって人は宝」というキラーフレーズがあるわけですが、「入社した薬剤師を育成して働き続けてもらう」ためには「迎える側の環境」、「新人薬剤師の心構え」がマッチする必要があると私は感じています。

 

そこで今回は、おじさん薬剤師が考える「調剤薬局薬剤師の育成・コーチング」について記してみたいと思います。「教える側」・「新入社員」双方にとって業務改善の一助となれば幸いです。

教える側(迎える側)の視点

新規で薬剤師を採用した場合といっても、その薬剤師の背景にあるキャリアには様々なケースがあります。

・新卒薬剤師

・中途採用薬剤師

 調剤薬局経験あり

 病院薬剤師経験あり

 ドラッグストア経験あり

 製薬会社経験あり

 長期間ブランクがある薬剤師

などなど

 

教える側は「新入社員」の力量を「過去の経験」で想像します。そして想像は期待へと膨らむわけですが、期待に比して実際の力量との間に乖離があるとわかると、がっくりと肩を落とすケースが起こりえます。とりわけ人手不足の調剤薬局では「新入社員」への期待が高まりすぎて、お互いに空回りしてしまう状況も散見されます。

 

「教える側」は過去の社会経験・調剤経験は問わず「新入社員」=「新人薬剤師(しんじんやくざいし)」と認識して、先入観なしで対応することが双方にとって有益であると私は考えます。

 

以下の内容では、新卒薬剤師・中途採用薬剤師という概念はなく一律に「新入社員」として文章を記していくことをご了承ください。

 

余談)当初、新卒薬剤師・中途採用薬剤師について「新入薬剤師(しんにゅうやくざいし)」として文章を記していたのですが、文字面(もじづら)だけを見ると

「新入薬剤師(しんにゅうやくざいし)」と「新人薬剤師(しんじんやくざいし)」

は非常に似ていることに気づき、ブログで流し読みをするには非常にわかりにくい感じになってしまいましたので、「新卒薬剤師・中途採用薬剤師」=「新入社員」として文章を記すこととしました。

 

kyoiku

kyoiku

「教える側」がくみ取ることは?

新入社員が自分自身で想定している育成速度、目標としているゴールがあるか、ないかはわかりません。一方で「教える側」には業務内容を順次教えていく流れのようなものがあり、3カ月で「○○程度育ってくれるだろう」という見込み・期待があります。双方における「育成速度の観点」にズレがあると、育成はなかなか思うようにはいかない印象があります。その結果、教える側がヤキモキする日々が続きます。

 

 

例えばですが、新卒薬剤師の中には「一日でもはやく一人前になるぞ!薬の勉強を毎日するぞ!」と鼻息もあらく向上心を持つ人もいるでしょう。「アンサングシンデレラ(薬剤師をモチーフにした漫画・ドラマ)」のような実態と大きくかけ離れた薬剤師像を想像し現場に乗り込む新卒薬剤師もいるかもしれません。

 

はたまた、中途採用薬剤師の中には「楽な仕事がいいなぁ・・・」ゆるい見込みを抱いて入社する方もいるかもしれません。(悪い表現で言いますと「仕事をなめてかかるタイプ」です)

 

「教える側」は上記のような新入社員が抱いている「漠然とした想定」をくみ取ったうえで実際の業務をこなすことができるように「軌道修正」する作業が求められます。

 

軌道修正をする際に、いきなり最終的なゴールを「じゃじゃーん」と伝えたところで、新入社員は「何を言っているだろう」「急にいわれても無理や」「就職先失敗したかな」といった感じで、会社に対して負の感情を抱く可能性があります。最終的に長期間同じ店舗で働き続けることになったとしても個人の能力により「最終的なゴール」は異なりますからね。(出世希望の方もいれば、平社員希望の方もおります)

 

そのため、「教える側」は“少し先の目先のゴール”を伝え続けることで「少しずつ少しずつ軌道修正をし続ける」ことが重要でると私は考えます。あるいみ根気比べのような長い戦いになるかもしれません。

 

場合によっては「教える側」の意に反して、3カ月経過後、1年経過後に何も進展がみられないケースも往々にして起こりえます(中途採用者ではよくあります)。

 

「教える側」が考える「ゴール」には、それこそ数多の答えがあるかと思うのですが、私は「HUNTER×HUNTER(ハンターハンター)」という漫画にでてくる「育成・評価」に関する考え方が社会の実態に合っている気がして、私の業務の参考としています。に。以下にその概要を記します。

 

参考)HUNTER×HUNTERとは「ハンター」というライセンスを取得していくストーリーの漫画です。ハンターというライセンスを取得後は「1つ星ハンター」「2つ星ハンター」「3つ星ハンター」とハンターとして業績に応じて星の数が増えていくルールとなっています。

1つ星ハンター:「特定の分野に於いて華々しい業績を残したハンターには星が一つ与えられる」

2つ星ハンター:「上官職に就き、育成に携わった後輩のハンターが星を取得した時 その先輩ハンターには星が与えられる」

 

3つ星ハンター:「複数の分野に於いて華々しい業績を残したハンターには星が三つ与えられる」

 

上記参考がHUNTER×HUNTEにおける星の数とその意味です。

これを薬剤師の業務に当てはめてみると

 

