おじさん薬剤師の日記

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ステロイド プレドニン 糖尿病

ステロイドホルモンとプレドニン錠のちがいについて

投稿日:2025年9月3日 更新日:

ステロイドホルモンとプレドニン錠のちがいについて

〜体の中のホルモンと薬のはたらきをくらべてみよう〜

みなさんは「ステロイド」という言葉を聞いたことがありますか?スポーツのニュースや病院での治療などで耳にすることがあるかもしれません。

 

でも、「ステロイド」と聞くと、なんだかこわい薬のように感じる人もいるかもしれませんね。

 

実は、ステロイドは私たちの体の中でも自然に作られていて、健康を保つためにとても大切な働きをしています。そして、病気の治療のために使われる「プレドニン」という薬も、ステロイドの一種です。

この記事では、体の中で作られるステロイドホルモンと、薬として使われるプレドニンの違いについて、わかりやすく説明していきます。

 

 ステロイドホルモンってなに?

ステロイドホルモンは、体の中の「副腎(ふくじん)」という小さな臓器から作られるホルモンです。代表的なものに「コルチゾール」というホルモンがあります。

このホルモンは、次のような働きをしています:

– 炎症(えんしょう)をおさえる
– アレルギー反応をおさえる
– ストレスに対応する
– 血糖値(けっとうち)を調整する
– 免疫(めんえき)の働きをコントロールする

つまり、ステロイドホルモンは、体を守るためにとても重要な役割をしているのです。これらは体が必要とするときに、ちょうどよい量が作られます。

 

 プレドニンってどんな薬?

プレドニン(正式にはプレドニゾロン)は、ステロイドホルモンの「コルチゾール」に似せて作られた薬です。病院では、次のような病気の治療に使われます:

– 気管支ぜんそく
– アレルギー性の病気
– リウマチなどの自己免疫疾患
– 皮膚の病気(湿疹やじんましんなど)

プレドニンは、体の中の炎症や免疫の働きをおさえることで、病気の症状をやわらげる効果があります。

 

 効き目のちがい

ステロイドホルモン(コルチゾール)は、体が必要とするときに自然に作られ、バランスよく働きます。量が多すぎたり少なすぎたりすると、体調がくずれることがあります。

 

一方、プレドニンは薬として飲むため、体の中に急に多くの量が入ります。そのため、炎症や免疫の働きを強くおさえることができます。病気の症状がひどいときには、とても役立つ薬です。

 

効果の持続時間のちがい

ステロイドホルモン(コルチゾール)は、体の中で少しずつ作られていて、効果は8〜12時間くらいで弱まります。体はそのつど必要な量を調整して作り直します。

 

プレドニンは「中間型ステロイド」と呼ばれていて、効果が12〜36時間ほど続きます。そのため、1日1〜2回の服用で十分な効果が得られることが多いです。

 

 副作用のちがい

ステロイドホルモンは、体が自然に作るものなので、ふつうの量なら副作用はほとんどありません。でも、病気やストレスなどで作られすぎると、体に悪い影響が出ることがあります。

プレドニンは薬なので、長く使ったり、量が多すぎたりすると、副作用が出る例があります。たとえば:

– 顔がふくらむ(ムーンフェイス)
– 体重がふえる
– 骨がもろくなる(骨粗しょう症)
– 免疫が弱くなって感染しやすくなる

プレドニンの使用量は医師が症状をみて適正量を判断しますので、医師の指示をしっかり守ることがとても大切です。

 

 まとめ

ステロイドホルモンもプレドニンも、体を守るために大切なものです。でも、使い方や量によっては、体に負担をかけることもあります。だからこそ、薬を使うときは医師の指示を守り、必要なときだけ使うことが大切です。

 

プレドニン(ステロイド)を飲み続けると太る複数の理由について

 

プレドニンなどのステロイド薬を飲み続けると、少しずつ体重が増えていく方がおります。この理由には複数の要因があるようなので、プレドニン(ステロイド)を長期服用した時に太る理由について、ポイントごとにまとめてみました。

1:筋肉量の低下

中等量以上のステロイド(20mg以上)を長期間飲み続けていると、筋肉量が低下していくことがあります。筋肉というのは体の中のタンパク質の約40%を占めているのですが、運動するときに使用するだけでなく、タンパク質の貯蔵庫としての役割も担っています。そのため食事で摂取するタンパク質の量が少ないと脳が判断した場合、タンパク質の貯蔵庫である筋肉を少しだけ分解して、不足したタンパク質を補うことができます。

 

プレドニンなどのステロイドを飲むと、脳に対して「タンパク質が足りない」という誤指令を出すケースがあります。すると脳は「タンパク質を補うために筋肉を少し分解しよう」という指令をだします。これを繰り返すために筋肉量の低下につながります。筋力の低下は代謝の低下につながるため長期的にみるとエネルギーとして代謝されなかった脂肪分が蓄積していき太る要因になります。

ステロイド薬による脂質代謝異常について

2:糖分・脂質代謝異常

長期間プレドニンなどのステロイドを服用すると、内臓脂肪組織において11β位水酸化ステロイド脱水素酵素1型(11β-HSD1)という名前の酵素が活性化します。この酵素が活性化するとコルチゾンというホルモンが“コルチゾール“という名前のホルモンに変換されます。コルチゾールが増えると食欲が増え、脂肪の生成が促されます。(コルチゾールがたくさん出来てしまう疾患としてクッシング症候群があります)。その結果、中心性肥満がもたらされると考えられます。さらに蓄積した内臓脂肪からさまざまな種類の生理活性物質が放出されて、肥満が助長し二次的な代謝異常の要因となります。

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またステロイドホルモンは脂質だけでなく糖質についても関与しています。インスリン抵抗性を促されることで、血糖値が上昇してきます。その結果肝臓における中性脂肪がたくさん作られるようになり肥満を助長します。

3:満腹中枢が制御できない

プレドニンなどのステロイドホルモンを長期間摂取すると、脳内の神経伝達に影響を与えることが報告されており、特にセロトニンという脳内ホルモンの刺激を阻害してしまうことがプレドニンのインタビューフォームに記されています。(セロトニン作動神経を阻害)

 

脳内にはセロトニン受容体5HT2Cという部分があり、ここにセロトニンがくっつくと「おなかいっぱい」と感じます。これが満腹と感じる一つの要因と言えます。プレドニンの長期服用でセロトニン神経が作用しにくくなると、5HT2C受容体にセロトニンがくっつくにくくなるため、「満腹」と感じにくくなります。その結果、食欲がアップして過食(たくさん食べてしまう)につながります。

セロトニン受容体遮断薬・逆作動薬によって食欲が増える仕組み

プレドニンは喘息や各種自己免疫疾患などで非常に有用な医薬品です。厳格に管理されながら長期間服用することが多々あります。長期間の服用において体重増加・食欲が増えたという自覚症状を感じた場合は、上記の理由を加味した上で、運動療法・食事療法の意味を理解することが解決につながるかもしれません。

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執筆者:ojiyaku


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