1つ星「薬剤師」

門前医院の処方薬(精神科・循環器科・腎臓内科・皮膚科・眼科・神経内科・胃腸科など)に関して、

・初期量

・維持量

・適宜増減幅

・禁忌薬

・粉砕可否

・分包可否

・類似薬との使い分け

・処方日数制限

といった調剤におけるルールが頭に入っており、必要に応じて疑義照会を行うことができる。

 

特に、初期量・維持量・併用禁忌・一包化可否などは、厚生局による個別指導でも目を付けられる案件ですので、知っていると知らないとでは一緒に働く際の安心感に大きな差が生じます。

 

私のイメージとしては、長年同じ店舗に所属していて、厚生局の個別指導も大幅に減額することなくクリアした薬剤師がこれに該当するかと思います。

 

1つ星薬剤師はとにかく自分を磨き上げることで達成が可能です。自分にも他人にも厳しい態度をとり、間違いが非常に少ないといった薬剤師が私のイメージです。

 

場合によっては、ヒトと一緒に働くことを苦手としていて、一人薬剤師の店舗に従事するようなタイプの方も1つ星薬剤師にはいるかもしれませんが、それはそれでよいかと思います。

 

2つ星薬剤師

1つ星薬剤師を取得後に、後進の育成に惜しみない努力を注ぐ薬剤師。

「〇〇店舗の薬剤師A氏の下で3年間みっちり働いた薬剤師は、その後どこの店舗へ移動になっても、店舗の中心として役割を担うことができる。」

この場合のA氏が2つ星薬剤師のイメージです。

 

人材育成は本当に大変な作業です。

・自分の日常業務をこなす。

・新入社員に業務を教える

・新入社員のミスをカバーする余裕をもつ

・新入社員との人間関係を円滑に保つ

 

私のイメージですが、上記の4項目をこなすことが出来る方は2つ星薬剤師だろうなぁと感じます。

特に「新入社員との人間関係を円滑に保つ」は非常に難しい作業です。

長期的な指導を続けた結果、新入社員が萎縮してしまうと、お互いの関係がギクシャクしてしまい、人材育成どころではありません。

 

「仕事に委縮した薬剤師」は常に人の目を気にしてしまい、物事の良し悪しの根本的な判断を自分で行うことができません。「得体のしれない不安感」と向き合うことになります。極端な話、「今、私が行った仕事は正解なのだろうか?」とキョロキョロと他人の目を気にしながら職場での日々を過ごすことになります。

 

こうなってしまっては、「仕事をこなす」だけで精一杯となり、育成・発展は見込めません。下手すれば衰えていく可能性もあります。指導薬剤師はこのあたの「無言の威圧・貫禄」といった相手への対応に関しても十分配慮したほうがいいと私は感じています。

 

またさらに新入社員との関係が悪化し、新入社員から「指導薬剤師は人間的に受け付けない」という印象を持たれてしまうと、業務の指導をしたところで「教える側の言葉は何も届かない」でしょう。一般的は話ですが、成功者や信頼できる人からもらった「アドバイス」と、そうでない方からもらった「アドバイス」では自分の中に染み渡る量が大きく異なります。

 

 

3つ星薬剤師

2つ星薬剤師を取得したうえで、薬局経営の維持について積極的な意見を発言し、地域体制加算、後発医薬品調剤体制加算、特定薬剤管理指導加算、在宅業務などの各種加算について、2年に1回の報酬改定(厚生労働省「〇〇をしたら加算をあげますよ^^」)を正しく理解し、誰よりも早く算定要件を満たしていく薬剤師。

 

正直、3つ星薬剤師は会社として非常にありがたい存在だと思います。それ相応の賃金が保証されるのではないでしょうか。

 

「自分を育て、人を育て、会社を育てる(会社に賃金をもたらす)」という社会の構造を理解し、実践に漕ぎつける努力は、薬剤師に限らずあらゆる分野で共通の理解かもしれませ。

 

 

では以下におじさん薬剤師が考える「薬剤師の育成・コーチング」についての実践例を踏まえて記してみます。

 

私の考えで恐縮ですが、調剤薬局薬剤師の業務には

  • 調剤室での業務:仲間と協力してスピーディー&ミスなく取り組む業務
  • 待合室(投薬を含む)での業務:患者様と1対1で正解に近づける業務

 

という全く異なる2つの業務について状況をみながら対応していく仕事だと認識しています。

 

薬剤師免許を取るまで、または薬剤師になりたての頃は、②「待合室(投薬を含む)での業務」をイメージしがちなのではないでしょうか?

(いわゆる患者様へお薬をお渡し、説明するシチュエーションです)

 

 

新入社員が⓶のイメージが先行して想像してしまうと、「調剤室での業務」のイメージがうまくいかず、店舗スタッフとかみ合わない原因となることもあります。そこで①と⓶を別の業務として認識することから新入社員へ話を始めます。

 

「調剤室での業務」「待合室での業務」に一貫して共通している点は

・患者様の健康保持(安心・安全)

・必要な薬を必要な日数お渡しする

・スピーディーな対応

 

などなど医療&接客業のミックスです。上記の点については共通認識です。

では違いについて私の考えを記します。

 

「調剤室での業務」

極端な話で恐縮ですが、調剤室での業務が忙しければ忙しいほど「調剤室内で罵声が飛び交うことだってあるんだぞ!」といことを想定します。

「安全に必要な薬を必要な日数で正しく調剤して、正しい診療報酬を算定する。しかも出来るだけ早く!」

 

文字に起こすと上記の作業なのですが、繁忙期に患者さんがズラズラと待合室でイライラしながら待っている状況下において、調剤室内でいかに円滑に働くかが「調剤室での業務」の本質です。

 

イメージとしては医療系ドラマの見どころの一つ「手術チーム」の動きがよい例かと思います。

執刀医、麻酔科医、看護師(器械出し)、臨床工学技士などがチームを組んで手術を行うわけですが、手術中に執刀医は術野から目を離すことはできませんので、手術中に使用するメスやハサミなどの器械類を器械だしの看護師がサポートしています。

 

「執刀医のリズムに合わせて仕事をサポートする」

これですね、器械だしの看護師は執刀医の手元、術野を観察して「次に何をしたいか、何を考えているかを予測して、タイミングを合わせて器械をだす仕事」です。

 

繫忙期の調剤室業務でも、イメージとしては同じことが求められます。しかし、繁忙期の調剤室内では自分が「執刀医役(中心)」になることもあれば、自分が「器械だし役(サポート)」になることもあり、その役割は随時入れ替わり立ち代わりを繰り返しますので、ある意味では状況を把握するという難易度が加わります。

 

調剤室で中心となって調剤を行っている職員A(薬剤師 or 調剤補助員)がその瞬間における調剤業務の中心です。(この役目は時間経過とともに常に入れ替わり立ち代わりします。)

 

職員Aが調剤の中心である場合、その調剤の方法(ヒート・一包化・粉砕・散剤)、調剤品目数を確認し、サポートが必要かどうかを判断します。

ここでのイメージは「職員Aの目から何が見えていて、何を欲しているか」です。

(器械だし看護師は執刀医の手元、術野を観察して「次に何をしたいか、何を考えているかを予測して、タイミングを合わせて器械をだす」)ように自分がサポートポジションになりきって対応します。

 

ヒート品目数が多いのであれば→処方箋の最後の薬からピッキングをサポートする

一包化指示があれば→錠剤をバラす/一包化監査をする/一包化監査された分包紙を折りたたむ

粉砕指示があれば→ミル(粉砕機)を用意する/錠剤をバラす/粉砕する錠剤数を数える

散剤指示があれば→散剤を監査する/監査された分包紙を折りたたむ

 

などなど、調剤を完結させるために必要な工程をイメージして、職員Aが「次に何をしたいか」を考え、先回りしてサポートをします。

 

先回りするのであれば「タイミングを合わせる」ことも重要なポイントです。クソ忙しく職員Aが働いている横で、独りよがりに「先回りして〇〇しました」と言い放つことは答えではありません。逆に職員Aをイラつかせる可能性も十分にあります。

 

「先回りして〇〇をする」のであれば、職員Aのリズムに同調しながら良きところで声掛けをすることがポイントです。「調剤者A(執刀医)のタイミングに合わせる」ことと同じです。

 

さて、ここで話を少し脱線させてください。

 

2019年(平成31年)4月2日、調剤薬局において調剤は「薬剤師以外の者が実施することは、差し支えない」というルールができました(「0402通知」と呼ばれます)

https://www.mhlw.go.jp/content/000498352.pdf

ということで、前述している職員Aは薬剤師でも調剤補助員でもよいわけです。

 

社会人として・・・と言いますか、人間の本質的な根っこの部分の話なのですが、一部の薬剤師の中には「薬剤師がえらい/すごい」「調剤補助員・事務員がえらくない(下に見る)」と誤認している人がおります。

 

店舗内で一緒に働くスタッフとして、薬剤師免許保有者が「えらい」ことは何一つありません。ここは重要なので、もう一度言いますが、「薬剤師免許を持っている=人間性がすぐれている」ことは何一つありません。店舗の業務をスムーズに完結させるために会社が雇用しているだけあり、職種は関係ないのです。

 

新人薬剤師・中途採用薬剤師の中に「努力して薬剤師免許を取ったんだ!」という思いが「謎のプライド」となって、「スタッフを下に見る」ような勘違いをしてしまっている薬剤師が時折目につきます。

 

このような「薬剤師がえらい」という“勘違い“は、繁忙期に限らず日常的な会話や態度にもチョコチョコ表れます。(本人は、それが”当たり前“と思っているため気づきません)。そして、そのような態度に対して周囲スタッフの小さなイラつきは蓄積されます。

 

どうでしょうか、自分が調剤補助員・事務職員の立場にあるとき、免許の有無を問わずに分け隔てなく会話できる職員と、あからさまに「薬剤師なので」と偉そうにする薬剤師・謎の壁を作る薬剤師がいた場合、どちらが話しかけやすいでしょうか。

 

これが目に見えないストレス(イラつき)となります。このお話しの最初に記載しました「手術チーム」を再度思い返してみます。

 

「執刀医」が1スタッフに対してイライラした状態で手術に取りかかるとします。忙しい時であればあるほど、難しい手術であればあるほど、そのスタッフの存在が邪念となるでしょう。タイミングのズレ、無駄な動きが執刀医にとっては雑念となり、仕事の妨げとなります。

 

繁忙期の調剤室も同様です。繁忙期ほど人は余裕がなくなり視野も狭くなります。普段であれば「多少はイラつくけど許せる案件」であったとしても、イライラしている時はそうはいきません。「偉そうな薬剤師」とレッテルが貼られた薬剤師は視界に入るだけで「邪魔者」となってしまいます。

 

閑話休題 話を戻します。

 

繁忙期の調剤室において大切なことは、その場その場で「業務の中心(執刀医)」となっている職員(自分・他の薬剤師・調剤助手)を見定め、業務効率を考えサポートをすることです。

 

そしてそのために大切なことは、日ごろの態度、スタッフとの接し方、コミュニケーションの量、仕事観察・確認・声掛け、場所取り、動線確保などがポイントになると私は考えます。

 

日頃の態度:偉そうにしない。ヒトは平等です。

 

接し方・コミュニケーション:世間話も含めて適切な会話を楽しむ

 

仕事観察・確認:仕事はどこまでも細かく細分化でき、仕事のできる人ほど細かな仕事が目に入っています。それを吸収・盗む気持ちで観察します。

 

声掛け:日常的な世間話も含めて、「声をかけにくい相手」を作らないようにしたいところです。「声をかけにくい相手」は忙しい方(上司)に多いかもしれません。その際は、上司が暇そうなタイミングで声掛けをするよう心がけます。

 

場所取り・動線確保:仕事のできる人ほど良く動き、定点にはとどまりません。繁忙期であれば、より顕著に迅速な動きが求められます。繁忙期では、仕事がわからない人ほどフリーズ(何をしてよいか分からず思考停止・行動停止)します。

 

フリーズするのであれば、せめて場所取り・動線確保を心がけ、ヒトの邪魔をしないよう気を配ります。

 

「私も何かしなきゃ!でも何をしていいかわからない」という状況は社歴が短い人では往々にして起こりえます。しかし、「何をしたらいいですか?」という質問を繁忙期に聞いてはいけません。動けないのであれば動線確保です。

 

そして少し暇な時間ができた時に、自分より機敏に働くことが出来るスタッフに「忙しくなった時に、どう動けばよいかわからない」実情を相談することが実りある相談になると感じます。

 

現時点で出来ていないことを自他ともに認めることはお互いにとって大切なことだと私は思います。

 

 

以上をまとめます。新入社員の「調剤室での業務」における1つのゴールは

「繁忙期の動き」

です。繁忙期をスムーズにこなす。他者から「助かるなぁ」と感じてもらうことが1つのゴールと私は考えます。

おそらくですが、どの調剤薬局でも1日1回程度は一時的な「繁忙期」はあるのではないでしょうか。

 

そんために日頃から気を付けるポイントを以下に記します

(多少、繰り返しとなる文面もあります)

 

・スタッフへの態度(特に調剤助手、事務職員への態度)

特段にへりくだる必要はありませんが、お互いにサポートし合う仲であることを常日頃意識すべきです。

 

・同程度のコミュニケーション

話しかけたら話しかけてもらえる。べらべらと喋ることが答えではありません。お話し上図な方もおれば、くちべたな方もおります。相手と同じ程度に日常会話を楽しめる関係が繁忙期を円滑に対応できると考えます。

同程度のコミュニケーションに関して、難しいのは「教える/教わる」という関係の場合です。どうしても「教える側」が権力を持ってしまうため権力→威圧という流れになってしまうと、「教わる側」が萎縮してしまい、話しかける量が減ってしまいます。

 

繁忙期のイライラしている時であったとしても、「教わる側」が重要だと感じる案件(疑義照会・在庫・患者対応など)を「教える側」に伝えることは非常に大切です。このような「声掛け」ができる間柄を維持することが求められます。

 

・仕事観察

上記のような社会人としての人間関係構築を行いながら、新入社員がスタッフの仕事観察を行うことが出来る環境を(短時間でも)提供します。

 

いわゆる「中心スタッフ(執刀医)が次に何をしたいか、何を考えているかを予測」する作業です。とにかく暇なときに「見る」のです。

 

すごい暇な時<ほどほど暇なとき<丁度いい仕事量<バタバタしてきた<繁忙期

 

上記のような仕事ステージがあった場合、新入社員がいきなり繁忙期の動きをすることは無理があります。ほどほど暇なときに「見る」業務を行いながら「中心スタッフへ話しかけてみたりする」ことが有益です。

 

見てわからないなら聞きます。

職員A(中心スタッフ)に対して「Aさんが〇〇をしている時に、何をすると、この業務がより早く回りますか?」

ほどほど暇なときであれば職員Aも気持ちよく答えてくれるでしょう。職員Aが調剤を終えた(中心業務が終了した)時点が質問するタイミングかもしれません。

 

そして、一度聞いたことは実践すべきです。聞いたことを実践しないケースが続くと、職員Aは「教えたのに・・・。全然動いてくれないなぁ・・」とがっかりしてしまいます。

 

一度聞いたことは実践します。実践すると今度は「タイミング」の難しさに気づくことが出来るはずです。執刀医にメスを渡すタイミングが少しずつ体感で身につくはずです。

 

このタイミングは人により(中心スタッフにより)異なります。まさに人それぞれ求めるタイミングが異なると私は感じます。「Aさんは若干早めに、Bさんは遅めに」といった感じで人それぞれのタイミングを知ることができます。なんにせよ、「タイミングを知ると、Aさんのイライラが「助かるなあ」に如実に変わります。

 

目的をもって実践することが大切であると私は考えます。

 

調剤室業務でのサポート業務というのは細かく見ていくと、際限なく業務が想定されます。一方で、ボーっと調剤室業務を見ている人にとっては「サポート業務」が目に入りません。

 

自分が中心の場合はある程度働くことが出来る一方で、自分がサポートとなった時に動きが鈍る方がおります。「サポート業務が明確には想定されていない」ケースです。

 

この場合、自分が中心となって働く場合はスタートからゴールまで業務を完結できるわけですから、その手順書を書いてもらうといいかもしれません。

1:処方箋をうけとる

2:処方箋のコピーをとる

3:一包化かPTPか確認する

4:GE変更可能な処方箋か確認後、GEへ変更するか希望をとる

5:処方日数が適切か、次回予約日と合致するか確認する

6:調剤開始

7:一包化調剤の場合~

 

などなど、自分が働く場合の流れをできるだけ細かくリストアップします。

おそらく他のスタッフが働く場合も大きな違いはないでしょう。

“出来るだけ細かく仕事のフローを作る”と「サポート業務とそのタイミングがチラホラ見えてきます」

 

調剤→監査→投薬

 

こんなフローでは何も見えません。

 

一包化調剤を開始する場合、錠剤をPTPシートから取り出しても安定かどうかを判別し、バラ錠として〇カ月間安定が確認された薬についてPTPシートから錠剤を取り出します。

 

PTPシートから錠剤を取り出す場合、どのようにPTPシートを持ってバラすと、早くバラせるか、親指は痛くならないか、PTPシートに薬が残らずに出し切ることができるか。両手がいいか、片手がいいか。

 

一包化監査の方法は何が適切か自分流の「刻印監査」「錠数監査」の方法は?

分包紙は4折りがいいか6折りがいいか7折りがいいか

 

などなど、物事を細かく見て自分なりの最善方法を模索します。おそらくですが、PTPシートのバラし方に答えはありません。人それぞれです。私は36歳の時に当時在籍していた会社の薬剤師・調剤助手に錠剤のバラし方を教えてもらい、自分にとって最善と思える方法を真似して取り入れましたことを記憶しています。

(36歳で錠剤のバラし方を変更しました)

 

少し話がそれましたが、新入社員に「調剤業務」を伝える場合、上記のように自分が「品目数が多い調剤の中心をしている、1包化など手のかかる調剤の中心している」などの業務を想定してもらい、その際に、どのようなサポートをして欲しいかを具体的に考えます。

 

すると

 

「相手にしてほしいと思ったことを自分がすればいい」

 

と気づくことが出来ます。とにかくこれの繰り返しです。自分とスタッフ、スタッフと自分で共同して調剤室の業務を成し遂げることを常に意識ます。

 

くれぐれも「人に相談しない薬剤師・人に相談できない薬剤師」にはならないよう「教える側」は配慮すべきかなぁと思います。

 

 

 

「調剤業務」のイメージは上記の通りです。

具体的は「調剤方法」については

以下の調剤薬局のおじさん薬剤師の働き方~失敗談・学習法・注意点など~をお読みください。

調剤薬局でのおじさん薬剤師の働き方~失敗談・学習方法・注意点など~

 

 

 

待合室(投薬を含む)での業務

待合室での業務とは「対患者様」との会話・共感です。

処方箋をお預かりすることから始まり、残薬確認、お薬手帳の有無、併用薬の確認・重複薬・禁忌薬はないか?投薬業務、健康は保持されているか、困ったことは無いか、会計業務など

 

基本的には患者様と薬剤師が1対1で取り行う作業をイメージします。

 

そのため新入社員は所属店舗でのルール・立ち回りを把握していないため、一定期間を経過するまでは「待合室での業務」を許可されません。

 

患者様にもいろいろな方がおります。調剤薬局や薬剤師に対して「負の感情」を持っている方や「敵対心」を持っている方も中にはおります。

とにかく急いでほしいと要求してくる方もおります。

 

患者様の要求は様々ですが、それをすべて飲むことはできません。場合によっては患者様と押し引きをしながらちょうどいい妥結点、折衷案を探すこともあります。社会人としてのポリシーの中で、一定の幅を持たせて柔軟に解釈するケースもあります。極端な話、患者Aさんと患者Bさんでは、真逆の言葉が「答え」となることも起こりえます。

 

その一方で、薬の使い方や用法、使用量に関しては厳格な態度を貫く時もあります。

一部の食品やアルコールとの併用が避けた方がいい薬について説明する際や、再発性の失神、無自覚性の低血糖が頻回の方には車の運転をしてはいけないことを厳格な言葉で伝えることもあります。

 

ということで「待合室での業務」はその場その場で患者様の訴え・要求を正確に把握して、患者様と一緒に健康につながるよう妥結点を見つける作業と私は考えます。

 

初期対応を間違えると、その患者さんからの薬局全体の評価はガクンと下がることもあります。場合によっては本社にクレームの電話をする患者さんもおります。

 

 

患者様と1対1で会話をする際、その患者様に対応する薬剤師が「薬局の顔・グループ会社の顔」となります。「薬剤師だから薬に関して何でも知っている」と思っている患者さんからの質問にスムーズに回答できるか、患者様が納得てきる回答を提供できるかが、それ以降の患者様とのつながりに影響します。

 

「待合室での業務」は、それこそ想定してもしきれないほど千差万別です。あらゆる事例を記載することは不可能ですが、一般的な事例と私の考え方を以下に記します。

 

待合室(投薬を含む)での業務

 

・残薬確認

・次回受診日まで薬が足りるか

・処方内容は適切か

・併用薬確認

・併用禁忌、疾患禁忌はないか

・定期薬継続使用における体調変化

・重大な副作用、その他の副作用はおきていないか

・病院で定期的に検査をうけているか

・薬物療法における心配事、困っていることは無いか

・各種クレーム対応

 

 

などなど、待合室での業務で薬剤師が確認すべきことは多数あります。それを毎回の投薬で網羅的かつ機械的に確認することは不可能です。最初に記したように待合室での業務の本質は「1対1、ヒト対ヒト」の会話です。

 

私にとって最悪な投薬は「SOAPを書くために、毎回の投薬で定型文を発言する」ことです。

定型文投薬は双方にとって、何の印象も残りません。むしろ不快感を与えることもあると私は感じます。

注)繁忙期には投薬時間短縮のために「定型文投薬」をすることもありますが、「毎回の投薬で定型文投薬」はマズイと感じています。

 

定型文投薬しかできない薬剤師は、患者様の病態についてイメージできていないことが課題のよう誤認されがちですが、私はそうではないと考えます。

 

定型文投薬は頭を使いません。どの患者様にも同じ質問をすればいいからです。この状態が習慣化してしまうと、「頭を使わない薬剤師」が育ちます。定型文投薬薬剤師の本質的な課題は、

「薬剤師免許を取って、ある程度業務が身に着いた薬剤師がそれ以上の努力をしないこと」です。

 

この境地に達した薬剤師の業務改善を図ることは並大抵ではありません。年を重ねれば重ねるほど改善は期待できず、無理だろうなぁと私は感じます。

 

患者様の薬の内容、薬の変更点、これまでの経過、本日の体調などを総合的に勘案して、病態・健康状態を具体的に想像するトレーニングが必要となるのでしょうが「努力しない・頭を使わない」ことを心の核としている人の心に炎を点火するのは・・・・・私にはわかりません。

 

現場スタッフ該当薬剤師に対して「それでも良し」とするならいいのですが、現場から不満の声があがるようなら、会社経営者が給料を引き下げるなり、他店舗へ移動させるなりの経営者判断が必要な案件かと思います。

 

 

上記の定型文投薬薬剤師もマズイ例の1つですが、それと同程度に心配な薬剤師は「尋問投薬薬剤師」です。尋問投薬薬剤師は自分では「尋問している」という自覚はありませんが、患者様や店舗スタッフからすると「患者さんに対して、自分の聴きたいことだけ聞いて、投薬を終えている。まさにSOAPを書くためだけの尋問だなぁ」という印象となり、投薬をするたびに患者様からの評価を下げていくタイプの薬剤師であると私は感じています。

 

病院にて検査・診察・今後の治療方針が決定し、あとは薬局で薬をもらって帰るだけの患者様に対して、薬局薬剤師が「無駄な尋問」をすることは患者様の健康管理に寄与しません。それどころか、「無駄な尋問=不要・不信な時間」という印象となります。

患者様によっては「なんで薬剤師にそんなことを言わなければならないんだ!」と憤慨される方もいるかもしれません。

 

ヒトとヒトには時と場合によって適切な会話の量があります。尋問は一方的な問いかけであり、答えを強要する問いかけです。そして、その意図はSOAPを書くためです。

 

 

尋問薬剤師は自分が患者様より上の立場であるという観点から声掛け(尋問)をしているパターンと、患者様の心をくみ取って会話(対話)をすることが出来ないために質問を積み重ねるパターンなど、その背景にあると思うのですが、いずれにしても患者様からの信頼を得られるわけはありません。

 

上記2例がマズイ投薬の例です。

 

それでは以下にいくつか投薬についての私の考え方を記します。

 

 

例えば1日20~40人くらいの患者様に投薬するとしたとき、全員にフルパワーの投薬をすることはできません。

・バスの時間がせまっていて早く帰りたい

・子供連れで子供がイライラしている

・薬をもらったら、仕事に戻らなければならない

・家族から「薬をもらってきて」と依頼されて薬局に来た

・理由はわからないが明らかにイライラしている

・会話にならない(聞く気がない、理解力が低い、話す気がない)

 

上記のような患者様の需要は「スピード投薬」です。この点を見落とすと最悪です。患者様のイライラが目に見えるように膨れ上がります。逆に、スピード投薬を実践できれば患者様からの評価が上がることもあります。

 

「毎回、スピード投薬」が患者様の健康管理にいいとは言えませんが、需要と供給をマッチさせることため「今回はスピードを優先しよう」と考えます。

ネットで薬について調べてくる患者様について

最近は病院を受診する前に、自分の体調(○○が痛い、身体が動きにくい、鼻水が出る、咳が出る)をインターネットで調べて、症状から病態を予測することが可能です。さらにその治療に必要な医薬品名や効果を調べてくる患者さんもおります。

 

私はインターネットで薬について調べてくる患者様に対して「すごいですね、すばらしいですね」と誉めることから会話をスタートします。自分が使用する薬の知識(薬識)は多い方ほど、治療成績が高いと私は感じているためです。

 

患者様がインターネットで薬について検索する場合「くすりのしおり」サイトやそれに類似するサイトを閲覧していると私は推測します。さらに該当薬に関して「薬理作用・効果」「副作用」あたりは目にしてきているだろうと想定します。

 

「インターネットで調べてきたこと」を誉めた上で、定期で使用している薬であれば「実際の効き目・体調」を確認します。初めて処方された薬であれば「調べてきていないだろう」と思われることに加えて必要要素を補足します。

 

Googleなどの検索サイトで「医薬品名・効果」と検索すると表示される「くすりのしおり」などのサイトには「薬効・効果」「副作用」「用法」が記載されています。「副作用」に関しては副作用頻度は記載されておらず、起こりうる副作用が羅列してあるだけです。

 

インターネットで調べてくる患者様は「薬に関する興味」をお持ちの方ですので、補足説明をすることは双方にとって有益であると思います。例えばパソコンやタブレットの画面で添付文書を開きながら説明することも素晴らしい対応だと思います。

 

患者様と一緒に添付文書を見る作業は患者様にとっても「添付文書の見方」を知る方法につながりますので、薬識を高める術の一つと考えます。

 

添付文書のどこを見るかについては薬剤師それぞれでクセがあるかもしれません。

 

私の場合ですと

「用法用量の欄を見て、疾患ごとの用量を見る」

例:

エンレスト錠:慢性心不全:50mg2T/2×スタート、高血圧:200mg1T/1×スタート

トリプタノール錠:うつ病:30~75mg、夜尿症:10~30mg、末梢神経障害:10mg~

などなど、疾患事の初期量、維持量は必ず確認します。その際に適宜増減幅はあるか1日最大量はあるかも同時に確認します。

 

「副作用:発現頻度の高いものだけみる」

例:副作用頻度の高い上位3銘柄あたりを見て、患者様をあおらない程度にそっと伝えることがあります。

 

「薬物動態」

半減期やTmaxを確認し、一般的な効果発現時間や効果持続時間を患者様に伝えることがあります。薬に興味がある患者様は薬物動態情報を伝えると喜んでくれます。

 

「臨床データ:見るけど患者様にはギリギリまで患者様には言わない」

第二相、第三相臨床試験データが添付文書に記載されていることがあります。治療成績は良くても60~80%程度です。このデータを患者様に伝えると「え?飲んでも効かない人が20~40%もいるの?」と薬の効果に疑問を抱く方が続出しますので患者様には言いません。

 

しかし、このデータにも使いどころがあります。

例えば「●●という薬を飲んだが効果がなかったので、△△という薬に変わったよ」という状況の時に●●という薬の添付文書を確認し、臨床データを見てみます。治療成績は60~80%程度でしょうから、100人飲んだ時に効果を感じる方は60~80人程度である事実を伝えます。さらに以下を補足します。

 

「肝機能や腎機能は人それぞれであり、●●を1錠飲んだ時、肝臓にて数%分解を受けてから血液中を薬が駆け巡り効果を発揮するのですが、肝臓にて分解される割合は人それぞれです。さらに腎臓でも同様のことが起きます。お酒に強い人弱い人がいるように、薬も種類ごとに効き目はそれぞれなんですよ。」

 

すると多くの方が納得してくれます。

 

余談ですが、昔勤務していた調剤薬局(耳鼻科の門前)にて「医学生・研修医が調剤薬局に見学する」という日が稀にありました。門前医院で研修中の「医学生・研修医」が暇な時間をみて調剤薬局を見に来る日です。

 

その際の会話で「抗ヒスタミン剤って本当にたくさんありますよね、なんでこんなに種類があるんですかね?」という質問を受けた記憶があります。その際の私の回答はまさに上記の通りなのですが、抗ヒスタミン剤の添付文書を3~4つほど並べて、臨床データの部分を研修医と一緒に見るのです。

 

すると、どの医薬品についても有効率は70%前後であることが確認できます。そしてその理由は肝臓・腎臓における薬物代謝量は、その人が持っている酵素、腎機能によりこおとなるため、有効率が100%となることはない。そのために同類薬が多数存在しており、自分に効果がある薬を見つける作業が必要である。

 

ことを伝えました。私の中ではこの考えは今も変わりません。

 

話をもとにもどしますと、「臨床データ」は使いどころを間違わなければ有益な情報が記載されていると考えます。

 

「食事の影響」「高齢者」「小児」「妊婦」などの情報は、求められたときに調べてお答えする程度です。

 

私の添付文書のさらっとした見る方法は上記の通りです。

 

言及しますと、私の基本方針として「医師・看護師は添付文書を見る。薬剤師はインタービューフォームの要点を読み込む」ことを自分の理念としていますので、出来れば医薬品に関する情報収集はインタービューフォームで行うことがベターと考えています。

 

話を患者様対応に戻します。

 

「クレーム事例」

“一人で解決できるか、一人では解決できないので助けを呼ぶか”

この判断ができればOKと私は考えます。自分の力量を超えるクレームについては人の助けを求めます。「自分で何でも解決してやるぞ」という謎のプライドは患者様・店舗双方に迷惑をかける結果となります。

 

最悪なケースは「店舗内での自分の評価が下がると困る」と常に考えている職員が「このクレーム対応は、何としても自分一人で処理するぞ!」という謎のモチベーションで鼻息も荒くクレーム対応に臨むことです。

 

日ごろから「店舗内での立場がない」「肩身が狭い」「評価が低い」と自認している薬剤師は、日ごろの心構え、考え方を変えるべきであり、最難関業務の一つ「クレーム対応」が成功しても日常評価に影響はなく、失敗すれば評価は下がるだけです。

 

自分の力量を正しく理解し、出来ないことは相談すべきです。

 

わからないことは、後から時間のある時に教えてもらいます。教えてもらったら、その次は自分で対応できるように頭の中でイメージします。これにつきます。教えてもらったことは実践します。ここが大切ですのでもう一度書きます。教えらもらったことは実践します。実践してみると、なんらかの「学び」を得ることができます。

 

怒っているお客さんに対して、現場職員では収集がつかなくなり、バックヤードから上司が出てきて丸く収めることがよくあります。

 

上司はこれが仕事です。事後に現場職員は上司に対して感謝するとともに、自分の対応のどこに非があったかを振り返り、上司と事例検討することは調剤薬局に限らず、サービス業ではよくあることだと思います。

 

事例検討に話を戻します。

 

調剤薬局業務における「クレーム?」で一番多いのは「薬をもらっていない・薬が足りない」といった感じ案件です。

 

この件に関する対応策はある程度決まっていますので、自分でフローを作っておくことをお勧めします。足りない薬が見つかる、見つからないは結果論です。本当に少なく薬をお渡ししたかもしれないし、患者様が間違って多く飲んだかもしれません。それまでの過程を取りこぼしなく確認できれば、あとはできることはありません。

 

もらってない、足りない問題は患者様から電話がかかってくることがスタートとなるイメージです。

 

私の対応は以下の通りです。

・何が何錠足りないのかを確認する

 

・〇月△日に□日分のお薬をお渡ししているので×月◇日まで薬が足りるはずであることをカレンダーで確認する

 

・自宅での薬の管理方法は薬袋管理なのか、ピルケース管理なのか、お薬カレンダー管理なのかを確認する。

(往々にして、ピルケースやカレンダーにある程度の日数をセットしている方の場合は、残りの薬を「薬袋」に入れっぱなしで放置していることがあります)

 

・薬袋に押印してある調剤印の日付を確認してもらい、その薬袋の日付が一番直近の来局日であるかを確認する。

(古い薬袋から順番に手を飲んでいる場合、最新の薬袋は別の場所に保管しているケースがある)

 

・薬袋が何袋あるかを数えてもらう

(1つの薬袋に複数の薬か混同していて、「見つからない」と勘違いしているケースがある)

 

・店舗の理論在庫と実在庫が合致しているかを確認する

 

・過去の棚卸調整の記録を確認する

 

・同一患者さ何で同様の事例が続く場合、投薬時に毎回錠数を確認する

 

・同一患者さんで同様の事例が続く場合、処方箋コピーに調剤時の錠数を記載し、処方箋コピーを一定期間保管する

 

薬がない、足りないという事例の場合、薬局側・患者様側のどちらに非があるかはわからないケースも想定されます。薬を渡した渡していないの言い争いは不毛です。双方の印象を下げるだけメリットがありません。無いものは無いのです。

 

大切なことは「治療を続けるために必要な薬が足りないのであれば、病院を受診して処方してもらうこと」

です。

健康第一の姿勢を貫くことが最優先すべき要件であることを常に意識して対応します。

 

 

他にも待合室(投薬を含む)での業務は様々な事例があるかと思います。

 

不合理なクレームも多々あります。

 

先日私が経験した事例でいいますと、ハルシオン錠の包装がSPシート(銀色包装)からPTPシートに変わった患者様から薬局に電話があり

「薬の見た目が変わってから眠れなくなった。もとの包装(SPシート)に戻してほしい」

といった案件でした。

 

調剤薬局としては手の施しようがありません。この場合はハルシオン錠を製造販売している会社の「患者様相談センター」の連絡先を患者様へお伝えし、SPシートからPTPシートへ変更されたことで、ハルシオン錠の製剤としての特製は何一つ変わっていないことを説明(証明)してもらうことが一つの答えとなるかもしれません。

 

または、眠れないのであれば次回Drへ眠れない事実と理由を相談することも答えの一つかもしれません。

 

クレームや相談を受けたときに1つではなく2つ3つと患者様がとる行動の選択肢を複数ご提案できれば、より柔軟な対応ができるかもしれません。

 

以上が「待合室での業務」に関するザックリとした私のイメージです。その場その場で対応が求められる業務であるため、患者様の訴えの「核」となる部分を、明確に受け止められるかが、その後の対応につながると感じます。

 

 

ここまでで、おじさん薬剤師が考える「薬剤師の育成」は終わりです。

 

以下に「自閉症スペクトラム気味」「アスペルガー気味」な薬剤師に対する私の考えを記します。

 

・忙しいとパニックになる

・何度も同じ間違いを繰り返す

・思い込みがつよく、改善がみられない

・自然な会話ができない

・プライドが高い

・相談せずに自分の判断で動く

・人の動きを観察しない

 

上記のような薬剤師と一緒に働くことは時折あるのではないでしょうか。

 

何をしても何を伝えても改善は期待できません。相手に期待ができないことを自覚します。

 

あとは、「お互いにミスが無いように働くぞ」という気持ちで一緒に働きます。「自分が」ではなく「お互いに」ということを常に意識します。

「仕事の効率・向上」は期待できないことを自認します。

とにかく「店舗運営」を考えて、患者様にご迷惑とならないよう最善を尽くします。

 

この状況が何日・何カ月・何年続くかはわかりません。

その薬剤師は年を取るとともに仕事が衰えていくことはあっても、向上することは難しいかもしれません。

 

数年にわたって、店舗業務に改善が見られず、自分の心が先に折れた場合は、今後の身の振り方について上司に相談すると思います。

調剤薬局でのおじさん薬剤師の働き方~失敗談・学習方法・注意点など~

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執筆者:ojiyaku


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